家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「33話」

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矢はヘルメットで弾いたのでダメージはないが、めちゃくちゃ焦った。焦ったぞっ。

反射的によけれたから良いものを、下手すりゃ額撃ち抜かれってまた撃ってきた!?


「くっそ、入る前から撃ってくるとかっ」

2発目は盾ではじき、俺とクロはいったん扉から離れ、それぞれ武器を構えて待ち構える。



少し待っていたが、中からゴブリンが飛び出してくることはなかった。
部屋に踏み込む前に攻撃してきたのは予想外だったが、そこはほかの部屋と同じであるらしい。



ゴブリンが出てこないのを確認した俺は、盾を顔の前に構え、そっと扉から顔を出す。

すると出した瞬間盾にガツンと衝撃が来る、やはり弓を持った奴が出待ちしていたようだ。

盾についている覗き窓から中を窺うと、敵の配置が初期と変わっていた。

具体的に言うと壁を背に、盾持ちを先頭に、その少し斜め後ろに槍持ち、一番後ろに弓持ちの順で隊列を組んでいる。
数は盾持ちが2、槍持ちも2、弓は1である。

装備の質はさらに良くなっている。
盾持ちの防具は全部金属製だろう。
槍持ちは盾持ちより軽装だが、あれも金属製だ。
弓持ちは皮っぽいかな。

「ないわーほんとないわー」

ほんっと急に敵のレベルというか強さが変わるよねえ。
てか初見殺しにもほどがある。

これ俺達みたいに無駄にレベル上げてなかったら初撃避けられないぞ。



まあ、落ち着いたところでやりますか。

「最初に俺が突っ込むからクロは後から入ってね」

そうクロに告げ頭をよしよしと撫でる。
するとクロは頭をぐいっと手のひらに押し付け、もっと撫でろとアピールしてくる。

思わず頬が緩み、俺はそのままずっとクロを撫で続けた。





5分が経過した。


10分経過。


……はっ、いかん。
さっさと連中をやっつけねば……。

再び盾を構え扉から顔を出すと、盾に衝撃がきた。
こいつら撫でている間ずっと構えていたのだろうか。

俺は矢が放たれたのを確認し、部屋の中へと足を踏み入れ、一気に距離を詰める。
足音はしないが、後ろからはクロがついてきている事だろう。

「っと」

俺が向かったのは、俺からみて左側にいる盾持ちである。

距離を詰めると同時に、槍使いがこちらに向かい槍を突き出してきた。
盾持ちの陰に隠れ、見えにくい位置からの一撃ではあったが、俺はおそらく槍が来るだろうと予想していたので難なくそれをはじいた。

弾く方向をあえて盾持ちのゴブリンに向けることで、盾持ちの動きを阻害すると同時に、2体に同時に攻撃を仕掛ける形に持っていく。
槍を破壊するか、盾持ちのゴブリンを倒すか、どちらの結果でも俺としては問題ない。

振り上げるような俺の攻撃は槍を破壊し、そのまま盾持ちに当たるかと思えたが、とっさに盾持ちが構えた短剣により防がれてしまった。 てか盾使わんのかい。

「こっのっ」

まあ、膂力は圧倒的にこっちのほうが上である。
俺は無理やり鉈を振り切り、体勢を崩した盾持ちに向かい思いっきり蹴りを放つ。

金属製らしき盾は俺の蹴りを受け、べっこりと凹んでいた。
そしてそれだけの衝撃をゴブリンが受けきれる訳もなく、盾持ちは盛大に血反吐を吐きながら壁へと叩きつけられた。



「当たるかっての!」

蹴りを放った俺を狙い、矢が放たれるがそれは体を捩じることで回避する。
俺は槍を失い狼狽える槍持ちと、次の矢をつがえようとしている弓持ちに向かい鉈を振り上げた。

が、俺が鉈を振り下ろす前に、2体のゴブリンの頭部がずたずたに引き裂かれる。


やったのはクロである。

見れば残りの盾持ちは膝をつき……というか膝から下が無くなっている。
そして槍持ちは慌てた様子でこちらを見て、槍を突き出してきた。


俺が部屋に入ってすぐ、クロは俺の後ろを追い、そしてすぐに俺の右側へと飛び出していたらしい。
すぐに槍持ちが反応して槍を突き出すが、クロは難なくそれを躱すと盾持ちの股の間をすり抜け、俺と対峙していたゴブリンへと襲い掛かった。

と言うことらしい。

ちなみに盾持ちの脚がないのはすり抜けるついでに切っておいたそうだ。


「よっ」

俺は槍を躱しつつ両断し、思いっきり顎を蹴り上げた。
顎から上が綺麗に吹き飛ぶ。どう見ても即死だろう。

盾持ちはクロが止めを刺したらしく、頭が潰れていた。




「難易度一気に上がるよね、ほんと……」

そう呟く俺……いや、それはそれで楽しいから良いんだけどね。
俺の言葉に反応し、うにゃんと鳴いたクロも機嫌が良いのが伝わってくるし。

いかんな、どこぞの戦闘民族みたいになってきたぞ。


まあ、いいか。

「さて、剥ぎ取りするか」

お楽しみの剥ぎ取りタイムである。
装備の質が良くなっているし、高く売れそうで嬉しい。



「ん?」

ほくほくしながら装備を引っ剥がしていると、視界に見慣れない物を捉え、手が止まる。

「なんだこれ」

それは赤から青のグラデーションが綺麗な宝石っぽいものであった。
大きさは卵ぐらいで売ったらすんごい高そう。


なんだろう。
初めて見るけど……そう言えばアマツさんが何か言ってたな。

「もしかするとこれってあれか? 改造に使う素材ってやつじゃ……まじか初めて出たぞ」

そう、改造に使う素材だ。
条件満たすと装備に特殊効果付けられる奴。

「よっしゃあ!」

嬉しくて思わずガッツポーズしてた。

「クロ、とりあえず戻って確認しようか」

一度戻って確認したい、条件が分からないけれどもしかすると改造で使えるかもしれないしね。

クロに戻ると伝え、はぎ取った装備をバックパックに入れていく。
鎧が場所取りまくるけど、鎧の中に兜やらなんやら突っ込んでおくことである程度解消はできる。
でも1個が限界だった。

残る1個は手で抱え持っていく、俺とクロもバックパックが満杯になりほくほく顔で戻るのであった。



5階へと戻り、ゲートをくぐる前にアマツへと声をかけておこう。
もしかするとこの素材について話が聞けるかもしれないしね。

そう思い、部屋に入ると同時に俺はアマツへと呼びかけた。

「アマツさんいま――」

「勿論さっ!」

「――すね」

アマツからの返事はすぐにきた。
というか食い気味で返事がきたぞ。

やっぱこっちの行動見ているんだろうなあ、椅子とテーブルに茶菓子まで用意してあるし……て、なんかアマツの様子がなんか違うな、いつもよりテンション高い気がする。 なんか頬も赤いし、誰得?

まあ、とりあえずさっき取れたやつについて聞いてみよう。

「これって改造に使う素材だったりしますか?」

椅子に腰かけ、さきほど取れた宝石っぽいのをアマツへと見せる。

クロは宝石には興味ないのか、荷物を下ろすと椅子へと飛び乗り、満足そうに毛繕いを始める。
宝石じゃあバックパックは満杯にならないからねえ。


「その通り! おめでとう! 結構レアなんだよ、それ」

「やった! あとで改造しなきゃ」

やっぱそうだったか。
果たしてどんな効果が付くのだろうか。 端末起動して詳細見ればわかるかなー?

……てかですね。

「……ところでアマツさん。何か良いことあったんですか?」

さっきからアマツがそわそわしててさ、時々こっちをチラチラ見てくるんだよね。
明らかになんか聞いて欲しそうだったので、とりあえず聞いてみることにした……。



「あっ、わっかるぅ~?」

殴りたい、この笑顔。

クロは寝に入った。



俺の葛藤をよそにアマツはにっこにこと笑顔を浮かべながら勢いよく話始める。

「いやー! 実はねえ! 移動したダンジョンがついに見つけられちゃってね!」

「あ、おめでとうございます」

ちょっと棒読みなっちまったぜ。

まあ、でもめでたいことだね。
ここのダンジョン以外ほぼ放置されているようなもんだったし、ダンジョンの存在が広まればじいちゃんばあちゃんに堂々とポーション渡せるようになるだろうし、俺としても歓迎したい出来事だ。

「ありがとうっ!!」

「攻略してくれそうですか?」

アマツはダンジョンを作ってからずっとヤキモキしていたのだし、その喜びもひとしおだろう。
攻略してくれそうか?という質問にも大きく頷き応える。

「うん、それも期待できそうだよ。 いやー、嬉しいねえ」

「ちなみに見つかったのって日本ですか?」

そう言えば今のところニュースにはなってないよなーと思いつつ、そう尋ねてみる。

「ああ、いやアメリカとイギリスだよ。 日本は……もう少し場所を変えたほうが良いかも知れないねえ」

なるほどアメリカとイギリスか。
それなら日本でニュースになっていないのも分かるね。

海外だしある程度広まってからこっちでもニュースになるんじゃないかな。
あ、もしかするとネットではもう流れているかもだし、あとで調べてみようか。

しかし日本は未だ見つからず、かー……一体どこに作ったんだろうね?
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