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「97話」
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首相達はチュートリアル突破して、アマツとコンタクトを取るのが目的なので、隊員さんの様にしっかり鍛えて強くなる……とかじゃなくて、ただ単にレベルを上げてしまえば良い。
……もしずっと潜り続けるつもりなら、そこはチュートリアル突破後に自力で何とかして貰おう。
「まず俺達が部屋に入ってネズミの動きを止めます。お二人は合図したら部屋に入ってください。そうしたらネズミを1匹ずつ解放していきますんで、ひたすら狩りまくってください」
レベルをさくっと上げるにはどうするか。
常に1対1の状況を確保しながら、ベルトコンベアー形式で敵が運ばれてくる状況を作れば良い。
別に1対1だろうが、1対多数だろうが、倒した数が同じなら上がるレベルは同じだろう。
実力は大分変わってくるだろうけどね。
ゲームみたいにターゲットを固定できる訳じゃ無いから、最低でも1対1で戦って貰わないと……俺がきっちり押さえ込めば、もっと強い敵を無力化して一方的に攻撃出来るけど、あまりレベル差があると攻撃が通らないんじゃないかな。
だから程々の相手を数こなすのが良いと思う。
「お前さん方は危なくねえのかい?」
「大丈夫です。ネズミなら……下手すりゃ噛まれても歯形すら付かないと思いますよ」
宇佐見さんが心配してそう尋ねてくるが、大丈夫と答えておく。
……まあ、歯形付かないとは言ったけど、実際に噛まれたこと一度も無いから、どうなるかは分からんのよな。
噛まれるつもりは無いから問題ないけど。
「それはまた……では、よろしくおねがいします」
任せんしゃい。
気合い入れて午前中に2階まで終わらせるぞっ。
そうすりゃ明日でゴブリンまで行ってチュートリアル突破して憂いなく土日を迎えられると言う訳だ。
「それじゃ俺は宇佐見さんの方に放るから、クロは笹森さんにおねがいね」
ネズミを押さえ込むのは簡単だ、近寄ってきたところを首根っこ掴んでやればいい。
片手で2匹ずつ、それに足で踏ん付けて1匹の計5匹を俺が持ち。
クロは……爪で4匹押さえ込んで、もう1匹は尻尾を噛んでるっぽいね。
とまあ、そんな感じで俺とクロで10匹を抱えることが出来るので、あとはこいつら1匹ずつ首相達の手前に放ってやれば良い。
ネズミは一番近い相手に向かっていくので、自然と笹森首相か宇佐見さんが戦うことになる。
1匹相手なら苦戦することも無いし、戦っていく内に肉体も強化され動きも良くなっていく。
一部屋に2分掛からないペースで行けるようになり、2時間も掛からずに目標である一人につき250匹を達成する事が出来た。順調だね。
「そろそろかな?一度戻って休憩しましょうか。その後は次の階層いってみますか?」
「ああ、そうしよう」
「あ、胴体用の防具って用意してますか?あと盾も」
「おう、あるぞ」
それに2時間も一緒に狩りをしていれば、自然と打ち解けてくる訳で、俺の緊張も大分ほぐれて自然に話せるようになっていた。
休憩所へと戻り、BBQ用のコンロでお湯を沸かしてコーヒーを入れる。
宇佐見さんが入れてくれるそうなので、俺はその間におやつをカフェルームで確保してきた。
二人が普段食っている様なのと比べるとあれだろうけど、それでも結構美味しいし、疲れたときは甘い物が美味しく感じるものだ。
現に二人とも旨そうに食っているしね。
「猫ってケーキ食べるんですね」
「しかし旨そうに食うなあ」
もちろんクロだけ仲間はずれにする、なんて事は無い。
チュール上げようかなーと思っていたんだけど、猫用のケーキが売ってたんで買ってみたんだ。
かなりがっついて食ってるので、お気に召した模様。
その様子を見ている二人……頬が緩んでますぞ。
さて、休憩終わったら2階に行くわけだけど、事前に都丸さんに一報入れておきますかね。
「あ、都丸さん。島津です」
「お疲れ様です。何かありましたか?」
「250匹狩り終わったんで、次の階層行っちゃいますね」
「……もう終わったんですか?」
おや、もしかして向こうはあまり順調じゃないんだろうか?
と、思い聞いてみるとこっちとやり方が違ったようだ。
一部屋に3匹ネズミを残して、それを3人でやっつけてたとかなんとか。
とりあえずこっちのやり方を伝えると、そちらの方が効率が良いだろうと、やり方を切り替えるそうだ。
向こうもその内2階に向かうことだろう。
「それじゃ、またお昼にー」
そう言って電話を切り、休憩を終えた笹森さん、宇佐見さんを引き連れ2階に向かう。
出来れば午前中に2階も終わらせたいところである。
昼になり、昼食タイムと言うことで全員が休憩所へと集まる。
食事は例によってBBQである。
午前中ずっと運動をしていたのと、筋肉が増えて代謝も増えたので肉が食いたくなるんだそうだ。
ちなみに1週間の筋トレ期間も、昼はずっとBBQだったりする。
さすがに飽きるんじゃ?と思うが、毎回色々な食材を持ち込んでいたらしく、飽きはしなかったとの事だ……。
「もう2階も終わったんですか?」
「おう、終わったぞ」
ダンジョンの攻略を進めているので、食事中の話題も自然とそれ関係となる。
笹森さん、宇佐見さんは無事2階のモンスターを150匹倒し終わった。
他チームは2階については半分終わったからどうか、言ったあたりである。
3人で敵を分け合うのと、2人で分け合うのとではやはり2人の方が効率が良い。
なのでメンバーを変えない限りこの差が埋まる事は無いだろう。
「午後からは3階ですか……」
「いえ、午後は筋トレですね。島津さんの契約は午前中のみですから」
午後の予定についてそう答える笹森さん。
あー……。
「あ、別に構わないですよ。俺としても早く管理者と会って欲しいと思ってますし。勢い有る内にガンガン進んじゃいましょう」
出来るだけ早く終わらせて、アマツと話し合って欲しい。
と言うか自分の攻略も進めたいので、ちゃちゃっと終わらせてしまいたい……なんて気持ちもちょっとは合ったりする。
笹森さんも宇佐見さんも疲れた様子を見せる事なくガンガン狩るし、むしろだんだん強くなっていくのが自分でも分かるのか、どんどんやる気になっているように見える。
なので今日中に出来るところまで……可能であればチュートリアル突破まで終わらせてしまいたいのだ。
「それは……お言葉に甘えることにします。ありがとうございます」
礼を述べる笹森さんに俺は笑顔で返すのであった。
午後からもっとペース上げちゃおう。
時刻はそろそろ午後の3時と言ったところだろうか。
ゲートキーパーの犬を倒し、都丸さんに6階へと向かうことを伝えると二人へと声をかけた。
「向こうのチームはちょっと苦戦してるっぽいですね」
「とは言ってもそろそろ3階で狩るんだろう?十分だよ十分」
宇佐見さんの言葉に頷く俺。
今から3階と言うことは、明日の朝にはゴブリンを狩り始める事だろう。そして昼前にはチュートリアルを突破する……確かに十分だ。
「4階に出て来る犬よりゴブリンの方が弱いので、飛ばして6階で狩りをします。おそらく100も倒せば条件満たせるかと思います」
犬はなあ……怖いし、頭使ってくるし厄介な敵だよねえ。
それに対してゴブリンは……なんかもうボーナスキャラと成り果てている気がしなくもない。
たぶん刃物持っているから、それで犬より上の階層に居るんだと思うんだけどね。
普通は刃物持った相手が襲ってきたら……まともに対応できなくなるよね?
俺も最初はビビってた気がするし。
ビビってたよね?
「まさか1日で行けるとはなあ……」
「普通であればもっと時間が掛かるでしょうね。我々は島津さん達のおかげで、安全に1対1で戦えるのですから」
複数に囲まれなければ、大分楽できるからねー。
1対1と1対2じゃ全然違うし、1対10とかもうね……よく無事だったよね、俺。
まあ、とりあえず先に進みますかね。
とりあえずゲートキーパーのゴブリンで、ゴブリンの戦闘パターンを一度見て貰うかな。
とりあえず2体は出会い頭に倒してっと。
「ゴブリンの攻撃は単純です。ただひたすらナイフを振り回すだけです……当たっても恐らく重傷までは行かないかと思います。なので落ち着いて戦ってみてください。何かあればすぐ援護しますんで」
1体だけ残して、戦闘の様子を二人に見せる。
刃物を持ち、敵意を剥き出しにして襲ってくる相手と言うのは、見てて恐ろしいものがある。
これから自分があれと戦うのだと理解した二人の顔色は優れない。
戦闘を十分見て貰ったところでゴブリンの首根っこを掴み、地面に押し倒す。
そしてどちらから行きますか?と言う意味を込めて二人を交互に見る。
「……私からいきましょう」
先に手を上げたのは笹森さんだった。
盾を構え、武器を構えるその姿は明らかに緊張が見て取れる。
俺は少しだけ落ち着くのを待ち、行きますよと呟きゴブリンを掴む手を話した。
ゴブリンが起き上がる頃には、俺は既に笹森さんの後方にいる。
真っ直ぐ自分に襲い掛かってくるゴブリンを、笹森さんが迎え撃った。
結果からいえば、苦戦はせずに終わった。
最初の数発を凌いでしまえば割と何とかなるのよな。
攻撃するのに夢中で防御しようとしないし……。
「……ふぅ」
ゴブリンを倒し、大きく息を吐く笹森さん。
そんな彼の元にクロが歩み寄る。
「え、ええと……?」
「良くやったと良ってますね。チュールはご褒美だそうで……」
クロは笹森さんの前にチュールを置くと、うにゃうにゃと喋り始める。
これは隊員さんにもやったあれだね……まさか首相にもやるとは思わんかったです。
まあ、クロにとっては人間の偉いとかそんなの関係ないしね。
「ははは。ありがとうございますクロさん」
チュールを受け取り、クロに笑いながらお礼をする笹森さん。
すごい光景だなっ。
「島津さん、今日は本当にありがとうよ。おかげでこんなに早く条件満たせたわ」
その後、クロと笹森さんのやり取りを見て緊張がとれたのか、宇佐見さんもあっさりとゴブリンを倒して見せた。
そしてそのまま6階に行き、ゴブリン狩りを開始して……おおよそ1時間ほどでゴブリン150匹を狩り終える事が出来た。
「このお礼はかならず……まずは交渉に全力で当たることで返します。……それとクロさんには後で贈り物でもしましょうか」
「いいねえ、あれの詰め合わせとか良いんじゃね」
目標はクリアできたと言うことで、来た道を戻る二人には笑顔が浮かんでいる。
あれの詰め合わせって何だろうね。チュールかな?猫缶かも知れない。
……てかね何時の間にかクロがさん付けになっているけど、良いんだろうか。
うっかり人前でクロさんとか言っちゃっても知らないよ?
とか何とか考えながら5階に入ると……。
「やあ、お疲れ!」
そこにはにっこにこしたアマツが待ち構えていたのであった。
……もしずっと潜り続けるつもりなら、そこはチュートリアル突破後に自力で何とかして貰おう。
「まず俺達が部屋に入ってネズミの動きを止めます。お二人は合図したら部屋に入ってください。そうしたらネズミを1匹ずつ解放していきますんで、ひたすら狩りまくってください」
レベルをさくっと上げるにはどうするか。
常に1対1の状況を確保しながら、ベルトコンベアー形式で敵が運ばれてくる状況を作れば良い。
別に1対1だろうが、1対多数だろうが、倒した数が同じなら上がるレベルは同じだろう。
実力は大分変わってくるだろうけどね。
ゲームみたいにターゲットを固定できる訳じゃ無いから、最低でも1対1で戦って貰わないと……俺がきっちり押さえ込めば、もっと強い敵を無力化して一方的に攻撃出来るけど、あまりレベル差があると攻撃が通らないんじゃないかな。
だから程々の相手を数こなすのが良いと思う。
「お前さん方は危なくねえのかい?」
「大丈夫です。ネズミなら……下手すりゃ噛まれても歯形すら付かないと思いますよ」
宇佐見さんが心配してそう尋ねてくるが、大丈夫と答えておく。
……まあ、歯形付かないとは言ったけど、実際に噛まれたこと一度も無いから、どうなるかは分からんのよな。
噛まれるつもりは無いから問題ないけど。
「それはまた……では、よろしくおねがいします」
任せんしゃい。
気合い入れて午前中に2階まで終わらせるぞっ。
そうすりゃ明日でゴブリンまで行ってチュートリアル突破して憂いなく土日を迎えられると言う訳だ。
「それじゃ俺は宇佐見さんの方に放るから、クロは笹森さんにおねがいね」
ネズミを押さえ込むのは簡単だ、近寄ってきたところを首根っこ掴んでやればいい。
片手で2匹ずつ、それに足で踏ん付けて1匹の計5匹を俺が持ち。
クロは……爪で4匹押さえ込んで、もう1匹は尻尾を噛んでるっぽいね。
とまあ、そんな感じで俺とクロで10匹を抱えることが出来るので、あとはこいつら1匹ずつ首相達の手前に放ってやれば良い。
ネズミは一番近い相手に向かっていくので、自然と笹森首相か宇佐見さんが戦うことになる。
1匹相手なら苦戦することも無いし、戦っていく内に肉体も強化され動きも良くなっていく。
一部屋に2分掛からないペースで行けるようになり、2時間も掛からずに目標である一人につき250匹を達成する事が出来た。順調だね。
「そろそろかな?一度戻って休憩しましょうか。その後は次の階層いってみますか?」
「ああ、そうしよう」
「あ、胴体用の防具って用意してますか?あと盾も」
「おう、あるぞ」
それに2時間も一緒に狩りをしていれば、自然と打ち解けてくる訳で、俺の緊張も大分ほぐれて自然に話せるようになっていた。
休憩所へと戻り、BBQ用のコンロでお湯を沸かしてコーヒーを入れる。
宇佐見さんが入れてくれるそうなので、俺はその間におやつをカフェルームで確保してきた。
二人が普段食っている様なのと比べるとあれだろうけど、それでも結構美味しいし、疲れたときは甘い物が美味しく感じるものだ。
現に二人とも旨そうに食っているしね。
「猫ってケーキ食べるんですね」
「しかし旨そうに食うなあ」
もちろんクロだけ仲間はずれにする、なんて事は無い。
チュール上げようかなーと思っていたんだけど、猫用のケーキが売ってたんで買ってみたんだ。
かなりがっついて食ってるので、お気に召した模様。
その様子を見ている二人……頬が緩んでますぞ。
さて、休憩終わったら2階に行くわけだけど、事前に都丸さんに一報入れておきますかね。
「あ、都丸さん。島津です」
「お疲れ様です。何かありましたか?」
「250匹狩り終わったんで、次の階層行っちゃいますね」
「……もう終わったんですか?」
おや、もしかして向こうはあまり順調じゃないんだろうか?
と、思い聞いてみるとこっちとやり方が違ったようだ。
一部屋に3匹ネズミを残して、それを3人でやっつけてたとかなんとか。
とりあえずこっちのやり方を伝えると、そちらの方が効率が良いだろうと、やり方を切り替えるそうだ。
向こうもその内2階に向かうことだろう。
「それじゃ、またお昼にー」
そう言って電話を切り、休憩を終えた笹森さん、宇佐見さんを引き連れ2階に向かう。
出来れば午前中に2階も終わらせたいところである。
昼になり、昼食タイムと言うことで全員が休憩所へと集まる。
食事は例によってBBQである。
午前中ずっと運動をしていたのと、筋肉が増えて代謝も増えたので肉が食いたくなるんだそうだ。
ちなみに1週間の筋トレ期間も、昼はずっとBBQだったりする。
さすがに飽きるんじゃ?と思うが、毎回色々な食材を持ち込んでいたらしく、飽きはしなかったとの事だ……。
「もう2階も終わったんですか?」
「おう、終わったぞ」
ダンジョンの攻略を進めているので、食事中の話題も自然とそれ関係となる。
笹森さん、宇佐見さんは無事2階のモンスターを150匹倒し終わった。
他チームは2階については半分終わったからどうか、言ったあたりである。
3人で敵を分け合うのと、2人で分け合うのとではやはり2人の方が効率が良い。
なのでメンバーを変えない限りこの差が埋まる事は無いだろう。
「午後からは3階ですか……」
「いえ、午後は筋トレですね。島津さんの契約は午前中のみですから」
午後の予定についてそう答える笹森さん。
あー……。
「あ、別に構わないですよ。俺としても早く管理者と会って欲しいと思ってますし。勢い有る内にガンガン進んじゃいましょう」
出来るだけ早く終わらせて、アマツと話し合って欲しい。
と言うか自分の攻略も進めたいので、ちゃちゃっと終わらせてしまいたい……なんて気持ちもちょっとは合ったりする。
笹森さんも宇佐見さんも疲れた様子を見せる事なくガンガン狩るし、むしろだんだん強くなっていくのが自分でも分かるのか、どんどんやる気になっているように見える。
なので今日中に出来るところまで……可能であればチュートリアル突破まで終わらせてしまいたいのだ。
「それは……お言葉に甘えることにします。ありがとうございます」
礼を述べる笹森さんに俺は笑顔で返すのであった。
午後からもっとペース上げちゃおう。
時刻はそろそろ午後の3時と言ったところだろうか。
ゲートキーパーの犬を倒し、都丸さんに6階へと向かうことを伝えると二人へと声をかけた。
「向こうのチームはちょっと苦戦してるっぽいですね」
「とは言ってもそろそろ3階で狩るんだろう?十分だよ十分」
宇佐見さんの言葉に頷く俺。
今から3階と言うことは、明日の朝にはゴブリンを狩り始める事だろう。そして昼前にはチュートリアルを突破する……確かに十分だ。
「4階に出て来る犬よりゴブリンの方が弱いので、飛ばして6階で狩りをします。おそらく100も倒せば条件満たせるかと思います」
犬はなあ……怖いし、頭使ってくるし厄介な敵だよねえ。
それに対してゴブリンは……なんかもうボーナスキャラと成り果てている気がしなくもない。
たぶん刃物持っているから、それで犬より上の階層に居るんだと思うんだけどね。
普通は刃物持った相手が襲ってきたら……まともに対応できなくなるよね?
俺も最初はビビってた気がするし。
ビビってたよね?
「まさか1日で行けるとはなあ……」
「普通であればもっと時間が掛かるでしょうね。我々は島津さん達のおかげで、安全に1対1で戦えるのですから」
複数に囲まれなければ、大分楽できるからねー。
1対1と1対2じゃ全然違うし、1対10とかもうね……よく無事だったよね、俺。
まあ、とりあえず先に進みますかね。
とりあえずゲートキーパーのゴブリンで、ゴブリンの戦闘パターンを一度見て貰うかな。
とりあえず2体は出会い頭に倒してっと。
「ゴブリンの攻撃は単純です。ただひたすらナイフを振り回すだけです……当たっても恐らく重傷までは行かないかと思います。なので落ち着いて戦ってみてください。何かあればすぐ援護しますんで」
1体だけ残して、戦闘の様子を二人に見せる。
刃物を持ち、敵意を剥き出しにして襲ってくる相手と言うのは、見てて恐ろしいものがある。
これから自分があれと戦うのだと理解した二人の顔色は優れない。
戦闘を十分見て貰ったところでゴブリンの首根っこを掴み、地面に押し倒す。
そしてどちらから行きますか?と言う意味を込めて二人を交互に見る。
「……私からいきましょう」
先に手を上げたのは笹森さんだった。
盾を構え、武器を構えるその姿は明らかに緊張が見て取れる。
俺は少しだけ落ち着くのを待ち、行きますよと呟きゴブリンを掴む手を話した。
ゴブリンが起き上がる頃には、俺は既に笹森さんの後方にいる。
真っ直ぐ自分に襲い掛かってくるゴブリンを、笹森さんが迎え撃った。
結果からいえば、苦戦はせずに終わった。
最初の数発を凌いでしまえば割と何とかなるのよな。
攻撃するのに夢中で防御しようとしないし……。
「……ふぅ」
ゴブリンを倒し、大きく息を吐く笹森さん。
そんな彼の元にクロが歩み寄る。
「え、ええと……?」
「良くやったと良ってますね。チュールはご褒美だそうで……」
クロは笹森さんの前にチュールを置くと、うにゃうにゃと喋り始める。
これは隊員さんにもやったあれだね……まさか首相にもやるとは思わんかったです。
まあ、クロにとっては人間の偉いとかそんなの関係ないしね。
「ははは。ありがとうございますクロさん」
チュールを受け取り、クロに笑いながらお礼をする笹森さん。
すごい光景だなっ。
「島津さん、今日は本当にありがとうよ。おかげでこんなに早く条件満たせたわ」
その後、クロと笹森さんのやり取りを見て緊張がとれたのか、宇佐見さんもあっさりとゴブリンを倒して見せた。
そしてそのまま6階に行き、ゴブリン狩りを開始して……おおよそ1時間ほどでゴブリン150匹を狩り終える事が出来た。
「このお礼はかならず……まずは交渉に全力で当たることで返します。……それとクロさんには後で贈り物でもしましょうか」
「いいねえ、あれの詰め合わせとか良いんじゃね」
目標はクリアできたと言うことで、来た道を戻る二人には笑顔が浮かんでいる。
あれの詰め合わせって何だろうね。チュールかな?猫缶かも知れない。
……てかね何時の間にかクロがさん付けになっているけど、良いんだろうか。
うっかり人前でクロさんとか言っちゃっても知らないよ?
とか何とか考えながら5階に入ると……。
「やあ、お疲れ!」
そこにはにっこにこしたアマツが待ち構えていたのであった。
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