家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「105話」

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その日は結局夕方まで釣りをして楽しんで、豪勢な夕飯をがっつり食ってお開きとなった。
結局あの魚竜は誰も持って帰らず、マーシーに渡したままである。

鱗ぐらい持って帰っても良いのにねー?



明日からはまた本格的に攻略を再開すると言うことで、端末を眺めながら必要な改造を済ませたり、装備のメンテなんかをやっていると、スマホに着信があった。

誰かなーと思いながらスマホを開くと、相手は大塚さんだった。
時期的にこの間の会見関連か、アマツ関係かなーと思いながら電話にでる俺。

「電話電話……大塚さんだ。はい、島津ですー」

「ご無沙汰してます。大塚です。実はですね――」

挨拶もそこそこに本題に入る大塚さん。

内容はこの前16階を攻略した時に撮影した動画についてだった。
あの時ダンジョン内にあった鉱石っぽいのを持ってきていたのと、あとコボルトからはぎ取った鏃を持って帰ってるのが動画に映ってたんだよね。
それで色々と分析したいので、いくつか売って貰えないだろうか?と言う内容である。

「――と言うわけで、明日受け取りに伺いますので……ぜひとも売って頂けないでしょうか?」

「あー、モンスターが使ってくる毒と、ダンジョン内で取れた鉱物ですね。分かりました、用意しておきますよー」

別にまたダンジョン潜れば手に入るものだし、渡すのはまったく問題ない。お金も貰えるそうだしね。

それに毒はともかく、謎な鉱石とかまだ地球で発見されてない鉱石の可能性だってあるし、もしかしたらファンタジー的なやつかも知れない。
色々と役立つ可能性もあるんだし、分析して貰えるなら喜んで出しますとも。

明日の朝ダンジョンの休憩所まで取りに来るってことなので、朝起きてご飯食べたらダンジョンで待機しておかないとね。





「鏃に付着している液体が毒ですね。結構強い毒なんで気を付けてください」

「お預かりします」

翌朝、予定の時間より少し早めに到着した大塚さん達に、ダンジョンでとれた物を渡していく。
鏃に関しては本当にやべー毒なので、袋に何重にも包んだ上で渡したよ。

触れた皮膚が腐り落ちる!と言ったことはないので触れるぐらいなら大丈夫だと思うけど、もし小さい傷でもついていたら……たぶん普通の人なら即死するだろうし、これでも厳重とは言えないだろうね。

大塚さん達もそのへんは分かっているので、いかにも危険物を入れるようです!って感じの容器を持ってきていた。


「あとこれが鉱石でっす」

そう言って鉱石を差し出すと、大塚さんは手袋をはいた上でそれを受け取ろうとするが……。

「ありがっ!?……お、重たいですね」

手に持った瞬間、がくっと腕が下がり危うく鉱石を落としそうになる。
どうやらこの鉱石はその大きさに対して大分重たいようである。

「言われて見ると確かに……もしかして金?」

言われて見ると重かったような気がしなくもない。レベルアップしてるせいで良く分からんのよな。
てか、重たい金属……金が思い浮かんだんだけど、これが金だったらすごい量があったよな。やばい、大金持ちになってしまうぞ。

「いえ、それは無いと思いますが、調べてみない事にはなんとも言い難いですな……これも調査チームに渡しておいてください」

「は、はい……」

大塚さんは受け取った鉱石を、後ろで控えて居た人に渡し、そう指示をだす。
その人は鉱石を抱え、鏃の入った容器を恐る恐る持ち上げると、休憩所を出て行ってしまう。


「新しい人ですか?」

俺が大塚さん、ではなく。大塚さん達と言っていたのは後ろにもう一人居たからである。
初めて見る人だね。年齢的には40代ぐらいかな?新人ってわけじゃーないと思う。

「ええ、私の補佐ですよ。ところで島津さん、実は一つお願いしたい事が御座いまして……」

「はい、何でしょう?」

なるほど、補佐か。
まあ、それは置いといて……頼み事か、なんだろう。こう改まって言われるとつい身構えてしまうのだけどー。

「実はアメリカとイギリスとダンジョンの情報を共有したのですが、一部の方から銃を使用せず己の肉体を使い戦闘する事に対して疑念の声が上がりまして」

「はあ」

どゆこと?

「隊員の戦闘動画を見せはしましたが、これなら銃の方が確実だろうと……」

これはあれか、あんなモンスターと近接でやりたく無いって人が居たのかな?
隊員さんならゴブリンとかとやり合えるだろうけど、俺たちに出来る訳がないと……ああ、そうか思い出した。

海外の極小ダンジョンってもう無いんだっけか。
そうなると1階に出てくるのはネズミじゃない可能性が高いね。
そりゃ無理だーってなるか……でも。

「銃でも時間は掛かるでしょうが、条件満たすだけなら行けなくは無いですねえ……時間掛かるんで自分は近接をお勧めしますが」

たぶんポーション使った筋トレ法も伝えてるよね?だったら行けると思うんだけどなあ。
実際に難色示しているのは一部だけって話だしー……ここに来て貰うって手段もあるけど、面倒くさい事になりそうな予感がするので、出来れば自分たちでどうにかして欲しいところである。


「我々も同意見です。なので島津さんの動画を見せてしまおうかと思うのですが、よろしいでしょうか?」

レベル上げるとここまで強くなるんだぞって見せて納得させると。
そう言う事であれば別に俺の動画ぐらい見せたって構わない。顔はフィスガードで見えないしね。

てか、動画とった時点でもう他国に映像渡ってるかと思ったら、そうじゃ無かったんね。
俺に配慮してくれてたのかなー?

ま、なんにせよこれでイギリスもアメリカもチュートリアル突破出来るようになるのであれば、動画の一つや二つどって事はない。

「ああ、構いませんよ。あーでも、動画の事で直接向こうから何か聞かれても困るので、何かあったらお願いします」

「ええ、もちろんです。ありがとうございます」

ただ、一応念のために面倒ごとは嫌ですーって意思表示だけはしておこう。
これで何かあっても彼らが盾になってくれる事でしょう。ぐふふ。



大塚さんとのお話が終わったので、俺はクロと共に16階をうろうろしていた。
目的はもちろんレベル上げとカードである。

普段であればカードを狙うとなっかなか出ないのだけど、今日に限って調子が良い。

「お、またコボルトが出た。オーガも出たしこれでカードは揃った……休んで午後から次の階層いっちゃう?」

午前中にカードがぽろぽろっと出たのである。
これで事前に確保しておいた分も合わせて、俺とクロに各カード一枚ずつそろったことになる。

俺の言葉にクロは尻尾をぴーんと立てると、機嫌よさそうに15階へと向かい歩いていく。
ずっと同じ敵を狩っていると飽きるからねえ……クロってちょっと戦闘狂な面があるから、新しい相手と戦うのが楽しみなのだろう。

俺?……いかん、いかんなあ。俺も楽しみだわ。

しょうがないよね、男の子だもん。
新しい敵との出会いはワクワクするものなのですよ。



とりあえず戻って準備をしようって事で、休憩所に戻った俺はポーションの在庫を確認し、先ほど取ってきたばかりのカードを確認する。
有用そうであれば、次の相手との戦いに使いたいんだよね。
なんか階層が深くなればなるほど、階層が変わった際の相手の強さが一気に変わる気がするんだ。
たぶん気のせいじゃ無いと思う。

なので出来るだけこちらを強化しておきたのである……さって、効果はなにかなっと。
予想としては毒関連だけど、何がでるかな。


「コボルトは毒付与かー。強いとは思うけど、お肉食べられなくなりそう……とりあえず二足の連中には使うかな」

予想通り毒関連だった。
毒付与ってことは毒に耐性のある敵以外には効果あるだろうね。
肉が食えなくなる弊害があるけど、元々二足の敵は食うつもりないし、次の相手にも使っていこうと思う。

次の相手が毒無効です!とかじゃ無ければいいなあ……。
何が出るかはあまり法則性無さそうだけど、少なくとも前回より強い相手なのは確かだから。

16階が4体のチームで来たから、次は1体のみの強いやつかなーと、何となく予想している。
楽しみだね。




そして昼食を済ませた俺とクロはさっそくダンジョンに潜り、1時間ほどでゲートキーパーの居る部屋の前までたどり着いていた。
16階ってフィールドタイプなんだけど、なぜかゲートキーパーが居るのは部屋の中だったんだよね。
謎である。

ま、好き勝手に動き回られるよりは良いだろう……さて、何がでるかな?



「さて……牛さんだあ」

盾を構えてそろーっと扉から中を除くと、そこに居たのは1体のでっかい牛さんであった。
ただし……。


「こっちの牛さんは嬉しくないぞお……装備がっちがちに固めてるし、やばそう」

二足歩行の方である。
つまりはミノタウロスと呼ばれる存在であった。

筋骨隆々で、身長は3mを優に超える。
装備もその体格に見合うものをつけている。

要はもの凄くごついです……しかもね、ごついだけじゃなくて洗練された形状をしているって言うのかな。職人がきっちり作りました!って感じの装備付けてるんだよなあ……なんか武器と盾構えて、じっとこちらを見ているし、こいつは手強そうな予感がするぞっ。
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