家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「155話」

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会場に入り受付を済ませた俺たちは、指定された会議室へと向かった。

「席は……ここか」

やたらと広かったため、少し探すのに時間が掛かったが受付で受け取った番号票と一致する席を見付け、席に着いた。

「クロはここね」

番号は受付した順番になるので、クロの席は俺の前だ。

そして俺の後には中村や隊員さん達が続いている。

……これ、縦に並んだから良いけど、横に並んでたら後の人から相当邪魔に思われそうだ。
装備があるとどうしてもなあ……講座とダンジョンに潜るのは別の日にした方が良かったんじゃ?と思わなくもない。

まあ今さら何か言ったとして、今日の予定が変わることはないだろうけど。


さて、講座の開始までにはまだ30分ぐらいある。

……中村は資料を真剣に読んでいるし、クロは丸くなった。
隊員さん達のところに向かっても良いけど、通行の邪魔になりそう。

……来る人の装備でも眺めて暇でも潰すか。



(武器を持っている人は多いけど、防具まで用意している人は少ないなー)

ざっと200人分ぐらいは見ただろうか。
装備の支給があること、買うと高いことから実際に装備を全部自前で用意した人はそこまで多くない様だ。

防具を身に付けている人が3割ってとこかな。
どれも例のダンジョンの素材を使った装備を身に付けている感じだ。
例外として数名は特殊部隊が使うようなプロテクターを身に付けていたけど……逆にちょっと浮いていた。

武器に関してはそこまで高くないからかな?割と持ってきている様だけど、そこらで買える様なのが多いね。
ククリナイフ?みたいのとか、俺が使っている剣鉈みたいのとか、そんなのが多い。

あとは中村が持っている日本刀系。
それと槍もちらほらいるね。あと数名は弓を持っていた。

……盾持ちがほとんど居なかったのはちょっと意外だった。
何でだろうね?

まあ、ざっと見たところそんな感じである。

俺たちみたいに、全身を統一した防具で覆い、武器も盾もしっかり揃えているのはほぼ居なかった。
そりゃ目立つわな。


そんな感じで装備を観察して時間を潰していると、講義開始の時間になったようで教官が室内へと入ってきた。

相当鍛え込んでるね、たぶん別ダンジョンを担当していた隊員さんだろう。一瞬だけどチラリとこっちを見てたね。

その後、分厚いテキストが配られ講義が開始となる。


「配布した資料にはダンジョン内の情報もかなり含まれている。トライアルの期間が終了するまで外には漏らさないように」

ふむふむ。
まあ、まだ色々調整するだろうしね。
正式な情報だすまでは言うんじゃねーぞって事かな。
テキストも回収するそうだから、流出は……まあ、するだろうね。
スマホで撮る奴居るだろうし。

まあ、そこまでキッチリ防ぐ気は無さそうだけどね、スマホ持ち込み禁止になってないし。


「ダンジョンに潜るのは許可制となる。講習を受け試験に合格した者に許可証が発行され、本人以外は使用出来ない。それと偽造は罪に問われる事になるので絶対にするな」

ギルドカードとか、冒険者証とかそんな感じの発行するらしい。
見た目はほぼ自動車の免許証だけど……もうちょっとファンタジー寄りにして良いのになー。

ちなみに講習の内容だけど、座学と実施に別れていてね。午前中はずっと座学を行い、ダンジョンに関することを学ぶ。
そして午後からはダンジョンに実際に潜る。

で、講習を何度か受けて筆記試験にも合格し、ダンジョン内での行動を見て一定水準に達していると判断されると許可証がでるそうな。

筆記試験やだなー……いや、まてクロはどうすんだこれ?
後で対策考えなきゃ……最悪の場合は首相たちにさり気なくお願いしてしまおう。

「ダンジョンに潜る際は……この小型カメラを装備のどこかに装着が義務付けられている。これは自分達の身を守るためでもある、決して外したりはしないように」

これ、俺が着けてるカメラと同じだね。
かなり丈夫だし、良いものだ。

なんで着けるかと言うと、ダンジョン内で悪さすんじゃねーぞって話である。

教官曰く、ダンジョン内で犯した罪には基本国内の法律が適用される。法に基づいて罰せられるのは勿論のこと、罪によってはダンジョン側から拒否され二度と入れなくなる可能性もある。

だ、そうだ。

カメラは自分が罪を犯して無いことの証明だったり、何かトラブルに巻き込まれたときの証明何かに使うんだろう。

中にはカメラを壊して悪さする奴も居るかも知れないけど……そっちはアマツが映像用意するだろうね、たぶん。

「……ちなみにだ、原則日本の法律に基づくそうだが、ダンジョン側がどう言った基準でもって拒否するかは良くわかっていない。肖像権の侵害でも拒否される可能性だってある……心当たりのある奴は消しておけよ」

教官のその言葉を聞いて、何人かの参加者が慌てた様子でスマホをいじり始めた。
外で俺たちの事を撮影してた連中も含まれてるな。

地味に助かった。
この教官さんにあとで礼を言わねばだ。


あ、ちなみにその身に付けるカメラで映像撮るのは良いのかってのは、仕事をする上で必須なのと、SNSなどで晒そうとしなければ問題なしとの事だったよ。

「ダンジョン内ではモンスターを倒したり、得た素材をポイントに変換する事が可能だ。これらは装備の強化であったり、ダンジョン内の施設を利用するのに使用したりする。施設を利用するにはチュートリアルを突破する必要がある」

この辺の説明もキッチリしてくれた。
どんな施設があるかの説明もあったね。

……そう言えば、皆が利用した場合ってBBQ広場とか人で埋まりそうだよね?その辺どうなってるんだろう……アマツの事だから対策はしてると思うけど……アマツだから不安と言う思いもちょっぴりある。

とか何とか考えていたら、その辺りの説明もあった。

要は見た目は同じだけど、違う場所にある施設が大量にあって、人でいっぱい!みたいな事にはならないんだそうだ。

これはダンジョンも同じらしく、例えば小ダンジョンに大量の人が入っても、人が多すぎで狩りにならん!ってことは起こらないみたい。

あとは、ダンジョンに仲間と来たけれど、いざ入ったらバラバラに……何てことは起きない。
チュートリアルを突破した際に貰える、端末……Dパッドと言うらしい。これ使ってパーティーを組めるんだそうだ。

ちょっとどこかのパッドと名前が被っている気がしなくもないけど……まあ、たぶん大丈夫デショ。


しかしこの機能、俺知らないんだけど……まさか今日から実装したとかだろうか?

俺の知らない事も抗議で出そうだし、ちゃん聞いておかないとだなー。


「義務として得たポイントの1割をポーションに変えて納品して貰う事になる。代わりにダンジョン内で得た物を売って得た利益については、税は優遇される……ざっくり言うと半分になると思って良い」

税金の話もあった。
詳しく話すと面倒だからはぶくけど、ざっくり半分になるのは嬉しいね。

メートさんに納品した素材の代金とか、とんでもない額になってるけど、あれも対象だろうし……ところで税金の払い方とかよく分からないんだけど、どうしようね。

あとで……これは大塚さんかな?うん、大塚さんに相談しよう。脱税とかで捕まりとうない。

「ダンジョンは基本的に4種に分けられている。それぞれ出て来るモンスターであったり、推奨人数、推奨装備が異なる。一緒に潜るメンバーと良く相談し、どのダンジョンに潜るか決めて欲しい」

俺たちの目的はカードな訳だけど、今のところ目当てのカードを落としそうなモンスターが見つかってないんだよね。

だからどのダンジョンに潜るかはあとで皆と相談して決めようと思う。
前にちらっと話したとき、ぶっちゃけ割と何処でも良いんじゃね?的な雰囲気はあったので……まあ、適当に選ぼう。

「ダンジョンに潜るメンバーとして、ペットを連れて行くことも可能だ。……ただし、ダンジョンにおいては当然ながらペットも負傷する。その事を良く考えて判断して欲しい」

皆の視線がクロと、俺に集まる。

……実際にクロも怪我を負ったことはあるし、教官の言うことはもっともだと思う。
クロがダンジョンに行きたくないと言えば、俺はそれ以上クロをダンジョンに連れて行くことはしないしさせない。

ただ今のところはクロも俺もダンジョンを楽しんでいるので、しばらくは一緒に潜り続ける事になるだろう。

「最後に、ダンジョン内では死ぬことは無いと、すでに皆が知っているかと思う。これについては本当だが、ダンジョンに入るとその事を忘れてしまう事になる」

へ?

「そしてチュートリアルを突破すれば思いだし、以降はダンジョンに入っても忘れることは無い。これは最初はそう言ったスリルも楽しんで欲しいとのダンジョンマスターの意向であり、我々がどうこう出来る物では無い」

ああー、なるほど。
拘り有りそうだったしなー。

俺は別に問題なし……と言うか実際にその状態でチュートリアル突破しているし、むしろ賛成な感じだ。

あれのおかげで覚悟が決まった感もあるし、一度は体験しておくべきかなーと思う……ずっとはキツいけど。

「これでダンジョンに潜る前提の講義は一通り説明した。今までのことについて同意し、ダンジョンに潜る事を希望する者はこの誓約書にサインと印鑑または母音をお願いしたい」

っと、講義も終わりか。
気が付いたらもうすぐお昼になる時間であった。

今までの講義を受けて、こんなつもりじゃ無かったとか、そんなルール聞いてない!とかごねる人はお帰り下さいって事らしい。

そうじゃなければ誓約書にサインして午後からダンジョンに行く、そして明日以降はまた別の講義を受けて……と言う流れだ。


もちろん帰る人なんて居なかった。
……何人かは不満そうな表情をしてはいたけどね。


まあ、それでも帰る人は居ないという事で、誓約書が皆に配られた。

俺の前に紙が一枚、そしてもちろんクロの前にもである。

……うん、クロの前にもなんだ。
またまわりの視線がクロへと集まる。

これは流石に仕方ないよね、普通に考えたら猫がサインなんて出来るわけ無いし。
どうすんだあれ?とかヒソヒソ話す声が周りから聞こえてくる。
ニヤニヤ笑ってる奴、顔覚えたかんな。



……んま、クロは普通の猫じゃないんだよね。

まわりの視線がクロに集まる中、クロはペンを口で咥えると、ゆっくりとではあるが誓約書に「クロ」とかき込んで見せた。

そして朱印を前足でぽむぽむと踏み。誓約書をふみふみする。

これでクロの誓約書は完成である。
素晴らしい。

「……ほんと器用だなあ」

戸棚からチュールだしたり、猫缶開けたりしていたけど……まさか字まで書くとはね。

「はい、拭くから前足だして」

そう俺が言うと、クロは鼻をふんっと鳴らして前足を出す。
俺は前足をそっと掴むと、アルコールティッシュで拭い始める。

「……」

拭っている最中にふと思ったけど、もしかして政府側としてはペットをダンジョンに連れて行くのは反対なのかも知れない?
この誓約書のサインは本人以外は不可となっているし……こんなのクロしか対応できない。

何かしらゴネないとダメだろう。
だからこれはクロだけが特別許されたと見るべきかな。

「んー……」

……ああ、でも隊員さん達はペットを連れて行くのを考えていたような……?
それにこの講師の人もペットはOKって言っていたし……この誓約書を用意した人が単にペットの事まで考えてなかったとかだろうか?筆記試験と言い、どうも漏れがあるような……。

ちょっと気になるから、後で隊員さんにでも聞いてみようか。

「ほい、綺麗になったよ」

ま、今は午後の講義に向けて皆とお昼でも食べるとしますか。
顔を撮影されて晒される心配も減ったし、落ち着いて食べられそうだ。
いい加減このフェイスガード外したかったんだよね……微妙に蒸れるし。
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