家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
214 / 304

「214話」

しおりを挟む
とりあえず目についた必要そうなものは全てバッグに詰め込んだ。
おかげで蓋を閉めるにもえらい苦労した。

クロのカリカリは現地で買う予定だ。
どうやらたまには違うものを食べてみたいらしい。

あ、ちゅーるは別だよ。あれはきっちりバッグに詰め込んである。

とりあえずこれで荷物は良しと。

じいちゃんばあちゃんにも1週間ぐらいアメリカに行ってくるーとは話しておいてある。
おみやげよろしくって言ってたので……何がいいかな? カラフルなお菓子とかが良いのだろうか。

そのへんは時間ある時に隊員さん連れて買い物でも行けば良いか。
……行けるのかな? ある程度自由時間あるとは聞いてるけど、出歩いちゃダメとかなきゃいいが。


ま、準備としちゃこんなもんだろう。
あとはー……。

「さて……」

面倒なのがちょっと残ってる。
俺がそっちに視線を向けると、そいつはまだふてくされているようで、じとっとした視線を返してくる。

「なんだい?」

「留守番頼むぞ? ふりじゃないからな? 変なことしたら植木鉢上から被せるぞ?」

こいつを家に残していくとか不安しかねえ。
かといって持っていくという選択肢もありえない。もっとやべえことになる予感しかしない。

「留守番?」

そうだよ。
キョトンとした顔したって、生首には愛嬌なんて感じないぞ。

「俺とクロは、明日から1週間アメリカに行くんだよ」

「聞いてないよ!?」

「今言ったから」

言うだけ友情だよ。

……正直言うと何も言わずにアメリカに行くって選択肢も勿論考えたよ。
でもさ、それやると残されたこいつが何をしでかすか分かったもんじゃねえ。

ご近所を泣きながら転がりまわるとかさ、そういうはた迷惑なことをしでかすんじゃないかと不安でしょうがない。

「断固拒否する!」

ちょ、近寄るんじゃねえっ。
バッグに入ろうとすんなし!

「お前連れてったらトラブルの元にしかならんだろーが! だめに決まってんだろ!」

バッグからイースをひっぺがし、ボーリングの球よろしく床をゴロゴロと転がす。ゴロゴロと。
……思ったより転がったな。

「鬼! 悪魔! 人でなし!」

「お前に言われたくねーよっ」



……とまあ、そんな感じで色々と……ほんと色々とごたごたもあったけれど、どうにか出発の準備は整った。
イースに関してはゲームのソフトをいくつか与えることで、しぶしぶ引き下がった……イースの要求したソフトがダンジョンものだったのがちょっと気になるが……まあ、気にしないでおこうか。

それよりも、そろそろ出発の時間が近付いている。
念のため荷物の確認をしておくかな……。


「……ついてきて無いよな」

ないと思うけど、不安だ。
頭の大きさを考えると、こっそり荷物に紛れるなんて無理そうではあるけど……小さくなって張り付いてないよな?

「どしたのー?」

「ああ、いえ。忘れ物ないかなーと」

おっと。
荷物をゴソゴソあさってたから、北上さんが心配して声を掛けてきた。
とりあえず「いえ、生首入ってないか確認してたんす」とか馬鹿正直に言う訳にはいかないので、ごまかしておく。

……これで、本当にイースの生首入ってたら大惨事だったな。タイミング的に北上さんにばっちり見られそうだし。
あぶねえあぶねえ。

「スマホとお財布、あとパスポートあればたぶん大丈夫だよー」

そういって、自分のスマホとお財布、それにパスポートを手に取り見せてくれる北上さん。
いや、さすがに着替えとか洗面用具とか……ああ、そうか。

北上さんはダンジョン内で生活しているし、アメリカのダンジョンから自室にいけば一通りそろってるのか。
そらその三点あれば大丈夫だな。

「あー、それもそうっすね」

んで、それは一応俺にもあてはまる。
イースのせいで1週間ばかりダンジョンから出ないで生活してたかんね。
部屋も普通に過ごせるようになっているし、荷物もある程度持ち込んである。


てか、こっちが別に用意しなくても、アメリカ側で用意してくれてそうな気もするけどね。
泊まるところだって用意してくれているって話だし……基地内かもしれんが。まあ、それはそれで色々見学したり面白そうではある。


とりあえず荷物の心配はなし、と。

そうなるとあとは出発するまで待つだけなのが……なんとなく手持ち無沙汰になったので、空港内を見渡してみる。
……あ、今俺が居るのって実はもう空港内だったりするよ。自宅で荷物あさってたわけじゃないのだ。

さて、何か面白そうなものは……お?

「……このガタイの良い集団は、みんな隊員さんかな? めっちゃ目立ってるけど」

ガチムチ集団がおるぞ。
みんな私服だけど、あれ絶対隊員さんだろう。
ジャンバー脱がなきゃ良いのに……って思ったけど、空港内暑いんだよね。
冬で厚着してるから余計だ。

レベルアップの恩恵で、熱いのは結構耐性あるけど、暑いのは不快なままなんだよね。

「そだよー。まあ、島津くん……てかクロも目立ってるけどねー」

「まあ、そうっすよね」

普通は空港内に猫なんて居ないからな。
お子様が寄ってくるので、今は自販機の上で香箱座りしながら見下ろしている。
視線の先にあるのは俺である。

こいつ、さっきからなんで荷物あさっとんのだとか思われていたのかも知れない。
北上さんに心配される前につっこんで欲しかったなあっ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...