家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「286話」

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にょきっと生えていた草をむんずとつかみ、引っこ抜く。
軽い抵抗をみせて、ずぼっと根っこまで千切れることなく草は抜けた。

……思っていたより多いな。

「……はい」

引っこ抜いた草を根っこごと中村に手渡す。
思わずといった感じで受け取る中村であったが、その顔には困惑が浮かんでいる。

「はいって、渡されても困るんだが……」

ですよね。

「薬草だって。食べてみたら? 最大HP増えるかもよ」

手に取って分かったんだけど、草の正体は薬草だったよ! ちょっと毒味かねて食べてみようぜっ。
中村がなあ!

「……これ全部?」

中村は少し葛藤した後、生首に対しそう問いかける。
まあ、気持ちは分かる。

「全部」

「あ、はい」

生首にあっさりそう返されて、中村の表情が消える。
お面で見えないけど。まあ、雰囲気だよ雰囲気。

スーパーで売ってるホウレンソウの束あるじゃない? あれぐらいのボリュームあるんだよね、この草。
仮に調理したとしても食うのちょっと辛い量である。しかも根っこついてるし。

そんなボリュームたっぷりな草を、中村は……ひょっとこの口に上からぶすっとさして、少しづつ咀嚼していった。
……一時的にでもお面外せばいいのになーと思わなくもない。

でも言わない。だって絵面おもしろいもの。



「すっごい不味そうな顔してんな」

「実際えぐくてまずい……これ、クロとか太郎は食えないんじゃね?」

結局食いにくくて仮面外しやがりましたよ。
しかしこの草そんな不味いのか……まあ、食用の野菜じゃないんだし、そりゃ不味くて当然か?
でもなあ、こんだけ量も多いし、さらに不味いとなると戦闘中に使ったりとか無理やぞ。

「美味しくしたほうがいいかねえ? 不味いほうが雰囲気でるかと思ったんだけど」

いやまあ気持ちは分からんでもないが……ポーションが普通に飲める分、差が酷い事になるぞ。

「人によっては吐くかも知れんし、多少は改善したほうがいいと思う……せめて無味無臭とか。あと量をうどうにかしてくれ……」

「考えておくよ」

まじで頼むぞっ。
そうじゃないとみんなポーションだけ使って薬草使わなく……あれ? そもそも薬草があるってことはポーションなかったりするのか? なんかポーションも手に入るようにする的なことを言ってた気もするけど……はて? 気のせいだったのだろうか。

「そういえばダンジョンで手に入る回復材ってポーションじゃないんだねー」

お。ナイス北上さん。
ポーションについて聞こうと思ったら、先に聞いてくれたよ。

「ポーションは街やダンジョンで買えるよ」

「ふむ。もしかしてドロップはしない?」

「しないねえ」

そのパターンか。

「なるほどねえ。ダンジョンで入手したアイテムを売ってポーション買って、ダンジョン外に持ち出すと……」

「その通りだね」

このアイテムのドロップ率だと、そこまで大量にポーション入手はできないだろうなあ。
アマツダンジョンより温いらしいから、バランスとしては良いのかもだけど……しかし、ぬるいか? このダンジョン。
確かに痛みがないのはいいけど……。

生首の考えることだからなあ、よー分からん。
とりあえず掛け軸でも回収しにいくかな。

と思い、皆に声を掛けようとするが、それよりも先に逆に中村が話しかけてくる。
なんぞなんぞ。

「そういやさ、入ってすぐの部屋に襖だけど四つあったよな?」

ん……そういやあったな!

「一つは出口として、もう一つは何があったん?」

実際に確認したのは着替え部屋とダンジョンに続く2か所。
中村の言う通り、残り二つの内、一つは出口だろうね。

残りはー……なんだろう。買い物するところ?
あ、違うか。買い物は街とかでって言ってたもんな。
じゃあ、一体何があるのだろうか? 生首のことだからろくでもないものが……。



「ん? 初心者向けのチュートリアルダンジョンだよ」

「……」

そうきたかっ!

ろくでもないものじゃないけどさあ! ろくでもないなっ。

そらみんなして無言になりもしますわ。

「そっち行ったらよかったんじゃね??」

ほんとだよ!
通りで妙にぬるくないと思ったわ……。


「え、でも初心者向けだから滅茶苦茶ぬるいよ? 3~4時間もあれば終わるし、クリアしてもせいぜいポーション2~3個しか手に入らないよ?」

俺たち全員の非難を受けた生首が、チュートリアルダンジョンに行かなかった言い訳をするが……ぬるくていいんだよ! 最初の目的忘れてんな、この生首ぃ。

「元々アマツダンジョンの攻略諦めた人向けなんだからそれでいいべ。つーかそんなのあるならもっと早く言えっての。まじで槍の先端にぶっ刺しちゃうぞ」

まじでぶすっといっちゃうぞ。こんにゃろうめ。


「なんて酷い野蛮人なんだ」

「おう、俺らのご先祖様の悪口いうなし」
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