家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
288 / 304

「288話」

しおりを挟む
中村が葛篭に手を掛けた瞬間。
がばっと蓋が勝手に開き、中村の上半身を飲み込む。

そのまま葛篭は咀嚼するようにもごもごと動いていたが、急にびくりと身を振るわせたかと思うと、ぐったりとしてそのまま動かなくなる。

よくみると葛篭の上面から刀の切っ先が飛び出ていた。
中村が中から突き刺して倒したようである。

ちょっと予想通り過ぎて助けにいくの失念してたわ。
たぶん北上さんもだろう。

「さて中身はーっと」

そして食われかけた中村はというと、何事もなかったように葛篭の中を漁り始める。
ちょっとこの反応は予想外だったなっ。

「おっ、防具じゃん……なんだろこれ。半纏?」

半纏って防具なのだろうか。
どっちかというとただの防寒具な気がするけど……そう思い、中村が葛篭から引っ張り出した半纏をみてみるが、どうも半纏とは違う気がする。

なんだっけ、武将とかが羽織ってるようなやつ。あれだよあれ。

「たぶん陣羽織……どこかでみたような気がする」

そうそう、それ。俺が言葉が思い浮かばずに無言でいたら、北上さんが正解を言ってくれたね。
意外というかなんというか、北上さんこの手の結構詳しいよね。俺たちが知らなさすぎな可能性もあるけど……ぼそっと最後に呟いた言葉を聞くに、実物も見た事あるってことなのかな。

「せっかくだから中村つけておけば?」

「ん、いいの? わりーな」

せっかく自信を犠牲にしてアイテム獲得したんだしね。
それに、どうも運が悪いのかなんなのかこのダンジョンでは中村が被弾することが多そうな気がするし、中村がつけておいたほうが良いだろう。

陣羽織は見た目はかなり立派だね。
色もちょっと派手だしわりと恰好良い……まあ、ひょっとこのお面で台無しになってるが。

その後も俺たちは順調に道を進み、ついに次の階層へと続く階段を見つけていた。
時間でいうと2時間経過したあたりかな? 術を覚えるのに手間取ったからこれだけ掛かったけれど、そうでなければ1階層あたり1時間もあればいけそうな気がする。慣れればもっと早いかもね。

「んじゃ、進もうか」

「おうよ」

「おー」

地図を確認するともうすべての部屋を回っていたようなので、軽く休憩をして次の階層へと進む。

ダンジョンの見た目が変わるかと思ったが、特に変わった様子は見られない。
何階層か毎に変わるタイプなのか、それともこのままか……まあ、進めば分かってくるだろう。

「なんだかんだで結構そろってきてるな」

そう話す中村の言葉に「そうだなー」と返す。
薬草、毒消し草、火柱の術の巻物と結構使えそうな消費アイテムも追加で入手しているし、それになにより装備が充実してきている。
ちなみに火柱の術は、名前の通り任意の場所に火柱を出す術だったよ。
火柱を出してのっぺらぼうを蹴り入れてみたら、ごりごりHPが削れていったので割と威力は高かった。
でも素早い相手にはあてるの難しそうな気がするし、デカ物の足元に発生させて使う感じかなー。きっと良い感じにHPを削ってくれることだろう。


「えーと、打刀一つの槍が一つ、胴丸が二つに、陣笠も二つだっけか。そろそろ島津用の武器もほしいよなあ」

「確かに」

中村が指折り数えたように、武器も防具もかなりの数を入手した。
武器が少なめのため俺はまだ素手だが、防具は一応全員一つはつけている。
ちなみに俺と北上さんが陣笠っていう頭防具で、クロと太郎が胴丸っていう鎧だね。

最初はクロと太郎が防具を装備できるか不安だったけど、いざ装備しようとしてみるとその体に合わせてサイズが自動で調整されたので問題はなかった。
あと自分で着なくても、勝手に装備されるタイプだったので手間も掛からなくて助かった。
こう、ひゅっと消えたと思ったら、次の瞬間にはクロと太郎の胴体に装着されてたんだよね。便利便利。


さて、それで2階層に来た訳だけど、最初の部屋に敵は見当たらなかった。
なので俺たちはなるべく慎重に廊下を進み、そして次の部屋へと出る。
そこもガランとした部屋で、敵もいないしアイテムなさそうだな……。

「おお! あれ、鎧だよな? すげー、武将とかがつけてる、やつ……じゃん?」

と思ったら、部屋のすみっこに鎧一式が、鎮座するように置いてあった……のかな?
中村が首を傾げているが、俺もちょっと疑問が浮かぶ。

「あれ、装備だと思う?」

「いやぁ。びっみょー……」

俺の質問に対して、言葉を濁す中村。
例のゲームをやった人なら知っているかもだが、こういう鎧を着た敵がいるんだよね。
鎧をみるに、袴? 部分はぺちゃっと地面に着いていて、中に何かあるようには見えないが……中身が骨とかだったら、あのようになっていてもおかしくはない。
それに鎧だけじゃなくて刀があるってのがねえ……おいてあるのは鎧の右手あたりだ。腰にさしている訳じゃないんだけど、やっぱ武器があると警戒するよね。

「なんかあったらフォローよろしくな」

さてどうするかなと考えていると、中村がそういって鎧に近づいていく。
今日の中村は積極的だなっ。骨はひろってやるぜ。


慎重に中村が近付いていっても鎧は何も反応を示さない。
もしかして本当に鎧だったのか? そんな考えが頭を過るが……中村の手が鎧に触れるかいなかといった瞬間、鎧が動いた。

右手で刀をつかんだかと思えば、逆手で抜いてそのまま中村に切りつけたのだ。


「わりい! 避けられんかった!」

切りつけられると同時に、鎧から距離をとる中村であったが、頭上を見れば中村のHPバーが残り半分を切っていた。
中村も警戒はしていたので、とっさに飛びのいたが……躱しきれなかったのだ。

警戒していなかったら、今の一撃で死亡判定が出ていた可能性もある。
まじで次の階層から敵強くなっとんな、おい。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...