家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「291話」

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先行するみんなを追って、俺も通路の入り口へと向かう。
背後からは土壁が崩れる音と、それよりもずっと大きな無数の足音が迫っているのがよく聞こえる。

それに背後からだけではなく、土壁で造った通路の外からも足音が迫っている。
ほんの数秒もあれば土壁は壊され、敵が俺に向かい殺到することだろう。

「島津!」

通路の入り口で、早く来いと手をふる中村の姿がみえた。
突き刺さった槍を片手でおさえ、ひたすらに走る。


「せええっふ!!」

間一髪だった。
俺が通路に飛び込むのと、土壁が壊れるのはほぼ同時だった。

そして、その直後に通路の入り口が土壁でふさがれる。
北上さん、クロ、太郎が同時に術を発動したので。

3人分の土壁だ。
通路に詰めた分だけ厚く作られているし、ある程度時間が稼げるだろう。


「曲がり角まで走って」

そういって走りだす北上さん。
それをおうように残りの面子も駆け出した。

通路の入り口で戦うよりも、通路の少しいったところで戦ったほうが敵も分散されて戦いやすい……と思う。敵によって移動速度に差があるからたぶんうまくいくだろう。

「ほれ」

「さんきゅ!」

走りながら腹に刺さった槍を引っこ抜いていると、横から中村が薬草を渡してくる。
ありがたく頂こう。


「……まっずいなこれ」

曲がり角の先で止まり、薬草をもっしゃもしゃと食べるが……まじで吐きそう。
なんだろうな。みんな苦手な野菜とかあると思うんだけどさ。ほら、しっかり濃いめの味付けで誤魔化せせばなんとか食えるぐらいの。

あれを味付けしないでそのまま食ってるぐらいの不味さだ。

だがどんなに不味かろうがこれを食わねばHPは回復しない。
……いや、時間経過で回復するっちゃするけど、この場面でそんな悠長なことはしてられんし。
てか

どうにかくっそ不味い薬草を飲み込むと、俺たちが通ってきた道から足音が響いてくる。
やはりあの量の土壁でも時間稼ぎにしかならんかったか……いや、そもそも時間切れで消えてるか。

まあ、ここで迎え撃とう。
さらに奥に逃げて、逃げた先に敵がいたら挟み撃ちにされちゃうしな。
それならここで戦ったほうがずっとましのはずだ。


「先頭が見えた瞬間火柱で」

「おうよ」

「りょ」

直接殴り合う前に出来るだけ削っておきたいからな。
うまくいけば火柱だけで死んでくれるかもしれない……音がかなり近い、そろそろ……きたっ。

曲がり角から飛び出してきたのは、毛むくじゃらのゴブリンみたいなやつだった。
斧を両手にもち、牙をむき出してこちらへと向かってくる。

直後、5人同時に発動した火柱にその姿が飲み込まれる。

……やったか? とは言わない。
たぶんある程度は削っているだろうけど、死んではないんじゃないかな。
死んでたらラッキーだけどさ。

「やっぱ死んでねえか」

火柱を突き抜けて、火だるまになった敵が飛びかかってくる。
HPは先頭のやつが3割ほど、後続は7割ぐらい削れていた。
これは位置関係によるものだろう。

これなら1~2発攻撃をくわえれば倒せるかなーっと思ったら。
次々に火柱を抜けて敵が飛び出してくる。まじかよ足止めになってねえ。目の間にある火柱ガン無視して突っ込むって頭おかしい。

幸いなのはみんなHPが減りまくってるってとこだけど……泣き言いってる暇はない。目の前の敵を倒さないとこっちがやられるだけだ。
そう考え俺は槍を握る手に力を込めた。



結果からいうとわりとさくっと乗り切れた。

「追加はなし……なんとかなったなー」

近寄ってきた敵を槍でついて、叩き伏せと殺しまくっているうちにレベルがどんどん上がったんだろうな。
後半になればなるほど敵を倒すのが楽になっていった。
最終的には火柱だしていなくても問題ないぐらいだったし……まあ、MPきれて出せなかったんですけどね。

「出たところが部屋のはじっこでよかったねー」

「土壁だして凌いで……すぐMPきれるか。運がよかったなあ」

(おりたところがモンハウだった時点でついてないと思うが……)

運がよかったという北上さんと中村をみて、心の中でこっそり思う俺であった。

通路から入ればもっと楽だったからねえ。
その場合、俺は素手で戦うことになったけれどそれはそれ。

つーかだ。
そもそもモンハウを用意した生首が悪い。
転がして太郎の刑に処してやんよ。


……あれ?

「生首は?」

「あっ」

「げ……カメラ持ったままか」

転がしてやろうと生首を探すが、姿が見えない。
ていうか階段下りた直後にそもそも居たかどうか……おくれて下りたとすると、土壁で俺たちと遮断されて、フルボッコにされてたかも知れんな。

……まあ仮にもダンジョンの創造主なんだし、それはないと思うけど。集まってきた敵に轢かれるぐらいはしてるかもだ。その場合は中村のカメラもお亡くなりになっていることだろう。なむさん。



「私の心配をして欲しいものだねえ」

生首が天井から振ってきた!

「生きてたか。ほれ、太郎とってこーい!」

「なんでぇ!?」

カメラも無事だったようなので、とりあえず生首を転がしておいた。
太郎が嬉しそうに追いかけて、そのまま咥えて走り回っている。飽きたら戻ってくるだろう。
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