家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
299 / 304

「300話」

しおりを挟む
大量の冷えた敵の体内からコアを探すのは少し手間かと思ったが……他は真っ黒になっている中、一か所だけ赤くなっている部分がある。
どう考えてもあそこにあるよな、コア。

「この中か? ……よっと!」

中にあると分かればやることは一つ……ではないかもだけど、とりあえず蹴りをぶち込む。
氷礫だと、中まで効くか分からんし、蹴るのが一番だよ。たぶん。

俺が放った蹴りは、赤くなった箇所を黒く固めて砕く。
砕いた瞬間、足に妙な感触がきた。
グニッて感じで、弾力のあるものに触れた感触だ。おそらくコアだろう。

「これコアか。さすがにでっかい……いや、本体の大きさ考えると小さいか?」

砕けた体に混ざって、ボール状の物体が転がりでる。
大きさはでかめのスイカぐらいはあるだろう。

転がったコアは周囲の黒くなった体とは違い、紅色にうっすらと光っている。
触れても熱くないことから、冷え切った状態がこれということなんだろう。

気が付けば、次の階層へと続く階段も出現している。
さっきの蹴りが止めになったということか。コア部分は耐久がかなり低いみたいだ……まぐれ当たりさえすれば、一撃で倒せる可能性もあるなこれ。

ま、それは帰ってから考えるとしよう。

「これ食えるのかな……それとも強化にしか使えない? 身の部分なんて固まった溶岩と見分け付かんし……とりあえずコア持って帰るか」

ドラゴン以降の敵はみんな美味しかった。
それを考えればこいつも美味しいんじゃないかと思うが、肉体は岩か何かのようでとても食えるとは思えない。素材として使えるかも微妙だろう。まあ、欠片ぐらいは持って帰るけど。

必要なものをバックパックに詰め込んでさあ帰ろうかといったところで、クロが俺の足をたしたしと叩き『にゃあ』と鳴く。

「一応次も覗いてけって?」

俺がそう返すと、クロはてってってーと階段へと向かって行く。

まあ、そうよね。次の階層覗くだけ覗いてくのが普通よな。
なんか疲れてこのまま帰るつもりになってたわ。

さて、次の階層はどんなのカナー?



「うん……まあ予想通り。あれを複数相手すんのきっついぞ……」

一面マグマですね。
ちらほらとマグマから飛び出してるやつが見えるので、例にもれずゲートキーパーが次の階層の敵になるようだ。
たまには例外があってもいいんだよっ? そういったサプライズは大歓迎だ。
より厄介な敵になっていたら泣くけどな。

しっかしなー、こんだけ広いフィールドで敵を倒しながら移動するって絶対キツイよな。

「コアを素材にすれば、耐熱はある程度なんとかなりそう……ていうかなってくれ」

大分希望がはいるけど、今までの素材を使った強化具合を考えると耐熱に関してはそれなりにましになるはず。
1匹倒した程度で飢餓状態になるってことはまずないだろう。おそらくレベルアップも加味して数匹は倒せるはず……数匹じゃダメなんだよなあ。

「てか問題は火力だよ火力。メインの攻撃手段が効かな過ぎてヤベエ」

そっこうで倒せば、ダメージも少なくてすむしな。
攻撃は最大の防御なり! だっけ? やっぱ火力は正義なのだ。

その火力が通じない相手なんで苦労するんですけどね。
土蜘蛛効かないとか、ちょっと想定外だわ。

「とりあえず帰ろっか。ご飯食べて今日はゆっくり休もう」

そのへんの火力うんぬんについては、帰ってから考えるとしよう。
さすがに疲れたわ。


バックパックを背負い直し、元来た道を戻っているとふいにクロが俺の肩に飛び乗る。

どうかしたのかな? と思っていると、クロは俺のバックアップをごそごそと漁り、戦利品のコアを取り出し俺に『にゃん』と鳴いた。

「これどうすんのって?」

どうするもなにも強化に使う……と思った瞬間お腹がすごい音でなった。

……ちょっとダメージくらいすぎたかな。戦闘中はそこまでじゃなかったけど、時間が経ったからか腹の減り具合がやべえことに今更気が付いた。

「んー……やっぱ強化……いや、でもどんな味か気にはなるし」

冷静に考えれば強化一択なんだけどね。
戻れば飛竜の肉とか食べ放題だし。

でも腹が減り過ぎて冷静な思考ができない……おそらくクロもお腹が空いているんだろう。いつものクロなら強化一択であって、むしろ食おうと悩んでいる俺を窘めるはずだ。

むぅ……せめて半分だけ食べて、残りを強化に……そんなこと可能なのか? 素材として完全に残さないとダメか……いや、でもこれだけ大きければ一口ぐらい齧ってもバレないんじゃないか。システムだって誤魔化せる。きっと誤魔化せる。
ほら、さっき蹴った部分とか凹んでるし、一口齧るぐらいなら……あっ。


「……足跡ついてるぅ」

あかん。
誰だよコアに足跡つけたの。俺だよ!

とどめの蹴りかあかんかった……ぐぅ、一気に食欲がなくなったぞ。
ちくしょーめっ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...