ループ8回目ですが、わたくしは悪役令嬢であって魔女ではありません!

仲室日月奈

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第二章

11. これまで見てきた未来は

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 セラフィーナの問いに答えたのはアルトだった。

「ああ、ここは僕の隠れ家だよ。普段は騎士宿舎で寝泊まりしているけど、仕事で外に出ることも多くて、外にも家があると便利でね」

 道理で生活用品が少ないわけだ。納得していると、もう一つの空いた椅子にラウラが座り、アルトは窓際の横の壁に背中を預けた。

「三年以内に魔女として裁かれる。……ラウラからはそう聞いたけど、間違いはないかい?」
「……間違いありません」
「うーん。僕が見ても、君が嘘をついているようには見えないね」

 ラウラとアルトが目配せしている。だけどそれも一瞬のことで、すぐに二人の視線がセラフィーナに集まる。

「ここは防音結界に包まれている。だから、正直に話してほしい。君は他にどんな未来を知っているの?」

 深い海のような紺碧の瞳に見つめられ、セラフィーナは視線をそらさずに答えた。

「まず、ディック殿下とマリアンヌ様が婚約されることで、近い将来、ユールスール帝国とシルキア大国は友好条約を結びます」
「なるほど。今の情勢では、確かにありそうな話だ」
「一方、魔女以外にも魔法使いを積極的に雇用しているマルシカ王国は、シルキア大国と関係が悪化していきます」
「……あー。シルキア大国は魔女排斥運動が活発だからね。また戦争が起こっても不思議ではないよね」

 アルトがしみじみとつぶやき、ラウラは無言で話を聞いている。
 セラフィーナは果たしてどこまで言っていいか、悩みつつも口を開いた。

「わたくしの知る限りでは、シルキア大国とマルシカ王国は水面下でいがみあっているだけです。戦争は起きません。……三年後はわかりませんが」

 マルシカ王国に知り合いでもいるのか、ラウラが考えこむようにうつむいている。その様子を一瞥し、アルトが話の続きを促した。

「他に知っていることは?」
「……次期大公クラヴィッツ様が二年後に即位されます」
「即位? 大公閣下はお元気だよ。なにか政変でも起きたのかな?」

 表情は穏やかなままだが、その目は狙いを定める獣のような鋭さだった。
 セラフィーナは他国で伝え聞いた情報をそのまま伝えた。

「風の便りでは、病気療養のためだとか。真偽のほどはわかりません」
「……ふうん。そうか。どう思う? ラウラ」

 壁から身を起こしたアルトが、黙って物思いにふけっているラウラを見やる。ラウラは瞬きして気持ちを切り替えたのか、いつもの口調で返す。

「彼女の話は真実なのでしょう。だって、アルトが仕掛けた嘘を暴く魔法が作動していないもの」
「……まぁね」

 セラフィーナは二人の会話を聞いて、肝が冷える思いをした。

(嘘を暴く魔法なんてものがあるのね……正直に話してよかった。それにしても……ラウラ先輩はともかく、アルト様も魔法が使えるなんて)

 どうやら、ただの近衛騎士ではないようだ。この隠れ家のことといい、二人には何か大きな秘密がある気がする。昔なじみと言っていたが、あれは言葉通りの意味なのだろうか。それとももっと別の違う関係なのだろうか。

「セラフィーナ。私、ずっと考えていたことがあるの。魔女として裁かれる前に、魔法を身に付けたいと言っていたけど、どうしてマルシカ王国に行かなかったの?」

 ラウラの指摘はもっともだ。
 この世界で一番魔女がいる国はマルシカ王国である。
 セラフィーナもそう思って、旅一座でマルシカ王国を訪問したときにすぐ魔女を探した。ところが、かの国の魔女は国王の管理下にあり、会うためには王宮の許可証が必要だった。しかも特別な理由がない限りは許可は下りず、結局、セラフィーナは魔女と接触することができなかった。

「伝手を使って接触を試みましたが、許可証がないと魔女には会わせてもらえないと言われ……わたくしに許可証は発行されませんでした」
「え、今はそんなことになっているの?」
「仕方ないよ、ラウラ。時代が変われば慣習も変わる」

 アルトがなだめるように言い、ラウラは納得しきれない顔で頷いた。

(……? 何か、わたくしの知らない事情があるみたい)

 セラフィーナが口を噤んでいると、アルトと目が合う。
 彼はこちらに歩いてきて、ラウラの横に立つ。その立ち位置は、まるで見えない線を引かれたように感じた。
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