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第一章 転生悪役令嬢は冷酷だったはずの王子に溺愛されています
第六話 推しカプ降臨、、なのに不安な噂が聞こえてきます。
「……聖女様が、王都の教会に到着した!?」
自室で侍女たちの噂話を盗み聞きした私は、思わず持っていた扇子を落としそうになりました。 ついに、ついに来たわ! 私の最愛の推し、マリアちゃん! ゲーム『聖女の祈りと、銀の誓い』の正ヒロインであり、アルフレッド殿下の唯一の救いとなる天使!
(彼女さえいれば、アルフレッド殿下の狂った執着もマリアちゃんに移るはず。そうすれば私は自由の身、そして二人の尊い恋路を特等席で拝める……一石二鳥じゃない!)
私は即座に行動を開始しました。 ターゲットは、今や私の「歩く監視カメラ」と化した婚約者、アルフレッド殿下です。
「殿下、お願いがありますの。……私、どうしても街へ行きたいわ」
ティータイム、私はあえて殊勝な顔をして彼に縋り付きました。 案の定、アルフレッド様は即座に眉を寄せ、氷のような声を出します。
「街? ダメだ、リナリア。外は危ないと言っただろう。君を狙う不逞の輩や、君の美しさに目を奪われる愚か者が溢れている」
「そんなことおっしゃらずに! 殿下が一緒なら、世界で一番安全ですわ。ね? 殿下のエスコートで、今の流行りのリボンが見てみたいのです。……殿下の隣にふさわしい女でいたいから」
最後の一言は、我ながら吐き気がするほどの甘い嘘です。 ですが、この「重すぎる愛」を持つ男には特効薬でした。 アルフレッド様は一瞬で耳まで赤くし、私の手を握りしめました。
「……君が、そこまで言うのなら。……ああ、リナリア、君はなんて愛らしいんだ。わかった、私が責任を持って君を警護しよう」
(チョロい……! チョロすぎるわ、殿下!!)
というわけで、厳重すぎる騎士の護衛(と、私の腰を片時も離さない殿下)を引き連れて、私たちは王都の広場へとやってきました。 私の目的は一つ。教会の前で炊き出しをしているはずの聖女マリアの偵察です。
「あ……っ!」
見つけました。 教会の階段下、貧しい人々一人一人に微笑みながらパンを配る、一人の少女。 ふわふわとした金色の髪に、吸い込まれそうなアメジストの瞳。
(マ、マリアちゃんだあああ! 本物だ! 可愛い、マジ天使! 解像度がバグってるくらい可愛い!!)
ゲームのグラフィックそのまま、いえ、それ以上に清らかで愛らしい姿に、私のオタク心は狂喜乱舞です。 私が感動のあまり拝みそうになっていると、マリアちゃんがこちらに気づきました。 そして——彼女の視線が、私の隣にいるアルフレッド様に釘付けになったのです。
「……あ」
マリアちゃんの手から、パンがポロリと落ちました。 彼女は頬を林檎のように赤く染め、フラフラとこちらへ歩いてきます。 まさに一目惚れの瞬間! ゲームのイベント回収、キター!!
「あの……、そちらの御方……」
マリアちゃんが、勇気を出してアルフレッド様に話しかけました。 私は内心でサイリウムを振り回しています。 「いけいけマリアちゃん! そのまま殿下を攻略して! 私のことは気にしなくていいから!」
しかし、当のアルフレッド様はといえば。
「……不愉快だ。物乞いなら教会の中でやってくれ」
「ひっ……!?」
(殿下あああ!! 言葉を選んで!! 相手はヒロインよ!?)
アルフレッド様はマリアちゃんをゴミを見るような目(前世の私の大好物だったあの目!)で一蹴し、私を抱き寄せてその場を去ろうとします。 ですが、マリアちゃんはめげませんでした。
「ち、違います! 私はマリアと申します。……貴方様から、とても悲しい、でも温かい光を感じて……。あ、あの、もしよろしければ、お名前を……!」
「名前を教える義理はない。リナリア、行こう。汚らわしいものに触れると、君のドレスが汚れる」
アルフレッド様はマリアちゃんを完全に無視して歩き出しました。 私は引きずられながらも、必死に後ろを振り返ります。 マリアちゃんは、去っていくアルフレッド様の背中を、恋する乙女の目で見つめ続けていました。
(よし、完璧! マリアちゃんは殿下に恋をした! これでシナリオは動き出すはず!)
私は勝利を確信しました。 ……しかし。 アルフレッド様を追うようにマリアちゃんから目を離したその時、広場の端にいた平民たちのヒソヒソ話が耳に飛び込んできたのです。
「おい……あれが噂の『血の聖女』か?」 「ああ、見かけは可愛いが、関わらない方がいい。彼女が癒した病人は、一週間後に必ず……」
(え……? 血の聖女……?)
そんな物騒な二つ名、ゲームには一文字も出て来ない。マリアちゃんは、無償の愛で全てを救う「純白の聖女」のはず。 不意に、マリアちゃんが落としたパンを拾い上げる姿が見えた。その指先が、一瞬だけ、真っ黒に染まったように見えたのは気のせい?
「リナリア? どうしたんだい、そんな顔をして。……やはり外は毒だね。さあ、帰って二人きりで休もう」
アルフレッド様の腕が、さらに強く私の肩を抱きしめます。 推しカプが目の前で成立した喜びと、ゲームにはなかった不穏な噂への恐怖。
(……ねえ、これ本当に私の知ってるゲームなの!?)
スローライフへの道に、またしても正体不明の暗雲が立ち込め始めたのでした。
自室で侍女たちの噂話を盗み聞きした私は、思わず持っていた扇子を落としそうになりました。 ついに、ついに来たわ! 私の最愛の推し、マリアちゃん! ゲーム『聖女の祈りと、銀の誓い』の正ヒロインであり、アルフレッド殿下の唯一の救いとなる天使!
(彼女さえいれば、アルフレッド殿下の狂った執着もマリアちゃんに移るはず。そうすれば私は自由の身、そして二人の尊い恋路を特等席で拝める……一石二鳥じゃない!)
私は即座に行動を開始しました。 ターゲットは、今や私の「歩く監視カメラ」と化した婚約者、アルフレッド殿下です。
「殿下、お願いがありますの。……私、どうしても街へ行きたいわ」
ティータイム、私はあえて殊勝な顔をして彼に縋り付きました。 案の定、アルフレッド様は即座に眉を寄せ、氷のような声を出します。
「街? ダメだ、リナリア。外は危ないと言っただろう。君を狙う不逞の輩や、君の美しさに目を奪われる愚か者が溢れている」
「そんなことおっしゃらずに! 殿下が一緒なら、世界で一番安全ですわ。ね? 殿下のエスコートで、今の流行りのリボンが見てみたいのです。……殿下の隣にふさわしい女でいたいから」
最後の一言は、我ながら吐き気がするほどの甘い嘘です。 ですが、この「重すぎる愛」を持つ男には特効薬でした。 アルフレッド様は一瞬で耳まで赤くし、私の手を握りしめました。
「……君が、そこまで言うのなら。……ああ、リナリア、君はなんて愛らしいんだ。わかった、私が責任を持って君を警護しよう」
(チョロい……! チョロすぎるわ、殿下!!)
というわけで、厳重すぎる騎士の護衛(と、私の腰を片時も離さない殿下)を引き連れて、私たちは王都の広場へとやってきました。 私の目的は一つ。教会の前で炊き出しをしているはずの聖女マリアの偵察です。
「あ……っ!」
見つけました。 教会の階段下、貧しい人々一人一人に微笑みながらパンを配る、一人の少女。 ふわふわとした金色の髪に、吸い込まれそうなアメジストの瞳。
(マ、マリアちゃんだあああ! 本物だ! 可愛い、マジ天使! 解像度がバグってるくらい可愛い!!)
ゲームのグラフィックそのまま、いえ、それ以上に清らかで愛らしい姿に、私のオタク心は狂喜乱舞です。 私が感動のあまり拝みそうになっていると、マリアちゃんがこちらに気づきました。 そして——彼女の視線が、私の隣にいるアルフレッド様に釘付けになったのです。
「……あ」
マリアちゃんの手から、パンがポロリと落ちました。 彼女は頬を林檎のように赤く染め、フラフラとこちらへ歩いてきます。 まさに一目惚れの瞬間! ゲームのイベント回収、キター!!
「あの……、そちらの御方……」
マリアちゃんが、勇気を出してアルフレッド様に話しかけました。 私は内心でサイリウムを振り回しています。 「いけいけマリアちゃん! そのまま殿下を攻略して! 私のことは気にしなくていいから!」
しかし、当のアルフレッド様はといえば。
「……不愉快だ。物乞いなら教会の中でやってくれ」
「ひっ……!?」
(殿下あああ!! 言葉を選んで!! 相手はヒロインよ!?)
アルフレッド様はマリアちゃんをゴミを見るような目(前世の私の大好物だったあの目!)で一蹴し、私を抱き寄せてその場を去ろうとします。 ですが、マリアちゃんはめげませんでした。
「ち、違います! 私はマリアと申します。……貴方様から、とても悲しい、でも温かい光を感じて……。あ、あの、もしよろしければ、お名前を……!」
「名前を教える義理はない。リナリア、行こう。汚らわしいものに触れると、君のドレスが汚れる」
アルフレッド様はマリアちゃんを完全に無視して歩き出しました。 私は引きずられながらも、必死に後ろを振り返ります。 マリアちゃんは、去っていくアルフレッド様の背中を、恋する乙女の目で見つめ続けていました。
(よし、完璧! マリアちゃんは殿下に恋をした! これでシナリオは動き出すはず!)
私は勝利を確信しました。 ……しかし。 アルフレッド様を追うようにマリアちゃんから目を離したその時、広場の端にいた平民たちのヒソヒソ話が耳に飛び込んできたのです。
「おい……あれが噂の『血の聖女』か?」 「ああ、見かけは可愛いが、関わらない方がいい。彼女が癒した病人は、一週間後に必ず……」
(え……? 血の聖女……?)
そんな物騒な二つ名、ゲームには一文字も出て来ない。マリアちゃんは、無償の愛で全てを救う「純白の聖女」のはず。 不意に、マリアちゃんが落としたパンを拾い上げる姿が見えた。その指先が、一瞬だけ、真っ黒に染まったように見えたのは気のせい?
「リナリア? どうしたんだい、そんな顔をして。……やはり外は毒だね。さあ、帰って二人きりで休もう」
アルフレッド様の腕が、さらに強く私の肩を抱きしめます。 推しカプが目の前で成立した喜びと、ゲームにはなかった不穏な噂への恐怖。
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