【完結】光の魔法って、最弱じゃなくて最強だったのですね!生きている価値があって良かった。

まりぃべる

文字の大きさ
16 / 16

番外編 お客さま

しおりを挟む
今日も領地に荒れた所はないかと巡回していると、肩に小鳥が止まりました。
「あら、鳥さんこんにちは。私の肩に止まるなんて珍しいわね。」
そう言うと、肩から下り、私の目の前でクルクルと回りながら飛んでいます。

「え?どうしたの?」
すると、飛んで行きます。時折、私の方を見ながら。うーん、これはついてこいって事かしら?
ついて行くと、屋敷でした。そのあと、また私の目の前でクルクルと回り、飛んで行ってしまいました。
「良く分からないけど、帰ってこいってことかな?ありがとうねー!」

そう小鳥に向かって叫ぶと、侍従が出てきました。
「ミーティア様。ちょうど良かったです。お客さまです。着替えてすぐに、サロンへお願いします。」
と、馬を引き取り、グイグイと私を家の中へ押し込み、玄関の扉を閉めた。

「お客さま…?」
私が首を傾げていると、侍女が急いでやってきて、
「あー良かったです!まず、急いで体の汚れを落としますよ!」
と言って連れて行かれた。



身支度を整えて、サロンへ行くとお兄様とエルと、エルを少し歳を取らせたような似た顔の金髪青目の男の人と、その隣にとても美しい深い緑の髪色の女性がいた。

「やぁ。お邪魔しているよ。」

そう、エルに似た人が話し出した。これは、もしかしなくても…。
「お、お初にお目にかかります!私は…」
「いいよ、僕たちはお忍びで来たんだ。普通に話してくれると助かるな。」
「本当ですよ!来るなんて驚きました。」
あ、お兄様にも連絡なかったんだ…。

「ごめんね、言い出したら聞かないんだ。」
エルも、困ったような顔をしていた。

「エルが、この人じゃなきゃ結婚しないって言うからさ。見に来ちゃった。ここはとても良い場所だね。なかなか挨拶に来れなくてすまないね。エルが長らくお世話になっているよ。」
「い、いえ…。」
「ティア、立ってないでそこに座って。」
お兄様が座っている隣を手のひらで指し示してくれた。

「はい、お兄様。」
「ごめんね、座ってそうそうなんだけど、僕は退出するよ。」
え!お兄様…そんな…。

「大丈夫。こちらの方達は、ティアと世間話をしにきただけだよ。心配しないでいいよ。」
そう言われましても…。
「それに僕は、場つなぎの為だけにいたんだよ。ティアと話したい為だけにここまで来て下さったんだ。忙しい方達だからね。さぁ。」
そう言われると、そうですわね。
分かりました。今日は、エルのお兄様とお義姉様とお話…緊張せずに出来るかしら?

「さぁ、まずは紅茶を飲んで。」
エルにそう言われ、一口飲む。温かい紅茶が心まで染み渡ったよう。落ちつきを取り戻した。私は、お二人の方を見てニッコリと笑いかける事にした。挨拶が出来なかったから。

「さぁ。忙しいのにごめんね。ミーティア嬢、改めていつもダニエルの心の支えになってくれてありがとう。」

そう言って、国王陛下は頭を下げた。
私は慌てて、
「あ、頭を上げて下さい!私は何もしていません。エルは、ここで楽しく暮らしていますよ。心の支えとかは私ではないと思います。」

そういうと、隣の王妃様はクスクスと笑っている。国王陛下も頭を上げてからエルを見て、
「だめじゃないか、ダニエル。お前の心が全く伝わってないぞ!」
となぜだか叱咤されている。

「うーん、最近気持ちを通わせたばかりなんだから急がせないでよ。逃げられたら困るんだから。」
と、エルは言った。

「ははは。そうだな。ダニエル、頑張りなさい。女性は怒らせると大変だぞ。」
「俺は怒らせた事無いですけどね。肝に銘じておきますよ。」
「私からも一ついいかしら?」
今までクスクスと笑っていた王妃様が口を開いた。

「ダニエルは、結婚したらここの領地に住むのかしら?」
「はい、そうなります。」
あら、決定なのね。私はその方が嬉しいけど。
「そう。良かったわね。王宮は悪さをしている人を排除してもどこからか沸いて出てくるのよ。嫌になっちゃうわ。ミーティアさん、何かあったら相談にのるから、遠慮なく言ってね。」
「ありがとうございます。」

「顔を見られて良かった。そろそろ行かないと。」
「そうね。子どもたちが待っているわ。」
「わざわざ遠い所までありがとうございます。」


王都までは馬車で三日。馬で駆ければもっと早いみたいだけど、王妃様がいらっしゃるから時間をかけてじゃないとね。お子さん、王宮にいるのかしら。早く会いたいだろうに。

と、急に空が暗くなったかと思うと、バサバサと音がして、何とこの前のグリフォンがいた。

「何!?グリフォン!?」
国王陛下もさすがに驚いている。

「あなたどうしたの?こちらは国王陛下と王妃様なのよ。挨拶しにきたの?」

そう私が問うと、空から地面に降り立った。そして、体を低くして伏せ、の状態になった。なんだかこれって…
「もしかしたら、乗ってって事?王宮まで国王陛下と王妃様を乗せれたりする?」

いやでも王妃様は乗らないでしょう。地面にいきなり落ちても困るし。
でもグリフォンは、グェとひと声鳴いて、姿勢はそのままだった。

「ごめんなさい。あなたの気持ちは嬉しいけど、王妃様は多分乗れないかしら。」
きっと貴族を絵に描いたような、お淑やかで馬になんて乗った事ないんじゃないかしら。

と、成り行きを見守っていた王妃様が、
「素晴らしいわ!ねぇ、ヤヴォル、乗せてもらいましょうよ!」
と言った。

え!?王妃様、そうくる?

「えっと…このグリフォンって、〝闇の森〟にいた?太古の昔、伝説となったあのグリフォンかな?」
伝説?…そういえば小さい頃読んだ本にあったかも。言われるまで忘れていたわ。
かなり昔この国で領地を争って領主達が奪い合っていた頃、怒ったグリフォンが大暴れして人間たちを壊滅させ、うちの領地の森に帰っていったとあったわね。きっとそれの事よね?

「分かりませんが、そうかもしれません。そして、発見した時そのグリフォンは〝闇の煙〟に侵されていました。その煙を〝消化〟したのはティアです。」
エルが説明してくれる。

「なるほど…実は王族の継承者にしか知られていない話だがな。この地クロベルンはそのグリフォンが帰っていった地だとされる。そして、そのグリフォンが最も気を許せるのがクロベルン領主の娘だと。使者とも呼べる者の目印が銀髪銀目なんだとか。しかし闇の煙に侵されていたと言っていたな。長い年月をかけ、魔力が良くない方へとねじ曲がって行ってしまったのかもしれん。」
へー、王家にまでそんな話が…。

「そんな事が…」
エルも昨日お父様の話を聞いたのもあってか考えている。

「そうだ。だからこの地はとても大切な土地なんだよ。国境という意味での辺境というのももちろんだけどね。しかし、国を奪い合うという負の感情が闇の魔力へと変化する一因となったのかもしれない。闇の森はもともと神聖なものだったが、立ち入り禁止という事だけがいつの間にか、後世にまで語り継がれているね。闇の煙は悪い魔力だ。それが浄化されたから、グリフォンは君の言う事を聞くのかな?領主の娘が使者とは本当だったのだな。グリフォンよ。私達を王宮まで乗せてくれるのか?」

ギャー

と、ひと声ないてまた同じ姿勢になった。私が、国王陛下と王妃様が早く子どもに会えるようにすぐ帰れるといいなって思ったから?

「大丈夫?落としたりできないのよ?」
と私がグリフォンへ聞くと、

「落とされたら困るな。王妃はこの見た目に反してお転婆だから多少は大丈夫だが。よろしく頼みたいな。」

ギャー

とまた鳴いた。

「ではグリフォンよ、よろしく頼む。あ、馬車はゆっくりでいい。また王宮に来るときにでも使って来てくれ。」
と、さらっととんでもない事を言った。

「分かりました。お気を付けて。」
とエルが言ったが、二人とももうグリフォンの背に乗っていた。

「大丈夫ですか?」
私が聞くと、
「僕も多少は魔法が使えるから、どうにかなるよ。ありがとう。ではまた!」
「またねぇ!」
国王陛下と王妃様はとても嬉しそうな顔をして手を降っていた。
まぁ空を飛ぶなんてなかなかないわよね。

「「はい。お気をつけて。」」
と言うと同時にグリフォンは翼を羽ばたかせ、飛んで行った。

「す、すごいな。圧巻だった。」
エルが小さくなっていくグリフォンを見ながら言った。
「ええ。びっくりしたわ。」
私も、いろいろとびっくりしたわよ。

「いや、やっぱりティアは最強だよ!」
そう言ってエルは私をいつまでも抱きしめてくれていた。





☆★☆★☆★
これで、終わりです。呼んでくれた方、お気に入りしてくれた方、コメントをくれた方ありがとうございました。
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

にゃおん
2022.01.14 にゃおん
ネタバレ含む
2022.01.14 まりぃべる

にゃおん様、今回も感想をありがとうございます。

そう言って下さいまして、ありがとうございます(#^.^#)嬉しいです。

うふふ(*´艸`)楽しそうです♪ありがとうございます(*´︶`*)

最後まで読んで下さいまして、ありがとうございましたo(*´︶`*)o

解除
砂月ちゃん
2021.07.13 砂月ちゃん

すみません。
私の読み間違いでしたね。
これからも頑張ってください。

2021.07.13 まりぃべる

砂月ちゃん様、ありがとうございます。いえいえ、こちらこそ分かりにくくてすみませんでした。これからの作品で善処しますね。
応援も、ありがとうございます。頑張ります。

解除
砂月ちゃん
2021.07.13 砂月ちゃん
ネタバレ含む
2021.07.13 まりぃべる

砂月ちゃん様、ご指摘ありがとうございます。自分でも何度も推敲しているので、書いていていつの間にか時々あやふやになるので慌てて読み返してみました。
お父様の年齢は、書いてないと思います。
お兄様の年齢が、28歳です。上手く文章で伝わらなかったみたいで申し訳ありません。まだまだ勉強の身なので、これに懲りずにまた読んでいただけると有難いです。

登場人物が書かれていますので、ネタバレありにしました。よろしくお願いします。

解除

あなたにおすすめの小説

家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました

ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。 一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。 「大変です……!」 ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。 手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。 ◎さくっと終わる短編です(10話程度) ◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!

公爵さま、私が本物です!

水川サキ
恋愛
将来結婚しよう、と約束したナスカ伯爵家の令嬢フローラとアストリウス公爵家の若き当主セオドア。 しかし、父である伯爵は後妻の娘であるマギーを公爵家に嫁がせたいあまり、フローラと入れ替えさせる。 フローラはマギーとなり、呪術師によって自分の本当の名を口にできなくなる。 マギーとなったフローラは使用人の姿で屋根裏部屋に閉じ込められ、フローラになったマギーは美しいドレス姿で公爵家に嫁ぐ。 フローラは胸中で必死に訴える。 「お願い、気づいて! 公爵さま、私が本物のフローラです!」 ※設定ゆるゆるご都合主義

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】魔力の見えない公爵令嬢は、王国最強の魔術師でした

er
恋愛
「魔力がない」と婚約破棄された公爵令嬢リーナ。だが真実は逆だった――純粋魔力を持つ規格外の天才魔術師! 王立試験で元婚約者を圧倒し首席合格、宮廷魔術師団長すら降参させる。王宮を救う活躍で副団長に昇進、イケメン公爵様からの求愛も!? 一方、元婚約者は没落し後悔の日々……。見る目のなかった男たちへの完全勝利と、新たな恋の物語。

偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】 https://ncode.syosetu.com/n9071il/ 異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。 貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。 イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。 このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん? 別にいっか! 聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね! 重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!

婚約破棄を言い渡された私は、元婚約者の弟に溺愛されています

天宮有
恋愛
「魔法が使えない無能より貴様の妹ミレナと婚約する」と伯爵令息ラドンに言われ、私ルーナは婚約破棄を言い渡されてしまう。 家族には勘当を言い渡されて国外追放となった私の元に、家を捨てたラドンの弟ニコラスが現れる。 ニコラスは魔法の力が低く、蔑まれている者同士仲がよかった。 一緒に隣国で生活することを決めて、ニコラスは今まで力を隠していたこと、そして私の本来の力について話してくれる。 私の本来の力は凄いけど、それを知ればラドンが酷使するから今まで黙っていてくれた。 ニコラスは私を守る為の準備をしていたようで、婚約破棄は予想外だったから家を捨てたと教えてくれる。 その後――私は本来の力を扱えるようになり、隣国でニコラスと幸せな日々を送る。 無意識に使っていた私の力によって繁栄していたラドン達は、真実を知り破滅することとなっていた。

婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。 本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。 そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく―― 身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。 癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。