【完結】いつも微笑んでいる侯爵様とニコリともしない伯爵令嬢のお話

まりぃべる

文字の大きさ
21 / 31

21. 別室にて

しおりを挟む
 別室に連れて来られたモデスタは、未だなぜこうなったのか分からないままだった。
 知らない年上の男女に連れて来られた部屋は、今日初めて参加したモデスタにとって驚くべき豪華な部屋だった。


(こんな素晴らしい部屋に通されるなんて!私が今住んでいる侯爵家もそれなりにすごく立派だと思ったけど、ここはさすが王宮なのね!この人達は誰なのか知らないけど、まぁ連れ込んで変な事される訳ではなさそうだからよかったわ!)


「はぁ…あとで義父上が来るだろうね。それまで、ゆっくりする?」

「するわけないでしょ!もう…!
……私達が助けなかったらあなた、牢獄行きだったのよ。ちゃんと感謝しなさいよね!」


 サムエレとブルニルタは奥にあるソファにゆったりと座り、そのように言うと、モデスタの方を見る。

 モデスタも、対面に座っている。


「それって、どういう事よ?さっきから意味が分からないわ!」

「…それ、本気で言っているのよね?」

「ふん!というか、あんた誰!?まず、名を名乗りなよ!」

「…あのさ、君先ほどから口が悪過ぎるよ。ここは、貴族達の社交の場だよ。君は数ヶ月前までは庶民として生活していたのかもしれない。だけれど、侯爵家に養女に入ったのだったら、振る舞いとか作法とか学ぶよね?それから、貴族の事学んで来なかったの?ジョイア侯爵家は何考えているんだか…。」

「お、お父ちゃ…お父様を悪く言うな!」


 サムエレは呆れながらもモデスタへと注意した。
けれども、モデスタはまるで聞き入れようとしない為にどう言えば伝わるのかと、ブルニルタと顔を見合わせ、ボソボソと話す。


「ねぇ、どうしてこんなに言葉が伝わらないの?住む世界が違うから?」

「そうなのかもしれないね。だけど、これは由々しき事態だよ。義父上は怒らすと怖いんだから。それに、ヴァルフレード殿もすごかったよね。さすが騎士団長の息子だね。こっちまで凍らされるかと思ったよ。」

「ちょっと!何話してるのよ!私は侯爵家の娘よ!?あんた達なんて、お父様に言って処罰してもらうからね!!名前、教えなさいよ!」

「大きな声でみっともない…全く。教育が行き届いとらんのに舞踏会へ出席したのか。無様なものよ。」

「お父様!」
「義父上!」


 バジーリオがため息を吐きながら部屋へと入ってくる。続いて、急いで入って来たのは、モデスタの父だ。


「モデスタ!あぁ…お前はなんて事を…!
バジーリオ伯爵!この度は本当に申し訳ありません!」

「ティベリオ侯爵よ、まぁまずは座ろうか。」




 モデスタの父、ティベリオ=ジョイア侯爵がモデスタの隣に座る。だが、酷く汗をかいており、ガタガタと身を震わせている。


「お父ちゃ…お父様、すごい汗よ。それに震えてるの?大丈夫?」

「モデスタ、いいからお前は口を閉じていなさい。いいね?」


 バジーリオは、間にある一人用のソファにゆったりと深く腰を掛けてから、モデスタとティベリオをじっくりと見てから話し出した。


「ティベリオ侯爵。それぞれの家庭の事情があるだろうから、家庭の話には口を出すつもりはないが、ソレモデスタは私の大切な娘に暴言を吐いたらしいな?」

「はっ!も、申し訳ありません!私が知らない所で…」

「知らない所、でとかの問題ではないと思うが?そもそも、口の利き方もなっとらん者をどうして舞踏会に出席させた?」

「はっ!不徳の致す所で…」

「説明になっとらん!」

「お父様、声が大きいですわよ。」

「あぁ、ブルニルタにサムエレ。お前達良くやった。良い仕事をしたな。」

「ありがとうございます。」
「当然ですわ。」


(ちょっと…誰?なんであんな偉そうなのよ!?お父ちゃんは侯爵様なのよ!それよりも偉い人って事!?なんで名前を言わないのよ?貴族ってば、最初に会ったら名乗り合うんじゃないの?
それに、私はお父ちゃんの有利になる結婚をする為にこの舞踏会に参加したのに、なんでこんな説教みたいな事になってんの!?
まぁ、ヴァルフレード様は止めておけと言われたけれど、結婚するならヴァルフレード様よね~!何年か前に王都の下町でお母ちゃんと暮らしてた時に、助けてもらった時は格好良かったわぁ…!軍人様の服っだったけど、私の王子様って感じ!!)


「…か?おい、聞いとるんか!?」

「モデスタ!」

「え?」


(もう!なによ!私には口をきくなって言ったじゃないの!だから妄想してたのよ!だってさっき念願のヴァルフレード様と話が出来たんだからね!!)


「はー……大方、娘がいるのを知って、そいつを貴族として育て、他の家と結婚させようとしたのだろうが、まだ教育がしっかり出来とらん内に出席させたのは不味かったな、ティベリオ侯爵。しかも、うちソルディーニ家に喧嘩をふっかけたんだからな。」

「いえ!決してそんな訳では…!!」

「ではどう責任を取る?」

「待って!どうしてそうなるの!?」


(さっきから黙って聞いていたけれど、お父ちゃんが怒られてるの!?聞き捨てならないわ!)


「黙れ!!!」

「!」

「誰が口を開けと許可した?お前は中途半端過ぎだ。養女となったと豪語するのであればそのように振る舞えなければならん。それも出来とらんのに、我が娘を侮辱するな!戯け者が!」

「も、申し訳ありません、バジーリオ伯爵。確かに、モデスタの母が数ヶ月前に亡くなったのです。その時に、この子が手紙と共に訪ねてきまして…私も浅はかでした故、おっしゃる通り、モデスタに教育を施して侯爵家の娘として、どこかの貴族と結婚させようと思っておりました。申し訳ありません…。」

「そういう貴族なんぞたくさんある。それをとやかく言うつもりは毛頭ない。だが、教育はしっかりしてもらわんと迷惑だ!
で?どうするのだ?」

「はっ!私は侯爵の地位を退き、息子のイラーリオに家督を譲ります。」

「それだけか?」

「いえ…」

「ふん。自分からは言いづらいだろうが、仕方ないぞ。しっかりケジメは付けねばな。」

「はい…私とモデスタは領地に退きます。今後、社交界には参加致しません。それでどうか…」

「温い!!」

「お父様。」


 それまで黙って聞いていたブルニルタが、扇子で口元を隠して話に割り込んできた。


「…どうした?」

「モデスタをうちで働かせましょう。」

「理由を聞こう。」

「理由?そんなもの…私の可愛い妹を侮辱した罰に決まってますでしょう!
それに、うちは正統なるソルディーニ家ですわよ。伯爵家と馬鹿にした家に仕えるなんて屈辱以外の何物でもないのではなくて?」

「なるほどな。」

「しかも、私の可愛い義弟ヴァルフレードが好きなのですって。好きな男が違う女性を存分に愛している所を見せつけられる気分を味わえばいいのよ!
でも、安心しなさい。決して二人の前には出してやらないから。
フフフフ。義弟は私の可愛い妹を溺愛しているのだもの。きっと子供もすぐに生まれるでしょうね。うちが預かったりもするかもしれないわ。けれど、粗相をしたら許さないわよ?覚悟しなさい。」


(さすが私の娘だな!!)


 と、バジーリオは顔をにやけながら頷き返事をした。


「なるほどな。ブルニルタ、いいのか?やってくれるか。」

「当たり前だわ。教育、じっくりとしてやるわよ。ねぇ、サムエレ?いいかしら?」


 ブルニルタは怒っているのだ。怒っているが、顔はにっこりと笑っている。それがまた、余計にモデスタとティベリオは恐ろしく感じ、言葉を発する事も出来ずにいた。


「あ、あぁ…。ブルニルタがそうしたいなら、そうしようか。」


(や、やるな、愛するブルニルタ。しかし怒らせたら義父上よりも恐ろしい。)


 サムエレもまた、ブルニルタを溺愛しているがその敵意が自分に向けられなくて良かったと心からホッとしていた。


しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。

勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~

藤 ゆみ子
恋愛
 グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。  それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。  二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。  けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。  親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。  だが、それはティアの大きな勘違いだった。  シオンは、ティアを溺愛していた。  溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。  そしてシオンもまた、勘違いをしていた。  ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。  絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。  紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。    そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。

婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ

鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。 平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」 婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。 彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。 二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。 ……はずなのに。 邸内で起きる不可解な襲撃。 操られた侍女が放つ言葉。 浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。 「白の娘よ。いずれ迎えに行く」 影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。 守るために剣を握る公爵。 守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。 契約から始まったはずの二人の関係は、 いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。 「君を奪わせはしない」 「わたくしも……あなたを守りたいのです」 これは―― 白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、 覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。 ---

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました

海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」 「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。 姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。 しかし、実際は違う。 私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。 つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。 その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。 今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。 「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」 「ティアナ、いつまでも愛しているよ」 「君は私の秘密など知らなくていい」 何故、急に私を愛するのですか? 【登場人物】 ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。 ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。 リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。 ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?

処理中です...