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27. 住んでいる人
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放課後。
三人はそれぞれ以前ベントナー家が所有していた屋敷に到着した。
クラーラはその後シャーロテの家にも行く為に、一度タウンハウスへと馬車を返させ、シャーロテの馬車へと一緒に乗り込んだ。
ちなみに、ラグンフリズはすでに先に向かっている。
「本当はラグンフリズ様の馬車に乗りたかったでしょうけれど、誰に見られるか分からないものね。私ので我慢なさい。」
シャーロテはクラーラにそう言った。
「まぁ!やっぱり本当に素敵…!あぁ、良いわねぇ…!」
そう言ったシャーロテは、馬車を降り、現在正門から入り石段の道を挟んだ前庭を見て呟いていた。
色とりどりの花や、木が綺麗に並べられている。きっと素晴らしい庭師が、丁寧に育てているのだと滲み出ているほどだった。
「やぁ、いらっしゃい!っと、嬉しいね。君だね?この屋敷に興味を持ってくれたのは。」
庭に見とれていたクラーラとシャーロテは、屋敷から向かってきた男性に気づかなかった。真っ直ぐな銀髪を短く切り揃えた緑の瞳をしていた。この国では滅多に見ない色彩だ。
「こんにちは。この屋敷へようこそ。さ、もう少し奥の四阿へ行こう。そこの方が、良く見えるよ。」
そう言って、シャーロテをエスコートする男性。
後ろには先に来ていたラグンフリズもいて、クラーラの手を取り、エスコートをしながら四阿へ向かった。
「クラーラ嬢、心配しなくてもあいつは変な奴ではないよ。俺の、友人でもある。」
前を歩く二人には聞こえないようにこっそりとクラーラへと話すラグンフリズ。頭二つ分とまではいかないが、それほど身長差があるので、少し身を屈めてクラーラの耳元へ伝えたラグンフリズだったが、互いに顔が真っ赤に染まっていた。
(そうなのね。きっと落ち着いたら後で紹介もあるかしら。)
言葉を繋ごうにも思ったよりも緊張して声に出ないクラーラは、そう思った。
「さぁ、こちらへ座って。」
案内された四阿は、少し高い位置にある為に、庭が一望出来た。正門からの庭と、屋敷側にも綺麗に色とりどりの様々な種類の花が咲いていた。
「素晴らしいわ…!こんなに目でも楽しませてくれるなんて。」
「そう言ってくれて本当に嬉しいね。手直しした甲斐があったよ。この屋敷はこの国の国王陛下から借りているんだけど、庭は好きにしていいって言われていてね。さ、僕に自己紹介させてくれるかい?僕は、ライラス=チャーバリス。チャーバリス国から留学を目的に来たんだ。」
「チャーバリス国…王子様!?」
「え!?王子様…!」
チャーバリス国は、このニュークビンアース国からは海の遥か向こう側という認識で遠く離れている為、そしてしかも王子だったとシャーロテとクラーラは余計に驚いた。
「留学は、半年。どの国へ留学しようか迷っていたのだけどね、やっぱり知っている奴がいる所がいいと思って。ラグンフリズの愛しい人にもお目にかかりたかったからね!」
ライラス王子は最後はクラーラを見て言った為に、クラーラは再度顔を赤らめ俯いてしまった。
「ラグンフリズ様とお知り合いでしたの?」
「あぁ。ラグンフリズの住む港からは少し距離があるがね。僕の国の一番近い港までは二週間はかかるね。そこからは陸路で僕の住む王都までは更に二週間って所かな?ラグンフリズが幼い頃はよく来てくれていたよね。」
「そうだな。いろいろな国にいったが、ライラスともよくハンドボールで遊んでね。」
「僕は二人の姉がいてね。その二人から逃げるようによく、王宮を抜け出していたんだ。あの時は港が見たくなって、そこまで時間を掛けて行ったら、フォントリアー家の船があってね。周りの船より迫力があって驚いたなぁ!」
そう笑いながら言うライラスは、なぜだかシャーロテを優しい表情で見つめている。シャーロテも、ライラスを見つめながら珍しく聞き手に徹していた。
クラーラはそれを見て、『もしかして二人は、惹かれ合っているのかしら?』と思った。
「ライラス、君はいつから学院に通う?本当は、長期休暇が明けてからだと言う話ではなかったかい?」
「いやぁ、それが思ったよりも借りたこの屋敷の庭を手入れするのが面白くてね。この花も、庭師と一緒に造り上げたんだよ?だから、君がとても喜んでくれて凄く嬉しかったんだ。さあ、君の口から名前を教えてくれない?」
「あ!し、失礼しました…!私はシャーロテ=オルリックと申します。学院に通われるのですね?宜しくお願いしますわ。」
シャーロテが惚けていて、挨拶を忘れるなんて珍しいとクラーラは思っていた。
「シャーロテ嬢…シャーロテと呼んでもいいかい?」
「ええ。もちろんですわ!」
「じゃあ僕の事は、ライラスと呼んでね。」
「はい。ライラス様。」
「いや、ライラスと。」
「ええ…でも…」
「じゃあ慣れたら呼んでくれる?」
「…はい!」
クラーラは、いつもとは違い恥ずかしがるシャーロテを見て微笑ましく思ったが、見ているこっちまで照れてきて、顔を逸らした。すると、ラグンフリズがクラーラにこっそりと話し掛けた。
「俺ら、お邪魔みたいだから、移動しないか?あいつはあれでいてしっかりしているから、変な事はしないから。」
「おい!ラグンフリズ、聞こえているぞ!そうだな…せっかくだから僕はシャーロテと話をするよ。どうせ、ラグンフリズの想い人と仲を深める事は、ないと思ったからね。だってそんな事したらラグンフリズに斬られてしまうからね。一応これでも王子だから、命を無駄には出来ないさ。だから、そちらのシャーロテのご友人、ごゆっくり。奥にも庭が繋がっているから見てくるといい。あ、なんなら、シャーロテは僕が送って行くから心配しないで。」
「え?まぁ!あ…クラーラ、ごめんなさいね。」
ライラスは、シャーロテに優しい笑みを向けている。シャーロテも、もう夢中ですと顔に書いてあるようだった。
それを見たクラーラは、今日はシャーロテのタウンハウスには行けないわねと苦笑いをし、でもシャーロテも幸せそうでよかったと感じて、ラグンフリズと席を立った。
三人はそれぞれ以前ベントナー家が所有していた屋敷に到着した。
クラーラはその後シャーロテの家にも行く為に、一度タウンハウスへと馬車を返させ、シャーロテの馬車へと一緒に乗り込んだ。
ちなみに、ラグンフリズはすでに先に向かっている。
「本当はラグンフリズ様の馬車に乗りたかったでしょうけれど、誰に見られるか分からないものね。私ので我慢なさい。」
シャーロテはクラーラにそう言った。
「まぁ!やっぱり本当に素敵…!あぁ、良いわねぇ…!」
そう言ったシャーロテは、馬車を降り、現在正門から入り石段の道を挟んだ前庭を見て呟いていた。
色とりどりの花や、木が綺麗に並べられている。きっと素晴らしい庭師が、丁寧に育てているのだと滲み出ているほどだった。
「やぁ、いらっしゃい!っと、嬉しいね。君だね?この屋敷に興味を持ってくれたのは。」
庭に見とれていたクラーラとシャーロテは、屋敷から向かってきた男性に気づかなかった。真っ直ぐな銀髪を短く切り揃えた緑の瞳をしていた。この国では滅多に見ない色彩だ。
「こんにちは。この屋敷へようこそ。さ、もう少し奥の四阿へ行こう。そこの方が、良く見えるよ。」
そう言って、シャーロテをエスコートする男性。
後ろには先に来ていたラグンフリズもいて、クラーラの手を取り、エスコートをしながら四阿へ向かった。
「クラーラ嬢、心配しなくてもあいつは変な奴ではないよ。俺の、友人でもある。」
前を歩く二人には聞こえないようにこっそりとクラーラへと話すラグンフリズ。頭二つ分とまではいかないが、それほど身長差があるので、少し身を屈めてクラーラの耳元へ伝えたラグンフリズだったが、互いに顔が真っ赤に染まっていた。
(そうなのね。きっと落ち着いたら後で紹介もあるかしら。)
言葉を繋ごうにも思ったよりも緊張して声に出ないクラーラは、そう思った。
「さぁ、こちらへ座って。」
案内された四阿は、少し高い位置にある為に、庭が一望出来た。正門からの庭と、屋敷側にも綺麗に色とりどりの様々な種類の花が咲いていた。
「素晴らしいわ…!こんなに目でも楽しませてくれるなんて。」
「そう言ってくれて本当に嬉しいね。手直しした甲斐があったよ。この屋敷はこの国の国王陛下から借りているんだけど、庭は好きにしていいって言われていてね。さ、僕に自己紹介させてくれるかい?僕は、ライラス=チャーバリス。チャーバリス国から留学を目的に来たんだ。」
「チャーバリス国…王子様!?」
「え!?王子様…!」
チャーバリス国は、このニュークビンアース国からは海の遥か向こう側という認識で遠く離れている為、そしてしかも王子だったとシャーロテとクラーラは余計に驚いた。
「留学は、半年。どの国へ留学しようか迷っていたのだけどね、やっぱり知っている奴がいる所がいいと思って。ラグンフリズの愛しい人にもお目にかかりたかったからね!」
ライラス王子は最後はクラーラを見て言った為に、クラーラは再度顔を赤らめ俯いてしまった。
「ラグンフリズ様とお知り合いでしたの?」
「あぁ。ラグンフリズの住む港からは少し距離があるがね。僕の国の一番近い港までは二週間はかかるね。そこからは陸路で僕の住む王都までは更に二週間って所かな?ラグンフリズが幼い頃はよく来てくれていたよね。」
「そうだな。いろいろな国にいったが、ライラスともよくハンドボールで遊んでね。」
「僕は二人の姉がいてね。その二人から逃げるようによく、王宮を抜け出していたんだ。あの時は港が見たくなって、そこまで時間を掛けて行ったら、フォントリアー家の船があってね。周りの船より迫力があって驚いたなぁ!」
そう笑いながら言うライラスは、なぜだかシャーロテを優しい表情で見つめている。シャーロテも、ライラスを見つめながら珍しく聞き手に徹していた。
クラーラはそれを見て、『もしかして二人は、惹かれ合っているのかしら?』と思った。
「ライラス、君はいつから学院に通う?本当は、長期休暇が明けてからだと言う話ではなかったかい?」
「いやぁ、それが思ったよりも借りたこの屋敷の庭を手入れするのが面白くてね。この花も、庭師と一緒に造り上げたんだよ?だから、君がとても喜んでくれて凄く嬉しかったんだ。さあ、君の口から名前を教えてくれない?」
「あ!し、失礼しました…!私はシャーロテ=オルリックと申します。学院に通われるのですね?宜しくお願いしますわ。」
シャーロテが惚けていて、挨拶を忘れるなんて珍しいとクラーラは思っていた。
「シャーロテ嬢…シャーロテと呼んでもいいかい?」
「ええ。もちろんですわ!」
「じゃあ僕の事は、ライラスと呼んでね。」
「はい。ライラス様。」
「いや、ライラスと。」
「ええ…でも…」
「じゃあ慣れたら呼んでくれる?」
「…はい!」
クラーラは、いつもとは違い恥ずかしがるシャーロテを見て微笑ましく思ったが、見ているこっちまで照れてきて、顔を逸らした。すると、ラグンフリズがクラーラにこっそりと話し掛けた。
「俺ら、お邪魔みたいだから、移動しないか?あいつはあれでいてしっかりしているから、変な事はしないから。」
「おい!ラグンフリズ、聞こえているぞ!そうだな…せっかくだから僕はシャーロテと話をするよ。どうせ、ラグンフリズの想い人と仲を深める事は、ないと思ったからね。だってそんな事したらラグンフリズに斬られてしまうからね。一応これでも王子だから、命を無駄には出来ないさ。だから、そちらのシャーロテのご友人、ごゆっくり。奥にも庭が繋がっているから見てくるといい。あ、なんなら、シャーロテは僕が送って行くから心配しないで。」
「え?まぁ!あ…クラーラ、ごめんなさいね。」
ライラスは、シャーロテに優しい笑みを向けている。シャーロテも、もう夢中ですと顔に書いてあるようだった。
それを見たクラーラは、今日はシャーロテのタウンハウスには行けないわねと苦笑いをし、でもシャーロテも幸せそうでよかったと感じて、ラグンフリズと席を立った。
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