もう一度だけ

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償い

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あれから何日がたっただろう。
俺は自分のしてしまったことに対して、憎んでも憎みきれずにいた。

 「はぁ……」

あれだけ泣いたはずなのに、涙がまだ止まらない。
もうこの世に先輩はいないんだ。自分がしてしまったことなのに、まだ実感がわかない。いや、そんなのは一生いらない。どうしたら先輩に許してもらえるのだろうか。俺も先輩を追いかけようか。そして向こうで会って、謝って、そしたら先輩は許してくれるだろうか。そんなわけない。きっと怒るはずだ。しかし、それでもいい。それでもいいから先輩にまずは会いたかった。

そんなことを考えながら、俺は自分の部屋で毎日引きこもっていた。しかし、ある日のことだった。

 「つばさ? 今日は増田君のお葬式の日だけど…。行く?」

行こう。いや、行かなきゃ駄目だ。いつまでも見ずにはいられない。先輩に謝りにいかなきゃ。



(先輩…元気でいますか。俺がこんなこと、言っていけないことは分かってます。それでもどうしても先輩に謝りたくて…。本当にごめんなさい。ごめんなさい。いつもみたいに、怒ってください…)

静かな部屋のなかで、俺は心のなかで叫び続ける。しかし、問いかけても問いかけても絶対に返事はない。

 「あぁっ………先輩ぃっ…」

涙がまた止まらない。
先輩…やっぱりいないんですね。声ももう聞けないんですね…。

写真の中の先輩は動くことなく、笑っていた。


帰り道、ひょんな事から先輩の家に行った。前にも一度来たことあるが、その時は練習がない日で、1日泊まらせていただいた。先輩と夜通し話すことができて、幸せな日だった。まさか、次来るときには先輩がいないなんて…思ってもいなかった。

お母さんは先輩のお母さんとリビングで話していた。普通なら怒りきらして家にいれるところではないはずたが、先輩は家でも俺のことを自慢の後輩だとか、かわいい奴だとか話していたらしく、先輩のお母さんも俺のことを攻めないでいた。翼君のせいじゃないよ、と、慰めていただいた。でも、それがかえって心に響く。いっそのこと、殴られ続けたい。償いたい。でもそんなことができるほど、甘くない。俺は先輩のお母さんに心のなかで謝り続けた。

2階に上がる。懐かしい匂いが鼻をつつく。
先輩が目の前にいる。こっち来いよと言ってくれている。__そんなことを勝手に思い浮かべる。
先輩の部屋は前来たときと全然変わらなかった。バレーのポスター、バレーの漫画、バレーボール……。あぁそうだ。あの人は、バレーがこんなに好きだったんだな。推薦で大学に行き、バレーを続けて、もっと上まで先輩なら行くことができたはずだ。でも、その可能性を俺が奪った。自分の考えること、ひとつひとつに謝りたいことが生まれ、心を渦巻く。

__先輩ごめんなさい。

視界がにじんでくる。俺はどうしたらいいのだろうか。
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