Venus And The SAKURA

王都動乱編

0068 王子バレット

　今日は王子バレットの成人の儀の日である。

　アニメの知識があるので予想はしてたけど、ヤヌス王国も例外なく１５歳になると大人の仲間入り、その為の儀式が執り行われる。

　儀式と言っても、司祭に「あなたは女神クリス・サリーナの名の下に成人となり、これからは王国の為に存分に力を発揮するように。」と誓いを立てるだけの簡素な物。俺もその儀式に参加することになった。

　成人したのであれば、新たに領土を所有することが認められ、王子も例外なく領土と新たな領民を持つことになる。とは言えどもいきなりは無理なので、１年間王都に留まり政治について学んで行く事になるので、王子にとっては忙しい毎日・・・となるはずなののだが、この王子は小さな頃から政治に関心があり、自ら政治の場に出席していた為、その点は問題がなく時期王として期待されていた。

　いつものように、元老院での議会、日本で言う国会会議に参加している王子は疑問に思っていたことが2つあった。

　ひとつは、王都の経済状況。本当に民は潤った生活が出来ているのかという事。その理由はオウカがこの国に召喚された時に感じた事と同じであり、たまに視察をしている時に、民の姿がみすぼらしい事が気になっていた。

　２つ目はお父様、現国王の不審な考えと動向である。元々国王の名前はシエロ・ムール・コローレと名乗っていたのだが、ある日を境にシエロ・ガバル・ムール・コローレと名乗るようになってから、王都の情勢が悪化しているように感じていたからだ。

　とは言え、情勢が悪化するのは政治のやり方が悪いから。名前の件は後回しにしよう。まずは目先の問題、国民一人ひとりが豊かな生活を送れるように尽力をせねば・・・。

　そう決めたからには、行動を起こさなければ。王子は頭が切れるだけではなく、行動力もある。早速、王都・領地・村、全てを視察すると決めた。

　まずは、国民と同じような服装を手に入れ、城下町を散策。そしてオウカと同じ問題を抱える事になる。露店の料理の価格が異常に安いこと。王子は金貨しか持っていなかった為にオウカと同じように両替をすることになり、初めて金貨以外の貨幣を手にすることになる。

　王国民がみすぼらしいのは、この異常といえる物価の低さにあると確信した王子は、税収を調べなおす。物価の安さに対して税収が不自然に多い事に気づいた・・・。



ー＊＊＊－



「よし、今日の訓練はここまで！」ベルサイユ宮殿の庭に聞こえるオウカの声である。
　傭兵の訓練をオウカ直々に指導する日は剣の修行、いわゆる「剣道」である。

　この訓練は、いずれ傭兵には日本刀を持たせるために正確な刀を使った戦いの方法を伝えるためと、精神的にも鍛える為である。

　最初は、軽い木刀に傭兵団もなめてかかっていたが、意外と普段の訓練よりもキツイ事が解り、今では恐怖の時間とささやかれている。

　実は、傭兵団の訓練は三回に分けて行われている。と言うのも、魔王国から帰って来てから、王国のスラム街にいる獣人族を全て、オウカが面倒を見ているから団員も３００名位までふくれあがっていたので、これでは全員に目が届かないという理由からだ。

　１グループが実地訓練を行っている間は、他の２グループは体力アップの走り込みと筋力アップのトレーニングをひたすら行う。この世界の人間はトレーニングと言えば剣を振るう事と模擬戦のみで基礎訓練と言う概念がなく、それならばとオウカが日本にいる時にたまたまテレビで見た自衛隊の訓練をそのまま取り入れている。なので基礎訓練だけでも団員は音を上げると言った感じである。

「次は三日後だからな。強くなりたければ自主的に訓練をするように。」と鬼の声を残して、オウカはその場を後にした。