Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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貴族領地編

0086 ヒガシムラヤマ

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 元ベルハイツ公爵領に俺達は着いた。

「これが、転移魔法・・・。」バレットが震えている。
「エルフの人から聞いたんだけど、魔法は勉学だから、属性があれば扱えるようになるそうだよ。」
「それでは、私にも使える可能性があるという事?」
「そうだね。何だったら調べてみる?」俺はローズに鑑定するように言った。

「ん~、バレット国王は・・・。よくわからないけど、「女神の言葉」があるわ。」
「女神の言葉とは?」
「これは、魔法と云うよりも「スキル」で、指揮や統率が取れる言葉を発する事が出来るスキル。王様にぴったりですわ!」
「おお、そうか!今の私には必要なスキルだな!ありがとう。」
「で、ですね。せっかく来てもらったんだから、タダでは帰しませんよ。」
「私に、何をさせようと言うんだ?」
「スピーチ!今日から、俺がここの領主になるって演説してくれ!」
「ああ、そういうことなら引き受けるさ!」


「なあローズ。」
「なんですかぁ~ごしゅじんさま~」
「本当にバレットの属性はなかったのか?」
「いえ~いっぱいあったわぉ。」
「何で言わなかった?」
「今の王様には必要ないと思って、わざと言わなかったのぉ。」
「そういうことか。」



 この領地に残る、元ベルハイツ公爵の側近を集め、領地の全ての住民に集まるように指示をした。

 数時間後・・・。

 一番大きな広場に集まった、公爵領の住民は1000人程。まあ、こんなものか・・・。他の領地に行ったことがないから解らないけど。

 いつもここで演説をしているんだろう、数段高い台。学校の校庭で校長先生が長い話をする演説台に似た物が置いてある。

 バレット国王は演台に昇り、演説を始めた。

「この領地に住まう民達よ!私の名はバレット・クロゲワギュウ・コローレと言う!この王国の新しい国王だ!」

 リアクションがない・・皆、前国王からバレットに変わったことは知っているようだ。

「前国王は数年前から、増税へと舵を切った!その為に皆に苦しい生活をさせてしまったことを、まずは詫びる!」国王自らが頭を下げる事にどよめきの声が聞こえる。

「そして、その増税に乗じて全領主は更に皆に重い税をかし、民には苦しい生活を、自分は私腹を肥やすだけであった!」
「そして、この領地を健全な物にすべく、新しい領主を据えることにした!紹介しよう、勇者オウカ殿だ!」

 勇者オウカ・・・東の果てのこの地の人でも知っている名前が上がった。
「オウカ殿は必ず皆を幸福へと導く!その理由は、オウカ殿は女神クリス・サリーナ様の使者であるからである!」

 女神クリス・サリーナの名前まで出て来たので、バレットの声を聞く民衆の顔も高揚している。
「では、皆に紹介しよう!新しい領主、勇者オウカ殿!」皆が大拍手で迎えてくれる。

「あ~どうも、桜花と言います。よろしくです。」
「それだけなのか?」
「お前が急に呼び出すから、俺は演説の内容までは考えてなかったんだよ!」

「どうやら、オウカ殿は緊張しているらしい。」ドッと笑い声が聞こえる。
「では、どうだろう、オウカ殿!」
「何だよ?」
「初仕事として、この領地に名前を付けると言うのはどうだろう?」

・・・名前ねぇ~、俺は東京に住んでいて「東」って言われたら、思いつくのは・・・
「東村山かなぁ~。」と何気なしにつぶやいた。

「よいか、皆の者!今日よりこの地は「ヒガシムラヤマ」とする!」
「え⁉ちょっと、待って!」
『ワ――――!!』大歓声が起こった!


「ヒガシムラヤマ領」の誕生である。


「お前!何を勝手に決めてんだよ!」俺はバレットに詰め寄る。
「何をって、オウカさんが言ったんじゃないですか。「ヒガシムラヤマ」って。」
「俺は頭に浮かんだ事をつぶやいただけなんだよ!」

「「ヒガシムラヤマ」!良い響きではないですか!」
俺の頭の中では、♪イッチョメ、イッチョメ、ワーオ、ワーオ!と国民的コメディアンが歌ってる光景が頭によぎっていた。
「では、改めて、この地を頼みましたよ、オウカ殿!」
「ああ、やるだけやってみるさ!支援が必要な時は言うからな!」
「そこはまかせてくれ!」
 バレットを転移魔法で王都に帰してやった。

 さて、この領土の人にも顔を知ってもらったから、まずやることは「会議」だな!

 その前に、前・領主に仕えていた人達に挨拶をする。

 執事にひとり、この人もセバスと同じくロマンスグレーだな。
 給仕に10人。多すぎないか?
 近衛兵に10人。少なすぎやしないか?それだけ平和なんだろうか?

 前・領主の家族は・・・と、どうもベルハイツ公爵が断罪を受けたとの知らせと共にこの地を去ったらしい。

 なるほど・・・。

 俺はまず、執事に名前を付ける事から始めた。
 執事の名は・・・頭を見て「グレイ」にした。
 近衛兵は・・・ジギルに名前をつけさせよう。
 給仕達の名前は・・・茜に頼むか。これから教育してもらうんだし。

 新たなる執事「グレイ」にこの領地の全責任者、村長の招集を行うように指示を出した。

 前・領主の屋敷に行くとする。この広場から、さほど離れていないようだ。
 歩きながら、街の様子を見てみる。王都から比べると見劣りはするが、それなりにしっかりとした家が多い。

 露店があるので、買ってみる。スープのようだが、具が小さいし肉が入っていない。
「なぜ、肉が入っていないのですか?」
 すると、その露店の者は「この地では、肉や野菜全部がとても高いので買えないのです。」
「では、この野菜は?」
「それは、森で採集した野草です。」
「お金はいくら貰っているのです?」
「小銅貨1枚です。」

・・・王都に住んでいる者からすれば「高!」と声を上げてしまうんだろうな。
「ちなみにこの地の税金はいくら支払っているのです?」
「一人で年間、金貨2枚です。」高!
「昔はいくらでしたか?」
「昔は家族で金貨1枚でした。」

 なるほどなるほど、前国王が税率を上げたから、領地も税率を上げた。で、そこに領主の私腹を肥やすために更に上乗せ・・・それで、よくこの街が保ててこれたな。想像よりも苦労しているのだろう。

「出来るだけ早く、皆が笑顔になるようにするからね。」そう言い残し、屋敷への道を急ぐのだった。
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