Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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リンド法国編

0114 白い女神、黒い神

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 トゥルルルル・・・朝の日差しに照らされた宿屋にいる桜花のスマホのベルが鳴る。


「オウカ様、セバスでございます。」

「何か解った?」

「ええ、まず、食材の件ですが、この国では栽培などは一切されておりません。」

「え?商人ギルドでは、この国で収穫されたものは、輸出していると聞いたけど。」

「それは事実ではありません。実際は全て輸入しています。」

「じゃあ、輸出と言うのは?」

「輸入品の入れ物を変えて自国製として、輸出しているようです。」

「それで、どれ位の上乗せなんだ?」

「1.5~2倍の価格です。」

「そうか・・・。他には?」

「この国には貴族という者が存在しません。全て法王を中心とした神官の手で運営されているようです。」

「解った。引き続き、調査を頼む。」



 俺はジギル、ローズ、ナツを連れて観光者の振りをして街中を散策する。
 中央にある大きな建物が本殿。その周りを囲う様に立派な建物がある。
 貴族はいないとセバスは言ってたけど、この建物って王国の貴族より立派じゃないか?

 街の人に本殿の周りの建物について聞いてみると、一番大きな建物がリベル・ガバル・ターナ法王の住む家で、他の建物が5つは、それに続いて位が高い司祭や副司祭、他は普通の神官宅、位の低い神官は同じ屋敷にまとまって暮らしているという事だった。

「ここでも「ガバル」か・・・。」

 名前が違うだけで、国王と貴族と同じじゃないか?とも思ったりもする。

 さすがにこの周りは綺麗な町並みで、神殿に礼拝に来る信者が多い。
 でも、サリーナは男になっているんだよなぁ~。

「試しに、神殿に行ってみるか?」
 どんな感じになっているか興味もある。

 神殿入り口に差し掛かった時にナツが反応した。
「オウカ様、これより先には行かない方が良いです!」と指を指す。
 指した指の先には黒い鉱石が置かれていて、神殿の周りを歩いて調査すると、神殿を囲う様に鉱石が4個置かれていた。

「なるほど。この鉱石で精神支配をしているんだな。ナツ、ブロック出来るか?」
「容易いことです。」と俺達を結界で守ってくれた。

 神殿入り口までの階段を昇って行く。登った先に王都と同じ女神像が置かれている。
 この像を見て、何で男と思ってしまうんだろう?
 そう感じた俺は、ナツに頼んで一度、精神支配を受けてみることにした。
 結界から出ると、気持ち悪い・・・。これが精神支配というやつか。
 ナツの精神支配とは随分違う感覚だ。
 女神像を見てみる。・・・男だ!サリーナが男になっている!しかも黒い像だ!
 その瞬間に、ナツが精神支配を解除してくれた。

「どんな感じの精神支配でした?」ナツが聞いてくる。

「ああ、ナツとは違って、ものすごく気持ち悪かった。まだ正気は保てたけどな。」

「それは、あの石のせいですね。質が悪い呪術が込められています。」

「ナツのとは違うのかい?」

「私の精神支配は魔法ですから。呪術は術者の性格や気分も反映されるのです。」



 神殿入り口に受付カウンターが設置されている。
 左から、観光用銅貨1枚。副神官の行う祝福、銀貨2枚。法王の祝福、金貨5枚となっている。
 かなり高額な参拝料金に設定されているが、観光用に並んでいるのは俺達だけで、他は法王、副神官の順で列が並んでいた。

 観光用と言っても、神殿内では神官による説法が行われている。
 要約すると、300年前にこの地にて法王にサリーナから神託が降りた。
 実はサリーナは女神ではなく、男だと言ってきて、この言葉を聞いた我が国だけは他の国とは違い、選ばれた国、そして民達なのだと。
 更に、祝福を受けたいのであれば、法王様に祝福を受けるべき——。
 どこの霊感商法だよ。こうやって、民から金を奪ってるんだな。それで自分達は贅沢三昧。

「あなた方は、何か疑いを持っていらっしゃるのですね?」

声を掛けてくる人がいた。

「やはり、おかしいと思われたのでは?」そう言ってくる。

「申し訳ございません。私は副司祭を努めています、シェイドと申します。貴方方は正しい判断をされていますよ。全く、おかしいものですよね、この神殿のシステムは・・・。」

 そう言いながら、福司祭は去って行った。


 法王の祝福を家でも受けられる護符も売ってますよとかの、しつこい神官のセールスを振りほどいて、俺達は神殿を後にした。

ナツが「何度も神殿に行っているうちに、術が浸透しておかしくなっているのでしょう。」と言って来た。

「あの鉱石を割れば治るのか?」

「はい。そのようです。」

「あの鉱石を割らないとなぁ~」と言いながら帰って行く俺達の後ろに黒い影が付いて来ていた。


「神殿に行って来たぞ。」俺はサリーナに連絡を取る。

「精神支配は受けとらんのか?」

「ああ、試しにちょっとだけ受けてみたけどな。」

「何をやっとるんじゃぁー!」

「すぐに治癒してもらったって。」

「心配させるんじゃない!」

「精神支配を受けてみて解ったんだけどさ。お前、黒いオッサンに変化してたぞ!」
それを聞いたサリーナは、びっくりした後に大爆笑をした。

「ナツの話では、何度も神殿に来ることによって術が刷り込まれるらしい。」

「そうか。そうなると、法王自体も精神支配を受けているという事だな。」

「まだ、はっきりとは解らんがな。その可能性は高いと思う。」

「解った。ありがとう、連絡してくれて。くれぐれも無茶をするなよ。」



午後。冒険者ギルドの店にて。
「何か分かった事はあるか?」

「露店に関しましては、国直轄の露店とと外国からの露店で、はっきりと値段が違いますし、国直轄の露店は飲食が多く、外国の露店は調度品が多かったです。」

「なるほど、今後は国直轄の露店で何が売られているのか、値段は?と調べてくれ。実際に食べても構わない。」


「警備に関しては、騎士団150名、魔法師団30名がいました。」

「騎士団は解るとしても、魔法師団があると言うのは、どういう事だ?」

「実はこの国は魔法の研究が盛んなようで、訓練所もありました。」

「そうか、今後はそれぞれの力が知りたい。その辺りを重点的に調べてくれ。」

「商店などの品揃えは乏しいのですが、価格に関しては異常な物はありませんでした。」

「事情は聞いてみた?」

「表通りの商店は、露店と同じく国直轄の商店で、こちらは品揃えは豊富で、品揃えの悪い商店は商人ギルド加盟の店でした。」

「裏通りの飲食店とかも見てきた?」

「これが、酷いものでした。店主が注文を受けてから表通りの露店に買出しに行き、料金上乗せで客に出すという商いをしているようです。」

「解った。ダダンはスピアとシールズに合流して警護を調べてくれ。特に魔法師団!」



「随分と熱心に話してますね。」給仕のお姉さんだ。

「ああ、この国は余りにもきな臭いから、色々と調べてるんだよ。」

「そうなんですね。何かお飲み物でもいかがですか?」

俺はメニューを見ながら「あれ?」と声を上げた。

「お姉さん、この国は酒はダメなんじゃないの?」

「いいんですよ、ここは冒険者御用達ですから!」お姉さんは笑顔だ。

「よし!みんな、飲め飲め!」

皆の働きを労うが如く、酒を酌み交わすのだった。
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