Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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リンド法国編

0116 リリア誘拐事件

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 レストランミツヤ リンド法国支店は順調にお客さんが集まってくる。
 そりゃそうだ。肉と酒が格安で楽しめるのだから。

「ご主人様、新しいメニューの為に串を買いたいと思うのですが、買出しに言ってもいいですか?」リリアが提案をしてくる。

「鶏肉が少なくなってきていますので、鶏肉を串にさして焼いて出したいと思います。そうすれば、少ない肉でもまかなえると思うのです。」

 所謂、焼き鳥である。
 それなら、鶏肉を余すこともなく使いきれるという事だ。節約にもなる。
「いいアイデアだね。」俺はリリアの頭を撫でてあげながら、許可を出した。

「護衛を付けなくて大丈夫かい?」

「大通りの雑貨屋に行くだけですから、大丈夫です!」

「そうかい?じゃあ、頼むよ。」

「それじゃ、行ってきます!」

リリアは足早に、買出しに行ってしまった。

「俺達は、開店準備を始めよう。リリアだけに負担を掛けたくないからね。リリアもきっと喜ぶよ。」





ー***-





「どんな串がいいかな?やっぱり、金属製がいいよね。」

 リリアは品定めをしている。
 大きめの串より、少し小さめの方がお客さんも手に持ちやすいだろうし、何と言っても少ない肉で済む。

 リリアが目を輝やせながら串を見ていると

「君はレストランミツヤの従業員だね?」声を掛けてくる男性が3人。

「今日はどんな料理を出すんだい?ちょっと話が聞きたいんだ。」
 お客さんか・・・まあ、いいだろう。今日の売り上げにも繋がるからね。

 男達は裏路地に案内をして行く。
 何かおかしいと思った時はもう遅い。リリアは鳩尾に拳を受け、気を失ってしまった。






ー***-






「リリア、遅いな。」桜花は少し、心配をしている。

 桜花は隠密隊にリリアを探すように指示を出した。

 数時間後、隠密隊より連絡があった。

「リリアが攫われました。」

「お前たちは何をやっているんだ!」桜花は声を荒げる。

「申し訳ございません、一人で大丈夫と言われましたので・・・。」

「今すぐに、探し出せ!いいな!俺達も探す!」

「レストランは臨時休業だ!リリアを探し出しに行くぞ!」

 桜花は全員に指示を出した。
 それと同時に、頭大の石をくるませた紙がレストランの窓を突き破り床に落ちる。
 桜花はその紙を広げ、書かれた文章を目にする。脅迫文が書かれていた。
 内容は、「お前の従業員を攫った。返して欲しければ、代表のオウカ一人で来い。」と書かれていた。

 すぐさま、作戦会議が行われ「我々もお供致します!」ジギルとローズがいっせいに声をだす。そりゃそうだ、仲間を攫われたのだ.。黙ってられるほど薄情な奴らではない。
 桜花は何よりも家族の結束をいつも感じているし、リリアには感謝をしている。

「ダメだ!向こうは俺一人で来いと言っている。裏切りはリリアの命が危ない!」

「それではせめて隠密隊でも配備させてください。我々は少し離れた所で待ち構えます。」

 桜花は少し考えた所で、「いいだろう。リリアを攫った奴を捕まえることにしよう!」

『オウ!』





ー***-





 ここは何処なんだろう?
 真っ暗ではあるが獣人族のリリアには昼間のように見えている。
 そこに急に明かりが灯された。
 余りの眩しさに目を覆う。

 見た所、牢屋ではないようだ。
 綺麗で清潔な部屋、豪華な椅子やテーブルもあるし、何と言っても拘束されていない。

 優しそうな人。と言っても顔を覆い目だけしか見えない人物が部屋に入って来た。

「済まない事をしたね。」と食事を持って来る。

「さぁ、食べなさい」と覆面の男が促してくる。

 私は言われるがまま、料理を口にした。
 王国よりも味は濃いが、それでも私が作るよりも美味しくない。
 それよりも驚いたことはこの国で禁じられている「肉料理」があることだ。

「どうして、肉料理があるのですか?この国では肉はご法度と聞いているのですが。」

「ああ、我々は特別だからね。」

「どうしても、オウカ殿に会いたかったのだよ。普通に呼び出せば護衛が来るからね。」

「オウカ様は、そんな卑怯な事はしません。ちゃんと申し出てくれれば誠意をもって対応してくれます。」

「そうは言えないのだよ。何しろ、オウカ殿はこの国に害をもたらす人だからね。オウカ殿がやってくれば、君は解放するから安心してくれたまえ。」

 やはり、ご主人様を拉致するつもりだ。しかし、ご主人様がこの国に害をもたらす人物?どういう事なんだろう?もっと、詳しく情報を聞き出す必要がある。

「なぜ、ご主人様が害をなす人物なのですか?」
「オウカ殿は、この国の決まりを破り、肉や酒を国民に振る舞っているだろう?それが問題なのだよ。」

「酒や肉を食べてはいけないと法律には書いていなかったとご主人様が言っていましたが?」

「ああ、確かにそういう法律だよ。しかし、それではこの国が破綻してしまうのだよ。」

 どういうことだ?肉と野菜を民衆が食べることによって国が破綻する?
 リリアは疑問しか湧かない。

「この国は自国で生産は出来ない。輸入に頼っているのだよ。高価な肉や酒を輸入するお金がないんだよ。だから比較的に安い野菜と魚しか輸入出来ないのだよ。」

「私たちは独自に仕入れています。問題があるのですか?」

「他の店が真似をするだろう?そうすることによって我が国の税収が減り、一気にこの国は破綻するからね。」

 これ以上、聞いても話は平行線だ。もう聞くのはやめにしよう。
 政治の事は解らないリリアは諦め「・・・解りました。」そう答えるしかなかった。






ー***-






「受け渡し場所は3本裏の通りを抜けた広場だな。しかし、意外と広い場所を指定してきたもんだ。」

 桜花は、不思議そうな顔をしている。

「この場所はマズいですよ。隠密隊が張るのも、我々が身を隠す事も出来ない地理になっています。」セバスが電話越しに話してきた。

「窓からはどうだろう?これなら大丈夫ではないか?」

「敵の見張りがいる可能性があります。」

「やはり、俺一人で行くしかないか・・・。」

「我々も最善を尽くします。」

「ああ、頼むよ。」

 それにしても、何故リリアを攫う?
 攫うなら、少々手荒な事をしても俺を狙うだろう?
 警備が厳重だからか?それとも他に理由があるのか?
 さっぱり解らない。

「とりあえず、俺が一人で行くという事で済ませよう。」






ー***-






 約束の時間がやって来た。
 本当に広い場所だ。周りには窓という物がない。
 これでは見張りを立てることは出来ない。
 ただ、ひとつだけ細い通路がある。
 その通路から、黒いローブの男と日本で言う忍者の男が3人現れた。
 その中にリリアの姿がある、

「俺には1人で来いと言いながら、そっちは大勢で来るんだな。」

「それに関しては済まないと思っている。オウカ殿はかなり強い御人と聞いているのでね。」

 どこから、その情報が漏れているんだ?王国にスパイがいるのであろうか?

「王国内での内乱も抑えたとも聞いている。個人の力だけではなく、統率力もあるようだ。」

 やはり、スパイがいるようだ。広い王国では紛れ込んでいても仕方ないか。
 それにしても何の用だ?この国ではレストランを開いているだけなのだ。
 このような事をされる事はしていない。

「とりあえず、リリアを返してもらおう。」

「構わないとも。オウカ殿と引き換えに返してあげよう。心配しなくてもお嬢さんには指一本、振れていない。さあ、行きなさい。オウカ殿もこちらに来てもらおう。」

 俺とリリアは交代のようにお互いに歩いていく。
 すれ違いざまにリリアが「ごめんなさい」と呟いた。

「それでは、オウカ殿には手錠をさせてもらおう。この手錠は特別製でね、魔力を封じ込める仕掛けがしてある。」

 手錠を掛けられた瞬間に、倦怠感が襲ってきて俺はフラフラになってなってしまった。
 そして、連れてきた忍者風の男達に抱えられるようにその場を後にした。
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