Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

文字の大きさ
121 / 167
リンド法国編

0118 桜花救出作戦会議

しおりを挟む
「いやぁ~、今日もクロゲワギュウステーキは美味しいね!」
 そう言いながらパクパクとステーキを口にソースをパンにと食しているのは、ヤヌス王国国王バレット・クロゲワギュウ・コローレである。

「それにしても毎日食べて、よく飽きませんね。」
 そう返すのは桜花の第一妃の玲子である。

 バレットは、王国の復興のめどが立ったという事と息抜きを兼ねて連日のように、ここレストランミツヤ2号店に足しげく通っている。もうすっかりと常連である。

 しかしここは一般の王国民も利用できるレストランなので国王自らが民衆の声を聞くことが出来るし、何と言っても庶民的な国王として慕われている。

 バレットは食事も終わり、これまた大好きなミルクティーを飲んでいる。
 毎日の事だが、3杯はおかわりをする人なのだ。

「ねぇ、レイコさん。このミルクティーの作り方をそろそろ教えてくれてもいいんじゃないの?」

 玲子はフッと笑みを浮かべて
「そうですね。でも教えてしまうと、この店に通わなくなるんじゃないですか?」
「そう言いたいところなんだけど、僕はこの店が気に入っているし、多分、宮廷の料理人や給仕ではこの味は出せないと思うんだよね。あくまで仕事の合間に飲みたいんだよ。」
「なるほど。そういう事でしたらお教え致しますよ。でも、茶葉はウチから買って頂くという事で手を打ちましょう。」
「やっぱりオウカさんと同じでレイコさんもその辺りは抜け目ないなぁ~。いいですよ。この店で買いますよ。今度、ウチの給仕を寄こしますから淹れ方を教えてやってください。」

 そんな、ありきたりな話から、自然と桜花の話になった。
「ところで、オウカさんから連絡とか来ていますか?」
「ええ、何でもこの店で出している料理を銅貨の粒一個で提供しているそうですよ。」

 玲子は桜花の行動に呆れたと言わんばかりの顔をしている。

「おかげさまで、ウチは現在の所、大赤字ですけどね。」
「そうですか・・・。オウカさんのやる事です。何か意図があるんでしょうね。」
 バレットはミルクティーのおかわりを注文する。

 そういう和やかな空気は大げさに開く扉の音で一変することになる。

「レイコ様!」

 ダダンは急いで来たのであろう、汗びっしょりである。

「あら、ダダンさんじゃないの。今はオウカさんと一緒のはずじゃないのですか?」
 玲子とバレットはまだ、余裕の表情である。

「オウカ殿が攫われました!」
「なんですって!」
「なんだと!」

 余りの驚きに立ち上がったバレットのテーブルに置かれたミルクティーのカップが倒れたのだが、今の二人にはどうでも良い事である。

「恐らく、神殿の者の仕業です!今は対策本部を作って、オウカ殿救出の会議中です!」
 ダダンはまだ、落ち着かないようだ。切れた息が整わない。

「解りました!すぐに援軍を送ります!宮殿に控えている傭兵団に告げてください!私も向かいます!」
「私も一緒に行きます!最悪、戦争になる!今すぐに我が軍も集めろ!出兵だ!」
 バレットは同行している傭兵を使いに出した。

「ダダンさん、詳しい状況を教えて頂けますか?」
 意外にも玲子は冷静を装い、まだ肩で息をしているダダンに一杯の水を差し出した。





ー***-





「それでジェイド様とやら、貴方を信用してもよろしいのですか?」
 頭に血が昇ったジギルでは話にならない。セバスが落ち着いて話を聞くことにした。

「そうですね。いきなり神殿の者が来ても信用はされないでしょう。しかし、今は私の言葉を信用して頂く他、手段がないのです。私は今の神殿のやり方に異を感じていますので。」
 ジェイドは促されテーブルに付くと神殿の秘密を全て話すと言って来た。

「神殿には黒い鉱石に呪術が掛けられていましたが、あれはどういった理由なのでしょうか?」
「あの鉱石は、神殿内にて魔法がかかりやすくするための準備魔法の効果があると思ってください。まぁ、今は破壊されて効果もありませんが・・・。」
 確かに、神殿を囲む様に置かれた鉱石は昨晩の内にセバス達隠密隊が破壊した。これで、全てが済んだと思っていたのだが、違ったようだ。

 セバスは準備魔法という事は他にも呪文が込められている鉱石があるのか疑問を持ったので、更に聞き込みを開始し、詳しいことを聞くことにした。

「神殿内は2重の魔法が施されています。まずは幻覚を見る魔法です。更に奥に行くと更に強い幻覚・幻聴・魅了の魔法がかかる仕組みになっています。それにより、国民の全てを意のままに操れるという訳です。」
・・・どうやら、このジェイドという司祭は嘘を付いていないようだ。セバスは疑いながらも信じようという気になっていた。

「やはり、神殿内で起こる魔法も鉱石に込められているということですかね。」
「ええ。2重の魔法はその鉱石によって発動していますが、大元の鉱石は法王がいる部屋にあります。」

 なるほど・・・。とジェイドの話に合点が行ったセバスは、ふと、もう一つの疑問を持った。
「魔法が効いているという事は、貴方もその魔法に掛かっているということでしょう?なのに、貴方は我々に真実を話している。それは、どういうことでしょうか?」

「それは、簡単な事ですよ。」
 ジェイドは指に嵌められた緑色に光るリングを見せた。
「私は、魔法が掛からないように、この指輪で無効化しているのですよ。」
「なるほど。では、我々はどうすればよいのでしょうか?まさかそれを見せる為だけにここまで参られたのではないでしょう?」
 セバスは、話の核に触れることにした。これに答えなければ、この人間も敵という事になる。

 ジェイドは、そこを話したかったのだろうか、襟を正し、セバスに向き直った。
「この国をまともな国に戻して貰いたいのです。国民の声など、簡単に握りつぶされてしまいます。その為にもオウカ殿の力が必要なのです。」
「本当によろしいので?私どもの仲間が、ヤヌス王国に報告に行きました。最悪、戦争という形になるかも知れませんよ。」
「国民には罪はありません。罪があるのは我々、神殿長・司祭・副司祭・神官・副神官達にあります。最悪、その者達を首に掛けて頂いても、私は文句を言いません。」
「本当に、それでいいのですね。」

 セバスは念を押した。
「では、救出作戦を詰めることにしましょう。ジギル殿、冷静になってください。」
 まだ怒りが収まっていないジギルではあるが、この場を指揮する立場にあることを思い出し、深く深呼吸をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...