Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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リンド法国編

0124　居合斬り

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　大男は薄ら笑いをやめなかった。
　ゆっくりゆっくりと、歩いてくる。
　どうやら、獲物はこん棒のようで引きずる音が地下に響く。

「オウカ殿、下がって下さい！」
　２人目の「影」が、指図をする。

「お前に勝ち目はあるのか？」
「いえ、全くありません。しかし、オウカ殿をお守りするのが我々「影」に下された命令！ならば、死んでもお守り致します！」
　そう言い残し「影」は、大男目掛け突っ込んでいった。

　突っ込んでくる「影」に、大男は叩き潰そうと両手を組み振り落してくるが、その隙をついて大男の股の間に滑り込むと同時に内太ももを切りつける。
　どうやら、大動脈を狙って少しづつ、削って行く考えらしい。

「ウガァー！」と大男の悲鳴が聞こえると同時に「影」は宙に舞い、首の血管を切る！
　そして、剣を背中に突き立て地上に降りて来る。
　大男からは、血飛沫が上がった。

　しかし、「影」の攻撃は「柔らかい所」のみの決定打で、大男の致命傷には至っていない。
　次の攻撃をしようと、「影」が大男の顔に向かい飛び上がる。
　いける！と思った攻撃。これがいけなかった。

「影」は大男に捕まってしまい、壁に投げつけられ、またもや「グシャ！」と音を立て、そのまま動かなくなってしまった。

　大男の背後から「オウカ様！」と響く声と共に、セバス達隠密隊が剣を立ててきた。
　さすがに、日ごろの訓練の甲斐もあって、大男にダメージを与えて行ってるのが解る。

　しかし、だ。「影」といい、セバスといい、隠密に長けた者達の攻撃は手数が多い分、一撃が軽い。無数の傷を残していっているが、大男からすれば、かすり傷程度だろう。

「セバス！下がれ！」聞きなれた女の声がする。ローズだ。
　セバスが地に体を伏せたと同時に鞭が飛んでくる！
　セバスの戦いを見て、自分の力技ではダメだと解っているのだろう、ローズの鞭は斬撃モードである。

　しかし、だ。

　やはり、大男には「軽い」。
　大男は天井を崩し、ローズ達が入って来れないようにした。頭はいいようである。

　残るは俺、ただ一人。
　崩れた瓦礫の向こうから「オウカ様！」「ご主人様！」と悲鳴のような声が聞こえる。

「俺に任せろ！」と、言ったものの、どうするか。堅そうだし。
　身長は俺の倍くらい。俺は１８０㎝だから3ｍは超えている。

　大男の攻撃が始まった！え？速い！
　まるで木の枝を振るかのように、巨大なこん棒を振り回している。

　これでは、相手の懐に入る前に、こっちが潰されてしまう！

　魔法攻撃はどうか？

「インフェルノ！」俺は爆炎を出した。
　熱そうにしてたけど、ちょっと火傷しただけ・・・。

　くそ・・・！どうしようか？
　俺は腰に手をやった。そこには「桜花」の刀身があった。

「親父！アンタを信じるぜ！」
　桜花は右足を前にし、両足を地に根が生えたかのようにふんばり、腰を落とす。
　ゆっくりと目を閉じ、呼吸を整えた。

　大男からすれば、動かない相手が目を閉じたのだから、隙ありとこん棒を振りかざし、桜花目掛けて振り下ろした！

　瞬間―。

　桜花の刀は大男の胴を真っ二つに切り裂き、ズーンと地響きと共に地に落ちた。

　親父、ありがとうございます。貴方のお陰で、俺は生きてます！

　俺は切れた大男を見て、急に体が震えるのを思い出した。
　それは、さっきまでの恐怖が振返してきたのと、極限まで高めた集中力が途切れた為だった。
　もう、立ってられない。俺はその場でへたり込んだ。

　瓦礫を取り除き、やっと人が通れるぐらいの穴がやっと開いたと同時に
「ご主人様！」の叫び声。
　抱きついてきたのは、ローズである。ものすごい泣き顔だ。
　少し遅れて、セバスもやって来て、申し訳ございませんでしたと謝って来た。

「主ー！」と轟音が暗闇の向こうから響いてくる。
　ローズとセバスがやっとの思いでどけた瓦礫が、一瞬にして吹き飛んだ！

「主様！ご無事で何よりでございます！」ジギルだった。

「ああ、みんなただいま。心配かけたね。」
「さぁ、戻りましょう！レイコ様も心配されていますぞ！」
「え？玲子も来てるのか？」
「はい！全傭兵団３００名、更に王国軍も来ています！」
「え！バレットも来てんのか！」
「はい！何でも戦争だ！と息まいておりましたが。」
「イカンイカン！王国軍にはお引き取りをお願いしろ！」

　俺達が騒いでいると、「もう、遅いですよ。」これまた聞き覚えのある声が。
　バレットがいた・・・。終わった。
　これで、戦争になるよ！

　俺の心配を他所にバレットが笑いだし
「王国軍は仕掛けていませんが、オウカさんの部下は実際の所、戦争をしたような物ですからね！オウカさん、外に出てもびっくりしないでくださいよ！」
「なんだよ・・・。びっくりするなって。」

　今は無事を喜ぶことが大切だと思う。

　さあ、「影」の二人を連れて、戻ろう！

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