Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

文字の大きさ
130 / 167
リンド法国編

0127 サウラさんブニールさん

しおりを挟む
 俺はその日の夕方に商人ギルドに顔を出し、理由を話して是非とも本部の人と話がしたいと申し出た。
 本当は、ベルさんに言えば事はスムーズに運ぶのだろうけど、ここのギルドマスターの顔を潰すわけには行かないよな。

 更に冒険者ギルド御用達の居酒屋にも顔を出し、店の人(実はギルドの職員だった。)にも、声を掛けておいた。

 そして、3日後。
 馬車が2台、リンド法国にやって来た。
 一人は商人ギルド本部・ギルドマスター代行のサウラさん、赤い眼鏡が似合うキュートな人だ。
 もう一人は冒険者ギルド本部・ギルドマスターのブニールさん、さすがは冒険者ギルド、いかつい顔には額から頬にかけて名誉の負傷があり、ガタイのいい体つきをしている。

 会議で使う場所・・・神殿は燃えてしまったから今はない状態。
 仕方ないので、レストランミツヤを貸し切って会議をすることにした。
 料理はリリアと、何故かエレンさんが手伝うと言って来たので、二人体制を取ることにした。

 店内を見渡し、真っ先に声を出したのはサウラさん。さすがに商人の血が騒ぐと言ったところか。
「このお店では、見た事のないメニューばかりですね。」目の付けどころが違う。
「良ければ、食べてみませんか?何でも出来ますよ。」
「では、このツクリ?とは一体、なんですの?」
「これは、生の魚ですね。美味しいですよ!」
「生の魚!大丈夫なんですの!お腹を壊しませんの?」
「大丈夫ですよ。それに海の魚ですから。」
「海の魚を生で!どうやって運搬していますの?そこに興味がありますわ!」

 ブニールさんは、何を注文すればいいのか、迷っているようだ。
「ブニールさんは、肉は好きですか?」
「ああ、肉は大好物だ!」
「牛肉?豚肉?鶏肉?どれが好みですか?」
「え?肉って、ヤギの肉しか知らないぞ?他にもそんな種類があるのか?」
「それでは、普段はこの店では出さないのですが、クロゲワギュウステーキを・・・。」
「クロゲワギュウステーキ⁉」割って入って来たのはバレットである。
「オウカさん、是非とも私にも、クロゲワギュウステーキを食べさせてください!」

 俺にすがってお願いをしている青年を見て二人は疑問に思ったのか
「あの、こちらの青年はお店の方ですか?」
「いえ、この方はヤヌス王国のバレット・クロゲワギュウ・コローレ国王様です。」

「うそ⁉」二人は驚愕している。
 一国王がこんな国のこんな小さな店にいることが不思議でならないのだ。
「この店の料理は、全部美味しいですよ!ちなみにオウカさんは、私の親戚ですので、その辺りをよろしくお願いします。あっ、リリアちゃん、私はライス大盛ね!」
 国王とこのオウカと言う人物が親戚・・・。これはタダならぬ話を予感していた。

「まずは、乾杯としましょう!お酒は大丈夫ですか?」
「ああ、酒は大好きだ!」
「私も大丈夫ですわ!」
「では。」俺はリリアが運んできたニホンシュをグラスに注いだ。

 二人は初めて見る酒に驚き、そして疑った。
「色がないのですね。」サウラさん。
「本当に酒なのか?水じゃないのか?」容赦ないブニールさん。
「まぁ、飲んでみてください。乾杯!」
「なんて美味しいお酒なんですの!スッキリしてますわ!」
「キリリとした辛口の味がたまらん!」
 二人は一気にニホンシュの虜になっていった。

 そうこう言っていると、造り盛り合わせが運ばれて来た。
「どれも、見た事がない魚ばかりですわ!キラキラしていますのね!」
「こちらのショウユと言うソースを少し付けて食べて下さい。」
「では・・・。」パクリ。
 口の中が「海」!この魚は何と言う魚なのでしょう。
 噛むたびにぶつりぶつりと切れる食感、そして甘みのある脂。とても美味しいですわ!
「次はこの緑色をしたワサビを少しだけ乗せて食べてみて下さい。」
 この緑色は何でしょう?あまり匂いは感じませんが・・少しだけと言う意味が多分あるのですね。

 では・・・。ぱくり。
「!」先ほどの味にワサビの辛みが交わって、魚の味が引き立ちますわ!これは、お酒が合うに違いありません。ん~!やはりツクリにはニホンシュ、ぴったりですわ!

 サウラさんが美味しそうにしているのをブニールさんは我慢が出来ないようで
「なぁ、俺にもチョット食わせてくれよ、な?」
「嫌ですわ!」

 ブニールさんとバレットにクロゲワギュウステーキが出来上がった。
「ほう、これが牛を焼いた肉ですか!では、早速」
 肉にナイフを力強く差し込もうとするので、軽くでいいですよと、忠告をしておいた。

 分厚い肉にナイフを差し込むと、簡単に切れる!肉と言えば噛みきれんぐらいの硬さだろうが!なのにこの肉は柔らかい。下処理がいいのか?それともいい肉なのか?

 肉を口に入れてみる。噛むと口の中に肉汁がドバーっと溢れだす。
 そして、なんとも言えない柔らかさだ!これはきっと酒が合うに違いない!

 ニホンシュを手に取ろうとすると、こちらの方が合いますよとワインを出された。

 肉を一口、ワインを一口、なんと絶妙なバランスだろうか!手が止まらん!

 更に肉を食べようとすると、白いつぶつぶ、ライスと言う物を出され、これと一緒に食べてみてくださいと言う。

 言われるがまま、肉とライスを一緒に口の中へ・・・。

 俺の世界観が変わった!なんだこの美味さは!溢れだす肉汁をライスが絡み取り、どこにも逃がさないように捕まえてくれている・・・。

 あまりにも美味しそうにしているので、「私にも少し、分けてくださいませんの?」とサウラが言うので、「やだよ!これは俺んだ!」と断った。

 カウンターで美味しそうにクロゲワギュウステーキを食べているバレット国王に聞いてみた。
「国王の名前のなかに『クロゲワギュウ』って入ってますよね?」
するとバレットはニッコリと笑い
「ええ、いつかはこの肉を国民一人一人が食べる事ができる豊かな国を作りたいと願いを込めて、この名を付けました。」
「そんなに高いのですか?」
「ええ。一皿、銅貨一枚らしいですから・・・。」
「銅貨一枚!一週間分の金ですよ!どうりで美味いはずだ!」

 そんな感じで料理と酒を楽しんでいたら、ジェイドのか細い声が話を遮った。

「あ、あのぉ~、私の事を忘れていませんか?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...