Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

文字の大きさ
149 / 167
マイカ帝国編

0146 要人

しおりを挟む
 この世界は地球と同じ五大陸から出来ている。

 とは云えども、魔王軍が攻めて来るとの事で召喚されたのがこの大陸なので、他の大陸は大丈夫なんだろう。大丈夫であって欲しい。

 桜花達が拠点としているヤヌス王国がある大陸は全部で5つの国から出来ている。
・ヤヌス王国
・リンド評議国
・シェラハ王国
・マイカ帝国
・エランド王国
 その5つにさらに「二ホン国」が加わったので、現在は6か国になる。
 急に二ホン国と言われても、元来は恐れられている魔王国だった事実は変えることは出来ない。出来ないからこそ、諸外国に本来の二ホン国を知って貰わなければならない。

 このところ、リョウタはバレットと同行している事が多くなった。バレットを通じ二ホン国をアピールするためであり、希望であれば二ホン国に招待する事もしているらしい。

 その甲斐あって、ヤヌス王国は中立国シェラハ王国と国交を結ぶことに成功、これに引き続き二ホン国とも国交を結ぶ運びとなった。

 ただ、問題は「残りの国」である。マイカ帝国はヤヌス王国に敵意むき出しだし、そのマイカ帝国と仲が良いエランド王国。この2つの国は、以前にサリーナが良く見えないと言っていた国だ。

 サリーナが良く見えないという理由は、「反女神の国」であるという事が大きな原因らしいのだが・・・。

 ただ、不思議な事にマイカ帝国には冒険者ギルド本部と商人ギルド本部があるのだ。これは元々、中立国家だったのかはたまた、アピールだけなのか誰も解らないのだが、両ギルド本部があるのは確かな事だ。

 マイカ帝国の隣にはハイマギーの森がある。桜花達の働きによって行き来が可能になった地域だ。さらにこの森は海へと繋がっているので海の向こうの大陸にある異国との国交や貿易が可能になるのでマイカ帝国とは是非とも国交を再開したいのがヤヌス王国の本音である。

 両ギルドの本部には、バレットもリョウタも顔を見知っているので、マイカ帝国の要人の紹介をしてもらうことになった。

 場所は?と尋ねると両ギルド共、王国のレストランミツヤ2号店が良いと口を揃えて言って来たので、後日会う約束を取り付けたようだ。




***





 王国の城門に馬車が3台やって来た。紋章からしてマイカ帝国の物というのがわかる。馬車の中には、冒険者ギルドマスターと商人ギルドマスター代行とあと要人らしき二人が乗っていた。

「ここがあのレストランミツヤですよ!どうぞ!」

 冒険者ギルドマスターにうむ。と一言だけ声にしたのはマイカ帝国の要人のようだ。もう一人も要人であるのだろう。

「こちらのお店は帝国では食べる事の出来ない物が沢山ありますの。どうぞ、ご堪能下さい」

 要人に説明をしている商人ギルドマスター代行がその場にバレットを呼んだ。

「初めまして。バレット・クロゲワギュウ・コローレと申します。」
「本日私共は非公式での訪問となっております。ですのでウォールとお呼びください。それと、この者はキシールと言います。」

 冒険者ギルドマスターと商人ギルドマスター代行は、その場を後にし別テーブルに着くや否や、好きなメニューと酒を注文している。結局はこの二人がここの料理と酒が飲みたかっただけなのだ。しかし、失敗なのかと言われるとそうではない。レストランミツヤは今や大陸で一番とささやかれる名店となっているのだから。

 マイカ帝国の要人が非公式とは言えOKしてくれたのも、レストランミツヤで食事をしてみたかったのが大きな理由でもある。

「長旅で疲れたでしょう?今日の所は飲んで食べてを楽しんでください。」
「それはなんとも有りがたい。そうさせて頂くとします。」

「何が美味しいのですかな?」
「何でも美味しいですが、私はクロゲワギュウステーキをおすすめします!」

 バレット国王・・・。この店で口にしたのはステーキとミルクティーだけなのだ。いまさらながら他のも食べておけば良かったと思っても後の祭りである。
 助けて!その視線が玲子に刺さる。まったく、この人はとため息をついた玲子は何を食べるか悩んでいる二人の所に足を運び

「好きな食材はなんですか?」「嫌いな食材は?」と聞いてくる。
「良ければ好きな具材で出来る料理を少しづつ出しますので、気に入った物を言って頂ければ、お出ししますわ。」

 玲子が提案したメニューは「アラカルト」。要は普通に作って口に合わないからと捨てるよりも、味見と称して少しだけ出す事によって、経費が押さえられるというもの。手間はかかるが、材料費に無駄がない。

 どの料理も美味いですね!こんな料理は見た事がありません!と大絶賛をしているところにリリアが顔を出し、この料理は全てこの子が作った物ですと紹介をすると、獣人なのにと顔色を変えるのだが、それも束の間の事でマイカ帝国でも獣人達を教育すれば良いのかも知れないと前向きな答えが返ってきた。

 今日は楽しい時間を過ごし、難しい話は明日にしましょうと今夜は迎賓館に宿泊してもらう事にした。





 翌朝。

 玲子がレストランミツヤに顔を出すと昨日の要人の方二人が来ていたので、一応声を掛けると、案の定の話しを切り出された。

「レストランミツヤをマイカ帝国で出店してくれないか?」
「リリアという獣人の料理人をくれないか?」

「私共は商品ではございませんので。」と軽くいなしてしまった。これでは悪いなと思い「レストランミツヤは国交が成立した暁には出店を考えますわ。」

 これで、バレットも話しをしやすくなるだろうと思っていたら、バレットの顔もそこにあった。
 え?と思っていると「玲子さん、ミルクティーの茶葉が切れてたんです!それでミルクティーを飲みに来ました!」とボサボサ頭で言って来たので、朝食を用意することにした。バレットは20代前半、玲子からすれば弟のような感じである。

 バレットに朝食を出していると、マイカ帝国の要人二人が羨ましそうに見てくる。良ければ食べますか?と聞くと何度もうなづいた。朝食と言ってもコーンスープにBLTサンド、珈琲と、簡単な料理だけど、この世界の人たちからすれば珍しい物らしい。嬉しそうに食べている。

 二人は朝食を食べ終わると席を立ち、バレットに挨拶をすると国に帰ってしまった。バレットにいいの?と聞くと実は昨日の夕刻から夜中に掛けて話し合いを済ませたのだとか。

 皇帝が王国に来る時は国交を開く時になるとの事。それまでの間は水面下で話し合いをすることになったらしい。

 そもそも、何でヤヌス王国とマイカ帝国は仲が悪いのか?とバレットに聞いてみると、「父の負の遺産です。」と言っていた。なるほど、お金関係って奴ね。
「それを解決するために一つ一つと片づけて行くのが今回の会談で決まったのです。」



***





 ここはマイカ帝国皇帝の部屋。
「ウォール副大臣とキシール外務総管がヤヌス王国で会談をしている模様です。」
「わかった。ご苦労」

 半分ほどワインが入ったグラスをテーブルに置き、何やら考えているのはマイカ帝国皇帝ロンベルクである。ロンベルクはシエロ前国王に一方的に支援打ち切りされた事を恨みに思っている。いるのだが。そのシエロ王は内戦で亡くなりバレット国王に変わったのだから恨みはないに等しい。

 マイカ帝国はこのところ国益が落ちて行く一方であり国が傾きかけているのが、ひしひしと肌に感じられる。
 ならば、ヤヌス王国から奪えば良いのだ!と唸る軍人を抑えるのも限界に達してきた。現在進行形で国交の正常化の話しがまとまれば、支援も受けられるし経済も良くなるに違いない。ウォールとキシールが帰って来れば詳しい話しを聞きたいものだと思っている。

 話しの進み具合の報告を待ってから考え、次回は私が直接会うのもいいかも知れないとも思いながら残りのワインを口にする皇帝なのであった。






***





「今日の訓練はここまで!」
 桜花は傭兵団におおかた日本刀が行き渡っていることから剣術を教えるのが日課になっていた。

「いつもより早くないですか?」
 ジキルが不思議そうにしている。
 と、言うのもいつもなら傭兵団全員が腕が上がらない立ち上がることさえ困難というぐらいまでシゴキ上げているのに、今日に限っては誰の息も上がってないからだ。

「今日はな、ヒガシムラヤマから牛肉が数頭分送られてきたんだ。これで今からバーベキューをしようと思ってな。たまにはいいだろう。」

 牛・バーベキュー・・・なんて甘美な響きなのだろうか傭兵団全員がウットリとした目、口にはよだれが流れそうになっているのがわかる。

 気を取り戻した傭兵団全員は、素早い行動でバーベキューの用意を始める。普通ならば普段もこれぐらい動いてもらいたいものだと言うのだろうが、傭兵団全員は普段から真面目に取り組んでいるのでこの言葉は似合わない。

 ベルサイユ宮殿の庭に炭火コンロが数十台置かれ次々に火を入れていく。それと同時にメインの牛がお目見えしたので、皆は歓声をあげている。

 牛を捌くのはリリアでは力不足なので、シェフとコックがみるみると捌いていく。捌いた肉をリリア・マリー・クローバーが分厚いステーキ大に切って行く。

 レストランミツヤの調理スタッフ総出で野菜を切り、下味を付けるといった連携もバッチリだ。ドンドンと準備が進んでいるのを、傭兵団は今か今かと見つめる状態になり・・・

「いいぞ、焼けー!」

 桜花の号令で全員が一斉に肉を焼いていく。
庭いっぱいに香ばしい香りと煙が立ち込め、更にエールで乾杯をする!

 乾杯の中にバレットとリョウタの顔もあった。


 王国は今、平和なのだと誰もが確信していた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...