Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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マイカ帝国編

0148 マリーの太刀筋恋心

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 マリー王女がヤヌス王国にやって来てバレットを追いかけ続け早2週間。もはや日常と思わせられる感じで剣を持った完全武装のマリーが今日もバレットに試合を申し込んでいる。

 何故マリー王女は剣術が上手いのか?実は彼女はシェラハ王国傭兵団の名誉団長を務めている。ただ真っすぐなマリーはお飾りでは行けないと傭兵団員と同じメニューの訓練をして剣術を磨き、今ではいっぱしの傭兵と言われるぐらいの腕前で、その振る舞いで団員と国民から人気がある。

 取り組むなら真っすぐに。これが彼女のポリシーなのだろう。

 レストランミツヤにも連日のように顔を出し、色々なお茶を楽しんでいるので、リリアはお茶に合うお菓子をサービスで出すようになった。

 まぁ、連日シェラハ王国にも出店してほしいとの要望を言ってくるのもあるのだけど、新たに調理人や給仕を見つけレベルを上げてと色々大変なのでこの辺はバレットと玲子とよく話し合わなければと思う。

 ただ、不思議な事にバレットと一緒にマリーがやってくることはなかった。
 バレットがやってくるとマリーは席を立ち同じ席に座る事がない。

「バレット、お前嫌われているのか?」

「え?そう考えると勝つまで止めないと言うのも合点が行きますね。どうしよう・・・。」

「今度、それとなく聞いてみるよ。」

「ありがとうございます。」





 次の日。

 レストランの扉が開き、綺麗なドレス姿のマリーがやって来た。

「いらっしゃいませ。今日も素敵なお召し物ですね。」

「ありがとうございます。あの、もしや店長様ですか?」

「ええ。主人からはお噂はかねがね聞いております。店長の玲子です。」

 マリーの座る椅子も決まったように同じ席になり、メニューを見ている。今日はバレット国王との試合は済んだのですかと聞くと顔が赤くなったマリーは小さな声で『はい。』と答えた。



 はは~ん。と玲子は何かに気づいたようだ。

 たまにはお食事はいかがですか?お疲れの時には肉が良いですよとさりげなくクロガワギューステーキを薦める。何故、このメニューを薦めるのですか?との問いには、バレットの好物ですからと答えると、またまた顔が赤くなり、それではこれをと小声で注文するのだった。

 ステーキが焼きあがるまでバレット国王のミドルネームが何故クロゲワギュウなのかを教えてあげるとマリーは目を輝かせ玲子の話しに食い入るように聞き入っていた。

 少し小さめのステーキを珍し気に見ては食べるときのマナーを聞き、優雅に口に運ぶ。この佇まいをバレットに見せてあげたいものだ。彼は自宅にいるかの如く自由に食しているから思わずそう口にしそうになった。

 食後もバレットが好きだからとミルクティーを差し出すと、マリーは知っているはずなのに、またもや顔を赤らめていた。

 ティーカップを皿に置くとマリーはお決まりのシェラハ王国に出店してくださいと願い入れをしてきたので、それじゃあと条件を出すことにした。

 条件はシェラハ王国に女神クリス・サリーナを祭った神殿を作ってくれること、出店費用は国で持って貰う事を告げると、元々クリス・サリーナを信仰しているのでそれには問題はなく、女神像もドワーフ製の物を置いて大丈夫、出店の費用などは、こちらから打診しているので国王に出させるという事で決着した。

「それと、あともう一つあるのですけど。」

「なんでしょう?」

「あなたとバレット国王の結婚式の晩さん会で料理を出させて欲しいかな。」

 マリーは目をパチクリとさせたが、すぐに何を言われたかを理解して顔が真っ赤に染まり慌てふためいている。


「ななな、何をおっしゃっているのでしょうか?」

「ふふっ。その様子じゃ当たりね。バレットの事が好きなんでしょう?」

 優しく問いかける玲子の声にマリーは俯きながら、はいと答えた。

「いつから好きになったの?」

「初めて会って、剣で負けた時です。あの人、私が女だからと言って手を抜かなかったのです。他の貴族の人たちは私の顔色を伺ってわざと負ける振りをするんです。嘘つきは嫌い。でも、バレット国王は真面目な方。一筋の太刀筋にそれを感じました。」

 なるほどなるほど、若いのはええのぉ~と思いながら玲子は笑みを絶やさない。

「どうして、毎日のように試合を申し込んでいるの?彼の人となりは分かったのでしょう?」

「試合で勝ったら、告白しようと決めているんです!私、バレット様のお嫁さんになりたいのです!」

 マリーは真っ赤に染まった頬を両手で抑え身体を捩っている。不器用な、それでいて剣のように真っすぐな人だ。

 応援したくなった玲子は何とかこの思いを伝え、出来るならば成就させてあげたいと思ってしまっている。

「私も応援するわ!頑張って、マリー王女!」

 その言葉を聞いたマリーは真っ赤な顔で満面の笑みを浮かべているマリーに明日は夕方に来てねと伝えておいた。





 翌日。

 もうそろそろバレットが来店する時間なので早い目に来てもらっているマリーには陰に隠れて貰う事にした。

「いい、私がバレットの本音を聞き出すから声を出したり動いちゃダメよ。」

 両手で口を抑えコクコクと頷くマリーを確認してすぐに扉が開いた。

「こんにちは!いつものステーキ食べさせて!」

 バレットはいつもの席に座りおしぼりで手を拭いている。今日はゼノン司祭も一緒だ。

「こんにちは。ゼノンさんも同じでいいのかしら?」

「いえいえ。私はサッパリとした魚料理にしてください。」

「畏まりました。」

 焼きあがった分厚いステーキをマナーも何もなくひたすらに美味しそうに頬張るバレット。対象に魚料理を気品豊かに食べるゼノン司祭。バレットはライスのほかにパンまで注文していた。

 食後のお茶を楽しんでいる二人にいつものように話しかけてみる。

「今日も試合があったのですか?」

「ええ。もう日課って感じですよ。」

 バレットは大好物のミルクティーを飲みながら上機嫌でしゃべっている。

「相手は女の子なんだから手加減してあげても良いんじゃない?」

 そういうと、バレットの目は真剣な眼差しに変わり「そうは行きません。マリー王女に失礼ですから。それにわざと負けても喜んだりしないでしょう。」

「じゃあさぁ、聞くけどバレットは王女様の事が好きなの?どうなの?」

 その話題に反応したのか、ガタンと物音が立ってしまったのだが、ゼノン司祭が食い入るように「その話は私も気になるところですな。どうなのでしょうか?国王。」と聞くものだから、バレットも物音に反応しなかった。

「ええ。とっても素敵なレディーですよ。頭も良いし人柄もいい。国民に愛されるわけですよ。」

「そうじゃなくって、バレットはお嫁さんにしたいと思うかどうかを聞いているの?」

 こうストレートに聞かれれば逃げ場がないと分かったバレットは顔を赤く染め、口をつぐんでしまった。

「夢は言ってもタダなんだから正直に言って見なさいよ!」

「妻に出来ればと思っています。」

「じゃあ、さっさとプロポーズしちゃいなさいよ!あんなにいい子、誰かにとられちゃうわよ!」

「そうですね・・・。」


 バレットとゼノンが帰った後、物陰から真っ赤な顔をしたマリーが出て来た。
 その目には涙が浮かび幸せの絶頂という感じだった。
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