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第四十頁

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「参った…」太陽がぼやく。

 北風の野郎…身体が冷えて風邪を引いたから、今日は休みますって…
 俺が、熱を出したから、動けませーん!って言ってる位、ふざけた話だ…。

 今日は、戦う相手もいないし、獲物もいないから、ノンビリするかぁ…たまには、いいもんだ。

 遠くに目を凝らすと、旅人であろうか、ひとりでこっちに向かって歩いている。

 反対側に目を逸らすと、二人組がやって来る。やってくるのだが、服装が変!変態だ!
 何だあの格好は!この世の物とは思えん!

 太陽は、変態2人は後にして、まずは、旅人から楽しもうと考えた…。


―――――――――――――――――――――――――――――


「まずはこれで試してみよう。」

 1本のサボテンを見ながら、ゆめが言う。

「何をするつもりなのじゃ?」

 ゼウス、もとい、お父さんが聞くと、

 ゆめはペンと消しゴムを出してきた。

「これを使って、この世界の物に直接、干渉出来ないかの実験をするの。」

「なるほど、の?」

「じゃあ、やってみるね!」

 サボテンに向かって消しゴムを当てる。

 ゴシゴシ・・・・・
 ゴシゴシ・・・・
 ゴシゴシ・・・
 ゴシゴシ・・

「消えないじゃない!」

 ゆめはゴシゴシ、ゴシゴシとサボテンを擦り倒す。

「やめ、やめ、やめぃ!」

 お父さんは、ゆめの手を止めて、

「何をしたいのだ?」

「この消しゴムで、サボテンを消せるって、思ったのに…」

 お父さんは、ゆめが何をしたいかがわかり、
 大声で笑った!

「そりゃ、消せる訳、なかろうに!」

「ゆめ?この消しゴムで消せるのは、本の文字だけじゃ。」

「わかってるよ。わかってるんだけど…。この世界って文字の世界じゃないの?」

ゆめは、う~んと腕組みをしながら「出来ると思ったんだけどなぁ~」と考え込んでいる。

 お父さんゼウスは迷った…。
 このまま連れて帰れば、ヘーラーに何を言われるかわからん、しかし、儂は干渉できんし…。

「あっ、そうだ。」

 お父さんゼウスが何かを閃いた様子で、ゆめの頭に手をやり、

「よいか、まずは、本をイメージするんじゃ、ほれ、お前にパパの小説を渡したろ?あの様な感じで、この世界に本を呼び出すイメージをするんじゃ。後は儂に任せよ。」

 ・・・儂が直接、干渉しなければ良いのじゃ、干渉するのは、ゆめじゃ、儂ではない。

お父さんゼウスは、ゆめに力を与えた。

ゆめの前に、フワッと本が浮き上がってきた。

「本のページを見よ、」

本の一部分が、光っている。

「消しゴムでこすって…」

サボテンの「一部」が、消えた。

ゆめは、嘘って顔をしたが、その後に嬉しくなりその場をぴょんぴょんと跳ね回った。

「出来た!え?なんで?」

「よいか、この消しゴムが使えるのは、本のみじや、では、本ごとこの世界に召喚すれば良いのじゃろ?」

・・・流石は、全知全能の神である。

「でも、何で一部分だけ、消えたんだろう?」

「それは、イメージの問題じゃ。サボテンを良く見て本に書き込むイメージをするんじゃ!」

「こ、こう?」
 ゆめは目を閉じる。

 本のページが光だした。

 消しゴムで消してみる。

 また、一部分だけ、消えた。

「後は訓練じゃな!儂も付き合うから、ゆっくりとマスターするんじゃ!」

 そうアドバイスを受けながら、練習を励んでいると天空から

「ゆめー!」

…と、ヘーラーさんの声が聞こえた。
 練習は、また今度じゃなと「お父さん」が、微笑む。

 今日は帰ろう。

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