二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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校舎そのもの、というよりは玄関口や昇降口に当たる場所へ向かえば、そこには受付対応のための席が設けられ、新入生にあたる令息令嬢たちを恐らく教師か事務員かと思われる人たちが口頭で案内をしている。

人員も限られているし、在校生の先輩たちの有志を募ったとしても新入生とその家族にすべて対応できるとは限らないし、中には高位貴族と下位貴族それぞれ違う対応をするだけにとどまらず、下位貴族をとにかく見下すような言動をとる輩もいなくはないので、きちんとそのあたりを理解し、弁える先生や事務職員等が対応に当たる方がまだ良い。

それに、先生方や職員の方が対応する場に立てば、新入生の顔などをある程度把握することはできる。

もちろん、うろ覚えになる事の方が大半だが、結構派手な出で立ちであったり、案内する前からトラブルを起こして周りから視線を集めたりしてかなり目立つような新入生もそれなりにいる。

なので、いわゆるそうした嫌でも目立つ生徒の顔と名前を確認して、どういう生徒なのか、これまでどんな嫌な噂が立っているのかといったことも精査し、トラブルが起きた時に迅速に対応できるようにしているわけだ。

「おはようございます、王立学園へようこそ」

「おはようございます、本日からお世話になります」

「おはようございます!お世話になります!」

両親に促されるように、その案内のための席にいる職員の元へ行けば、挨拶と共に歓迎の言葉を伝えられたため、グウェンドリンはその言葉に挨拶と共にお世話になりますと返す。

カトリーヌもそれに続くように、同じように言葉を返した。

グウェンドリンとカトリーヌの関係性、仲の良さなどをまだよく知らない職員は、それぞれ父と母に似た華麗な双子の姉妹により笑みを浮かべて、入学式に関しての案内を行う。

「入学式はそちらの昇降口を入ってすぐを左に曲がっていただいた先にある大ホールにて行われます。
高位貴族と下位貴族それぞれが分かれるように席を配置しており、座席にはお名前とクラスが書かれたプレートが配置されておりますので、職員の案内の上、プレートのお名前にお間違いが無いかご確認の上でお座りください」

「分かりました、ありがとうございます」

職員の案内にスッと一礼を返し、グウェンドリンがその場を離れようとすると、カトリーヌも慌てて一礼し、お礼を言ってからグウェンドリンの後を追うように両親の元へと向かった。

相変わらず高位貴族の方々は見目麗しい方が多いなあ、と職員が次に案内を求める令息令嬢を待とうとした途端、校門近くが騒がしくなった。

「――!」

「―――」

「―――――」

何やら言い合いをしているようで、職員は別の案内をしている職員に目配せをして、うなずいてもらったのを確認してすぐさまその騒ぎの方へと足を向けた。

そしてこうしたイベントを待ち望んでいたカトリーヌもまた、校門付近で騒がしくなっているのを耳聡く聞きつけた。

「(とうとうイベントが…!)」

そう思って後ろから両親が「早くこちらに来なさい!」と言っているのもスルーしてワクワクしながら校門付近へ行くと、そこには顔はよく悪くもないが、柄の悪さだけはよくわかるような令息が、他の令息に対して圧をかけている場面であった。

「ええー……」

カトリーヌ的には、高位貴族のイケメン攻略対象にヒロインがぶつかるなどして接点を生み出すためのイベントだと思っていたのだが、ただのチンピラじみたやり取りで呆然とする。

あれ?私のイベントは?と呆然とする頭で考えるものの、目の前の光景はとにかく弱い者いじめやカツアゲ現場に近い。

華々しい乙女ゲームの幕開けとなるイベントのまさかの展開に、カトリーヌはとぼとぼと両親の元へと帰るしかなかった。
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