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第1話 身包み剥がれた状態でスタート?
しおりを挟む「――こ、こ、は?」
気が付くと俺は、胸に下げたプレートと下着以外は何も身に付けていない状態で、やや古風な木造建築の会議室っぽい場所でに居た。
同じような格好の連中は30名くらい居る。
重苦しい空気に、何が起きたのかを訊ねる気にもなれず、ほぼ唯一の持ち物であるプレートを弄りながら眺めてみる。
すると半透明なウィンドウのような物が開いた。
登録名:あ22
種族 :人族(男)
年齢 :15歳
レベル:1
職業 :僧侶系・治癒魔法師
カルマ:中立
二つ名:なし
所属チーム:なし
<履歴>
聖歴316年02月01日 ダンジョン探索者ギルド登録。探索者登録名「あ22」。
聖歴316年02月01日 パーティー≪ギオの刀≫に加入。
聖歴316年02月01日 パーティー≪ギオの刀≫から脱退。
(何だこりゃ?)
思わず叫びそうになったが、周囲に人が居るので呑み込む。
(この、いかにもテキトーに付けたっぽい名前。
ダンジョン探索者ギルドという名称。
ギルドに登録した直後にチーム加入して、即日脱退。
そして身ぐるみ剥がれたようなこの格好。
これってアレか?
随分昔のRPGであった、パーティーメンバーを新規作成しては初期装備と所持金を奪って追放し、スタート直後の資金を稼ぐ、鬼畜金策プレイ。
その被害者側のキャラに、転生か憑依をしたって事なのか?)
察するに、この大部屋に居る30名は同じように鬼畜金策プレイの被害に遭った者達という事だろう。
そりゃ部屋の空気も重苦しくなるはずである。
そんな事を考えていたら、扉を開いて壮年の男が入って来た。
その後ろから、大きな荷物を抱えた屈強な男達が続く。
「お待たせした。
パーティー≪ギオの刀≫から被害を被った者への、探索者ギルドからの対応と、問題のチームへの処遇について説明させて貰う。
まず言っておくが、今回の対応はパーティー≪ギオの刀≫の悪質さ故の特別措置であり、通常はこんな救済措置は行わないと、覚えておいて貰おう」
ここに居る者達は全員、ダンジョン探索に自ら名乗り出した者達。
ダンジョンと言う人の目が届かない場所では、ダンジョンモンスターだけでなく、探索にかこつけた盗人との遭遇も懸念される。
そのあたりの警戒を怠り、痛い目に遭ったとしても、それは自己責任というものだ。
だから通常なら、ギルドとしてもこんな救済措置は取らない。
ギルドはあくまで、必要な技能を備えた探索者の出会いを仲介する組織だからだ。
しかし今回は、話が違った。
この部屋とは別の部屋に、女性探索者の被害者も20人ほど居るらしい。
つまりパーティー≪ギオの刀≫の主要メンバーと思しき者達は、ダンジョン内ではなく町の中で、それもダンジョン探索ギルドの建物内で、被害者50人規模の窃盗行為を行った事になる。
更に、「チームとしての活動資金を確認したいから、所持金とかを一旦全部集めよう」という言葉に、なぜか全員が所持金を全額差し出してしまい、服を含めた装備を丸ごと全部渡してしまったと言う。
それを目の前で見せられていたはずのギルド職員までが、彼らがギルドを去るまで、異常な行動だと認識していなかったときた。
これはもう、パーティー≪ギオの刀≫のメンバー内に魅了か催眠か洗脳の使い手が居るとしか考えられないという話になって、ギルドが動かざるをえなくなったと言う。
「残念ながら、君達の奪われた所持金と装備を全部返してやることは出来ない。
盗品だったなら買取時のチェックに引っ掛かるところだが、形の上では彼らは『同じパーティーメンバーから同意の上で差し出された中古装備』を下取りに出した事になっているんでな。
そして肝心のパーティー≪ギオの刀≫は、ダンジョンに入ってすぐに全滅していた。
しかも装備はさして高価な代物ではなく、食料や薬品も買い込んではいなかった。
君達から追い剥ぎして手に入れた装備は全て下取り済みなのに、その金も持っていない。
結局、真の黒幕は別に居て、パーティー≪ギオの刀≫の面々もまた操られただけの新米という結論に至った。
悪いが、ギルドとして対応できるのはココまでだ」
ギルドから補償できるのは、ギルドの倉庫にあった古着と中古ナイフの提供、そして1人30リブルの現金までだと言う。
革鎧とか装備していた者にとっては、マイナス以外の何物でもない。
ちなみに安宿1泊10リブルだそうで、食事代も含めると2泊くらいの生活費にしかならない計算だ。
「今回被害に遭ったのは全員、登録したばかりの者達だった。
ヤツら自身もまた先日登録したばかりだった事を考えると、恐らく黒幕は、ベテラン探索者を洗脳できるほどの力は無いと言う事なのだろう」
――多分、違う。
今の俺が『ゲームのキャラに転生か憑依している』と考えているように、恐らくゲーム世界に転生したと考えたヤツが、ゲーム感覚そのままに鬼畜金策プレイをやったんでしょう。
追い剥ぎして追放した後のキャラは、データ上の存在で消えても問題ないとか考えて。
そしてきっと、死んでも新しいキャラを作ってやり直せるとも考えていたのだろう。
集めた金や装備を失わないように、安物装備でダンジョンに潜ってみて、戦闘パートを体験だけして全滅させてやり直しを図った、といったところじゃないかな。
さすがにココでは、そんな情報を明かせないけれど。
それにしても新人が50名も1日で登録される事を不思議に思われないって事の方が驚きである。
集められた俺以外の皆は、現地人としての自我しか持っていないのかザワつくが、それ以上の苦情はギルドに言っても仕方がない、となった。
「え~と、1つだけお願いしたい事がありますが、宜しいでしょうか?」
俺は手を上げる。
「何だ?」
「探索者登録名だけを変えるって可能ですか?
履歴を残したまま、名前だけを変えたいんですが」
いくら何でも『あ22』ってのは酷いからな。
追い剥ぎした後でデリートするつもりだったのだろうけれど、そんな即捨てキャラにあてがわれたコッチはたまったものではない。
「ん? ああ、指名手配されていない限りは登録名変更は可能だぞ?
履歴は、登録を取り直さない限りは消えないから問題ない。
でもそんな事をしてどうするつもりだ?」
ギルド側の責任者らしい男が不思議そうに訊ねてくる。
ま、そうだよな。
彼にとって『あ22』は恐らく何の疑問も持たない名前なのだろうから。
「えっと、たったの1日で50人もの人間から追い剥ぎをやったパーティー≪ギオの刀≫が特殊なケースってのは判っていますけど、それでもやっぱり、探索者デビュー初日から追い剥ぎに遭ったヤツって思われると、他の人とパーティー組む時に敬遠されるじゃないですか。
なので、名前を変えられるなら変えたいな、と思いまして」
それっぽい理由を口にしてみる。
実際は、ゲームのようにギルドの登録メンバーリストから、追い剥ぎに遭った『あ22』って名前を消しておきたいと考えただけ。
だってこの世界がどこまでゲーム仕様を踏襲しているのか判らない以上、ゲームの展開と違う事をしたら、何が起きるか判らないからね。
自分がチート持ちの主人公キャラならともかく、使い捨てされたキャラだし、不確定要素は排除しておきたい。
「おお、なるほどな。
わかった、なら今回の被害者の内、希望者は登録名の変更を無料で行うよう、ギルドマスターに進言しておこう。
本来なら指名手配されていないかをチェックするために手数料が要るんだが、今日登録したばかりのお前さんらにはその必要も無いからな」
ギルドの担当者さん、納得してくれたらしい。
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