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第3話 手に入れた力は
しおりを挟む「ようやく、わかった、けど。
こんなのって、アリかよ」
宿屋で起きて、毎日恒例のステータス確認を行い、俺は呆然となっていた。
この世界に来てから35日くらい経った。
現在、レベルは5まで上がった。
攻撃魔法が使えない僧侶系がソロ活動でココまで来るのは大変だった。
弱いダンジョンモンスターをチマチマと狩って行って軍資金を集め。
武器屋では安物の鉄槍、防具屋では革鎧とスモールシールドを買い。
数日分の宿代をキープしながら、その他の金は回復薬とかに回し。
ゲームと違って、死んだら生き返れないと考えて、安全マージンに気を配り。
そんな日々を送りながらも、自分が別のゲームのパラメータを持っている可能性を探り続け。
そしてようやく、それが手に入った。
手に入ったのだが――
「よりにもよって、コレとはねぇ」
それは、ゲーム中ならともかく、リアルで使用するにはあまりにも使い勝手の悪い代物。
敵も味方もNPCも巻き込む、文字通りの無差別広範囲攻撃。
しかも攻撃したユニットの数に応じて、消耗が加算されて行くタイプなのだ。
ゲーム中でも、うっかり攻撃範囲内のユニット合計数が消耗値を上回ると、昏倒してしまう仕様。
ダンジョン内で昏倒などしたら、ダンジョンモンスターに襲われて落命するのは確実。
「まあいい。
俺の隠しパラメータが、あのゲームのモノだと判っただけでも良しとしよう。
けど、これからのスケジュール、見直さなくちゃならんな」
ホロウィンドウの情報を眺めながら、呟く。
登録名:コウタ=ドラグア
種族 :人族(男)
年齢 :15歳
レベル:5
職業 :僧侶系・治癒魔法師
カルマ:微悪
二つ名:なし
所属チーム:なし
習得魔法:
≪ヒール≫≪キュアポイズン≫≪キュアパラライズ≫
会得術式:
≪炎帝の陣≫≪雷帝の陣≫≪闇帝の陣≫≪地帝の陣≫≪光帝の陣≫
「習得魔法や獲得戦技ではなく、会得術式、ときたか。
しかもこのラインナップ。
間違いなく『封邪戦鬼-孤独な退魔師』のモノだよな。
なんだって西洋ファンタジー系RPGの世界に、こんな和風ファンタジーゲームのパラメータなんて持ち込ませたんだ?
しかもこれ、法力が表示されないんだが。
マジックパワーとかメンタルポイントが表示されないのと同じで、全部自分で消耗具合を体験して検証しろって事か?
気付かない場所にダンジョンモンスターが隠れている状態でこんなの使ったら、下手したら死ぬぞ?」
ゲーム中なら、攻撃範囲内のユニット数をチェックしてから発動するか否かを決定できた。
だから法力が切れそうだと思ったらキャンセルして、別の戦法が採れたのだけど。
この世界には、そういうのを数値化してくれる親切心は無いので、目測を誤るとエネルギーの過消費を起こすだろう。
モンスター1体につきどのくらい消耗するかの確認は、生死にかかわる問題だ。
「おっと、忘れていた。
会得術式が解禁されたって事は、もしかして、所有アイテムとかも在ったりするのかな?」
アイテムボックス、アイテムストレージ、道具袋、亜空間収納、と色々とまた試してみたが。
残念ながらそっちは存在しないのか、或いは存在しているけれど解放条件を満たしていないのか、それっぽい物が現れる様子は無かった。
「はぁ~、残念。
さて、今日からは術式の検証を始めないとな。
できれば、1匹ずつ増やしながら消耗度を検証して行きたいところだけど、そう上手くは行かないよな」
何のためにこの世界に送られたのか判らない。
今回の別ゲーム『封邪戦鬼-孤独な退魔師』の術式が使えるようになったのだって、何がトリガーになったのかが判らない。
その術式をこの世界で使って、どんな影響が出るかも判らない。
判らない事だらけで、頭が痛い。
◆
「さて、検証を始めるか」
ダンジョンの中でも、出来るだけダンジョンモンスターの出現頻度の低いポイントを拠点に据える。
運だよりになるが、ぶっ倒れても、疲労が回復するまでダンジョンモンスターの出現が無ければ、生還の可能性が上がるから。
仮拠点ポイントから少し離れた場所をうろつき、コボルト3匹とエンカウント。
「3匹くらいなら丁度いいか。
≪雷帝の陣≫、発動!」
自分を中心とした半径20メートルの範囲に、雷撃の雨が降る。
眼にダメージが来ないように左手を翳しながら使ったが、蛍光灯のチカチカ状態ほどの刺激しか感じなかったのは、自分の技に対する保護でも働いているのだろうか。
雷撃が収まった時、コボルトだったモノはひっくり返っており、塵になって魔石だけを残し消えた。
「消耗は――頭痛とかは無いな。
腹周りに軽い気持ち悪さを感じるくらいか。
このくらいなら10匹くらい行けるか?
いや、そういう駆け足が命取りだな。
慎重に慎重に」
ゲームの主人公プレイヤーは死んでも町で蘇生されたり、別キャラとして再出発できるのかも知れないが、追い剥ぎされて消された扱いのキャラになっている俺が死んだら復活できるか判らない。
「慎重に」を口癖のように繰り返しながら、
その後も、ゴブリン、オーク、ジャイアントバットなどを倒し。
ようやく俺がこの術式を使うたびに消費するモノを理解した。
「いや、まあ、理解は出来るけど。
消耗度も把握はし易いけれど。
これって、どうなのさ」
俺はまたもや、うんざり口調で呟いた。
滅多に遭遇しない、ジャイアントバット50匹ほどの大群に集られてしまい。
普段なら逃げるところだが、検証の最中だった事もあって、咄嗟に使ってしまった≪雷帝の陣≫。
この術式は攻撃範囲内に存在するユニットの〝数〟に応じて消耗が増える。
逆に言うと、相手がドラゴンだろうがベビースライムだろうが、1匹あたりに消費するコストは同じである。
棍棒を振り回すだけで倒せるような弱いモンスター相手では、エネルギーの無駄遣いである。
でもだからこそ、判った。
「消費しているのは、俺の体重、カロリー、内臓脂肪か」
50匹ものダンジョンモンスターに使ったせいで、ウェストサイズが一気に縮まり、ズボンと下着がずり落ちた事で、そのことに気付けた。
ソロで検証に当たっていて本当に良かった。
「気分が悪くなったり、疲労感が襲ってきたのは、体重が一気に減った事による反動か。
どおりで腹周りを中心に落ち着かなくなるわけだ」
ともあれ、ウェストサイズが消耗のバロメーターなら、ベルトの長さで警戒レベルを把握できそうではあった。
「でもそうなると、術式を沢山使うためには太らないといけないって事か?
元々が肥満気味な体型ではあったけれど、術式を使うたびに痩せるとなると、回復方法が問題だな。
食べてすぐに栄養になって脂肪になるワケじゃないし。
って、まさかギャグマンガみたいに食べたモノが即座に消化吸収されて太る、なんて事は……いや、あるかも知れないか」
リアルだったらあり得ない事も、半端にゲーム要素が適用されているこの世界では、可能性を否定し切れない。
「はぁ、服屋に寄ってウェストサイズの調整し易い服の調達が必要か。
そして少し多めの食事を摂って、すぐに太るかどうかの確認だな。
う~、出費が嵩むなぁ」
増えそうな出費を考えて、もう少し稼ぐ事にした。
幸いにして、攻撃術式を使うハードルは下がったので、ダンジョンモンスター狩りは楽になった。
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