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二刀を追う者、一刀をも得ず
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いつから、誰の戦う姿に憧れて、そうなったのかはもう思い出せないが、物心つく頃には二刀流に憧れ、小さな頃から木の枝を両手に持っては、騎士や冒険者のごっこ遊びに明け暮れていたものだった。
兄たちのように、父の後を継いで商人になることなど、考えたことも無かった。
剣を学び始めた頃、師匠に二刀流を目指したいと言ったら、半ば呆れ気味に、中途半端では何も身に付かない、まずは一刀を身に付けてからと言われた。
自分に二刀流は教えられないから、そこから先はお前の運次第だ、と。
二刀流に限らず、武の道には三つの壁というか節目があり、英雄豪傑と称される一流の冒険者や武芸者は、それを乗り越えたからこそ、そう呼ばれるに至ったということだ、と。
一つ目は、才能の有無、二刀流であれば、二刀を操る感覚や才能の芽が、自分(私)の中にあるか。
二つ目は、その才能を伸ばし、それを教えられるような師匠が見つかるか。見つからなければ、自分一人の力で研鑽するための、努力を続ける才能があるか。
師がいなければ、ここまで出来れば次の段階へ、と言う到達点や区切りのわからない手探りの状態で、一人努力を続けるということで、凡人には至難の業だという。
最初の剣の師匠の言葉は厳しかったが、頭ごなしの否定はされなかった。それは、私にとって救いだった、と今更に思う。
そして、最後の三つめは、実戦で使える武具を手に入れることができるか。
才能に恵まれ、研鑽を積んでも、自分に合った武器で、実戦に耐え得る物が無ければ、その先にその才能を生かした活躍の場は無い。
昔、師匠の弟子の一人に、強撃を極めた者が居たそうだ。両手剣での一撃で大木を切断できたそうだが、冒険者ギルドに登録して芽が出るまで、相当な時間がかかったらしい。
実際に、上級の魔物や、盾や鎧を使いこなす敵を相手にする段階になると、勝てはするものの、並の両手剣ではその一撃で壊れてしまうことが度々で、予備の両手剣を複数抱えてダンジョンに挑むとか、若い内の必要経費が馬鹿にならなかったそうだ。
迷宮探索で、古代の魔法のかかった両手使いの両刃斧を手に入れ、両手剣から両手斧に転向してから大活躍して、その両刃斧と同じ『破城鉞』という二つ名で呼ばれるようになったらしい。
って言うか、それ『破城鉞』のエピソードだったの? 今のギルドマスターの二つ名じゃなかったっけ?
何気に、師匠が師事した一昔前の剣豪・剣聖の話とか、話半分でも盛り過ぎだろうというエピソードばかりで、どこまで本当だかわからない。
それでも、二刀流を目指すからには両手で武器を使いこなさなければならないわけで、師匠はいろいろ考えてくれた。
稽古では、両手持ち片手持ち兼用の長剣と片手剣を使っていたが、両手での基本が出来た後は、主に片手での操作の熟練に重点を置いてくれた。
利き腕の右で片手剣が十分使えるようになると、左でも同じように扱えるまで訓練し、その次は剣を交互に持ち換えて、後には両手に剣を持っての訓練が始まった。
師匠は宣言した通り、二刀流は教えることができないと、あくまで両手に武器を取って、前後左右からの攻撃に対応できるように、両手の武器が同時に別々の動きができるようには鍛えてくれた。
ただし、その到達点は、両手利きが同時に左右別動作ができるという程度のものであって、両手で二倍の手数ではあっても、両手での攻撃が連携あるいは一体化する二刀流では無い。
後は実戦に耐えられる技術とするべく、いろんなことを試してみた。
片手剣を小剣や短剣に換え、その後は片手で扱える戦斧、月鎌、円盾、槌矛、試せる武器を次々と持ち換え、それぞれでの戦い方の変化も身に付けた。
左右を別の武器にして、それぞれの組み合わせの長短も考えた。
十五で冒険者ギルドに初登録した時、長剣と革鎧は、実家の父と兄たちが準備してくれたが、師匠は魔法のかかった武器ではないものの、愛用していた片手剣と短剣の二本を私にくれた。
質のいい武器で、自力で稼いで揃えようとすれば、駆け出し冒険者だった私には一年以上かかったに違いない。
厚意に応えるべく、それからもただひたすら、訓練を続け、実戦に挑み続けた。
三年後には、私も中堅と呼ばれるレベルの冒険者になっていた。
迷宮探索で魔法の武具も、片手剣、短剣、戦斧と手に入れ、それらを組み合せた両手持ちの戦いも、身に付けた。
だが、結局、二刀流にまでは至らず、両手利きの二刀遣い程度にしか現状は成れていない。それでも、鍛え続け、実戦での研鑽を重ねるだけのことだ。
仲間たちが、今朝も次の迷宮探索への誘いに来る。
「そろそろ、出るぜ『四連撃』」
「その二つ名は嫌味にしか聞こえないから却下だと言ったろ。目指してるのは『二刀流』なんだから」
私は苦笑しながら、朝食のテーブルから立ち上がった。
今日も、ただ自分の壁に挑み続けるだけだ。
兄たちのように、父の後を継いで商人になることなど、考えたことも無かった。
剣を学び始めた頃、師匠に二刀流を目指したいと言ったら、半ば呆れ気味に、中途半端では何も身に付かない、まずは一刀を身に付けてからと言われた。
自分に二刀流は教えられないから、そこから先はお前の運次第だ、と。
二刀流に限らず、武の道には三つの壁というか節目があり、英雄豪傑と称される一流の冒険者や武芸者は、それを乗り越えたからこそ、そう呼ばれるに至ったということだ、と。
一つ目は、才能の有無、二刀流であれば、二刀を操る感覚や才能の芽が、自分(私)の中にあるか。
二つ目は、その才能を伸ばし、それを教えられるような師匠が見つかるか。見つからなければ、自分一人の力で研鑽するための、努力を続ける才能があるか。
師がいなければ、ここまで出来れば次の段階へ、と言う到達点や区切りのわからない手探りの状態で、一人努力を続けるということで、凡人には至難の業だという。
最初の剣の師匠の言葉は厳しかったが、頭ごなしの否定はされなかった。それは、私にとって救いだった、と今更に思う。
そして、最後の三つめは、実戦で使える武具を手に入れることができるか。
才能に恵まれ、研鑽を積んでも、自分に合った武器で、実戦に耐え得る物が無ければ、その先にその才能を生かした活躍の場は無い。
昔、師匠の弟子の一人に、強撃を極めた者が居たそうだ。両手剣での一撃で大木を切断できたそうだが、冒険者ギルドに登録して芽が出るまで、相当な時間がかかったらしい。
実際に、上級の魔物や、盾や鎧を使いこなす敵を相手にする段階になると、勝てはするものの、並の両手剣ではその一撃で壊れてしまうことが度々で、予備の両手剣を複数抱えてダンジョンに挑むとか、若い内の必要経費が馬鹿にならなかったそうだ。
迷宮探索で、古代の魔法のかかった両手使いの両刃斧を手に入れ、両手剣から両手斧に転向してから大活躍して、その両刃斧と同じ『破城鉞』という二つ名で呼ばれるようになったらしい。
って言うか、それ『破城鉞』のエピソードだったの? 今のギルドマスターの二つ名じゃなかったっけ?
何気に、師匠が師事した一昔前の剣豪・剣聖の話とか、話半分でも盛り過ぎだろうというエピソードばかりで、どこまで本当だかわからない。
それでも、二刀流を目指すからには両手で武器を使いこなさなければならないわけで、師匠はいろいろ考えてくれた。
稽古では、両手持ち片手持ち兼用の長剣と片手剣を使っていたが、両手での基本が出来た後は、主に片手での操作の熟練に重点を置いてくれた。
利き腕の右で片手剣が十分使えるようになると、左でも同じように扱えるまで訓練し、その次は剣を交互に持ち換えて、後には両手に剣を持っての訓練が始まった。
師匠は宣言した通り、二刀流は教えることができないと、あくまで両手に武器を取って、前後左右からの攻撃に対応できるように、両手の武器が同時に別々の動きができるようには鍛えてくれた。
ただし、その到達点は、両手利きが同時に左右別動作ができるという程度のものであって、両手で二倍の手数ではあっても、両手での攻撃が連携あるいは一体化する二刀流では無い。
後は実戦に耐えられる技術とするべく、いろんなことを試してみた。
片手剣を小剣や短剣に換え、その後は片手で扱える戦斧、月鎌、円盾、槌矛、試せる武器を次々と持ち換え、それぞれでの戦い方の変化も身に付けた。
左右を別の武器にして、それぞれの組み合わせの長短も考えた。
十五で冒険者ギルドに初登録した時、長剣と革鎧は、実家の父と兄たちが準備してくれたが、師匠は魔法のかかった武器ではないものの、愛用していた片手剣と短剣の二本を私にくれた。
質のいい武器で、自力で稼いで揃えようとすれば、駆け出し冒険者だった私には一年以上かかったに違いない。
厚意に応えるべく、それからもただひたすら、訓練を続け、実戦に挑み続けた。
三年後には、私も中堅と呼ばれるレベルの冒険者になっていた。
迷宮探索で魔法の武具も、片手剣、短剣、戦斧と手に入れ、それらを組み合せた両手持ちの戦いも、身に付けた。
だが、結局、二刀流にまでは至らず、両手利きの二刀遣い程度にしか現状は成れていない。それでも、鍛え続け、実戦での研鑽を重ねるだけのことだ。
仲間たちが、今朝も次の迷宮探索への誘いに来る。
「そろそろ、出るぜ『四連撃』」
「その二つ名は嫌味にしか聞こえないから却下だと言ったろ。目指してるのは『二刀流』なんだから」
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