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「あたし」に染められて…
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カラカラに干乾びた僕の身体が吊り上げられ
ゆっくりとピンク色の液体に満たされたバスタブに降ろされてゆく
液面に触れた場所からその液体が染み込んでくるようだ
やがて僕の身体はその中に漬け込まれていった
全身にその液体が染み込んでくる
液体が僕をピンク色に染め上げてゆく
何もかもがピンク色に満たされる
ピンク色で上書きされてゆく
僕の「存在」そのものまでも⋯
「起きなさい。」
優しく声を掛けられた
瞼を上げる
僕の目に「彼」の顔が焼き付く
「おはよう♪」
その声に
「おはようございます⋯」
と応えた僕の声は⋯
上体を起こした
全裸ではなく、柔らかな布地に包まれていた
パジャマとは違うようだ
透けるような生地が僕の腕を透かす
手首がゴムで締り、その先にはか細い指をした手があった
それは僕の意思に従い、開いたり閉じたりする
「立てるかな? 無理はしなくて良いよ。」
僕は向きを変え、ベッドから脚を降ろした
素足が床の感触を伝えてくる
重力を感じる
立ち上がる
ファサリと脚に触れる布地…
それはネグリジェの裾であろう
これは僕自身の身体ではないのだ
華奢で繊細な女の子の肉体…
僕の声が甲高く響いた時からそう意識せざるを得なかった
今…僕は「女の子」として存在している
目の前の男はこの娘の…「僕」の父親だった
「大丈夫。自分で歩けるわ。」
上書きされた記憶を辿り、言葉を紡いだ
制服に着替えた
「僕」の学校の女子が着ていたものと同じデザインだった
アクセサリーがぶら下がる鞄を手にする
茶色のローファーを穿いて扉を開けた
「おはよう♪」
女の子が声を掛けてきた
彼女は「あたし」の親友であると認識していた
「おは…」と彼女に、「いってきます」と「パパ」に声を掛けた
上書きされた記憶に任せて歩き始めた
学校は「僕」自身の通っていた学校そのものだった
ふらふらと「自分」の教室に向かっていた
ドアを開け、「自分」の席を探す
(見つけた…!!ん…)
その机には花瓶が置かれ、白い花が飾られていた
「彼…知り合い? あんたが休んでいる間に死んじゃったらしいよ」
「彼」…
今の「あたし」には何の関係もない男の子でしかないのだ
それは「あたし」が、すでに「僕」ではない事を物語っていた
僕はもう元には戻れないのだ
あたしは「あたし」として生きていくしかないのだろう
何故かあたしの目から涙が落ちていた
あたしはスカートのポケットから出したハンカチでそれを拭っている
そんな所にハンカチがあったのだと、後から思い出した
全てが自然と動いてゆく
「僕」はもう「あたし」だった…
ゆっくりとピンク色の液体に満たされたバスタブに降ろされてゆく
液面に触れた場所からその液体が染み込んでくるようだ
やがて僕の身体はその中に漬け込まれていった
全身にその液体が染み込んでくる
液体が僕をピンク色に染め上げてゆく
何もかもがピンク色に満たされる
ピンク色で上書きされてゆく
僕の「存在」そのものまでも⋯
「起きなさい。」
優しく声を掛けられた
瞼を上げる
僕の目に「彼」の顔が焼き付く
「おはよう♪」
その声に
「おはようございます⋯」
と応えた僕の声は⋯
上体を起こした
全裸ではなく、柔らかな布地に包まれていた
パジャマとは違うようだ
透けるような生地が僕の腕を透かす
手首がゴムで締り、その先にはか細い指をした手があった
それは僕の意思に従い、開いたり閉じたりする
「立てるかな? 無理はしなくて良いよ。」
僕は向きを変え、ベッドから脚を降ろした
素足が床の感触を伝えてくる
重力を感じる
立ち上がる
ファサリと脚に触れる布地…
それはネグリジェの裾であろう
これは僕自身の身体ではないのだ
華奢で繊細な女の子の肉体…
僕の声が甲高く響いた時からそう意識せざるを得なかった
今…僕は「女の子」として存在している
目の前の男はこの娘の…「僕」の父親だった
「大丈夫。自分で歩けるわ。」
上書きされた記憶を辿り、言葉を紡いだ
制服に着替えた
「僕」の学校の女子が着ていたものと同じデザインだった
アクセサリーがぶら下がる鞄を手にする
茶色のローファーを穿いて扉を開けた
「おはよう♪」
女の子が声を掛けてきた
彼女は「あたし」の親友であると認識していた
「おは…」と彼女に、「いってきます」と「パパ」に声を掛けた
上書きされた記憶に任せて歩き始めた
学校は「僕」自身の通っていた学校そのものだった
ふらふらと「自分」の教室に向かっていた
ドアを開け、「自分」の席を探す
(見つけた…!!ん…)
その机には花瓶が置かれ、白い花が飾られていた
「彼…知り合い? あんたが休んでいる間に死んじゃったらしいよ」
「彼」…
今の「あたし」には何の関係もない男の子でしかないのだ
それは「あたし」が、すでに「僕」ではない事を物語っていた
僕はもう元には戻れないのだ
あたしは「あたし」として生きていくしかないのだろう
何故かあたしの目から涙が落ちていた
あたしはスカートのポケットから出したハンカチでそれを拭っている
そんな所にハンカチがあったのだと、後から思い出した
全てが自然と動いてゆく
「僕」はもう「あたし」だった…
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