ドレスを着たら…

奈落

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ドレスを着たら…

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「コレを着るのか?」
俺が手にしていたのは「ドレス」だった。

ここは「電子研究会」…その昔はアンプとかラジオとかを組み立て、その後マイコンとかいう初期のパソコンを、そしてパソコン通信からネット配信に填まり込み、現在はメタバース。
今はオリジナルアバタの作成に熱中していた。
「どうせなら可愛い女の子が良いね♪」
となったが、着ている服の動きの不自然さがなかなか解消できなかった。
「実物を確認するしかないね」
とドレスが調達されたのだ。
が…
研究会のメンバーは、いわゆるオタク体型ばかりである。女物の服が入るのは小柄で痩せてる…俺以外にはいなかったということだ…

「電子研究会のタメだ!!」
と後押しされる。
「ちゃんと下着も用意してあるからね♪」
と追い討ちを掛ける奴もいる。
(ここまできたら…)
と部室の隅を暗幕で仕切った更衣室に入った。
服を…言われたとおり下着まで脱いだ。
最初に裸のまま全身タイツ様のものに手足を入れた。
その上から女性用の下着を着けてゆく。
不思議と股間の出っ張りを気にすることなく、下半身にピタリとショーツが貼り付いた。
ブラジャーは流石に後ろ手でホックを止められないので、前で止めてから後ろに回してストラップを肩に掛けた。
全身タイツ様のモノに部分的に厚みを持たせているのか、ほんのりと膨らんだ胸がブラのカップに収まっていた。
ドレスのファスナーを下ろした背中から脚を入れ、両腕を通した。
が、これ以上は独りでは無理なようだ。
「誰か、背中上げてくれ。」
と声を掛けると暗幕の外ではじゃんけんが始まっていた。
しばらくしてじゃんけんの勝者であろう一人が入ってきてファスナーを上げると慌てて外に出ていった。
いつの間にか伸びた髪を手櫛で撫で付ける。
「終わったよ。」と言って違和感を感じたがそのまま更衣室の外に出る。
「おお!!」
とどよめきが起きる。
「本当にお前なのか?」と聞かれ
「そうよ、あたし以外の誰だっていうの?」
そう言って違和感の正体に気付いた。
(あたしの声じゃない!!あたしの声は…)
と思った所で、それが元からのあたしの声であると思い出した。
(違和感て何だったんだろう?)
そう思うと違和感自体が気のせいに思える。

「さあ、アバタの調整再開しようぜ。」
と、部長が声を上げた。
あたしはいつものように手首と足首にセンサーを装着した。
バミに立つと四方に設置したカメラが動き出す。
「じゃあ、一回転してみて。」
その声に応じてその場で回ってみる。
スカートがひらりと空気を孕む。
「もう少し勢いつけて」
「途中で急停止してみて」
「跳んでみて」
言われるがままに体を動かす。
その動きに応じてスカートが舞い踊る。
疲れが見えてきた頃「OK」の声が掛かった。
「着替えて良いよ。」
と言われ、再び更衣室に戻った。
背中のファスナーを下ろしドレスを脱ぐと綺麗に畳んでおいた。
ソックスを履き、膝の上まで引き上げた。
ブラウスを着て首のリボンを止める。
制服のスカートを穿き腰周りを折り込んで丈を調整する。
カチューシャで髪を留めれば元の「あたし」に戻って…

「な、何よ!!どうしてここに女子の制服があるのよ?」
「どうしてって、お前が着ていたやつだろ?」
「あたしが?」
記憶を辿れば確かに「あたし」が着ていたものだし、彼の頼みで女っ気のない電子研の手伝いに来たんだっけ…
「あとはお前らで出来るだろう?早速お礼をしなくちゃね♪」
部長である彼が部員にそう言って、あたしの腕を取った♪
「お礼って?」
「言ってただろう。駅前の店でスイーツ奢るって。」
確かにそんな約束したっけ?
なにより、スイーツを奢ってもらえるなら♪
「じゃあね、バイバ~イ♪」
あたしは部員達に手を振って部室を後にした。


(一方部室では…)
「本当、あいつ女になっちゃったよ。」
「アレで先輩達が彼女を造ったって噂も本物だったんだな。」
「僕じゃなくて良かったよ。」
「俺も彼女造りたいな…」
「だ、だめだよ。僕を見ながらそんな事言わないでくれよ!!」

数日後、彼女が欲しいと言っていた部員が女の子を連れて歩いていたのは、また別の話…
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