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フェニックス
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激しい揺れ、不快な地響きとともに、目の前に火口が開いていた。
確かにここは火山帯の一角であり、地熱を計測するために建てられた施設ではある。
が最寄りの火口からは十分に離れており、断層やマグマ溜まりの位置関係から充分に安全な場所に建てられていた筈である。
とはいえ、現実には目の前に火口開き噴煙を上げているのだ。
ドーム状の施設は耐核シェルターを元に作られている。
火山灰に埋もれても半年は生存できる用意があった。
が、今の状況は想定を越えている。
火口の裂け目が広がっている。
施設を挟み込み、やがてはドームごと呑み込んでしまいそうな勢いがあった。
確かにドームは強固である。
このまま火口に呑み込まれても、かなり長い時間を耐えきれる筈だ。
が、そこからの救出は不可能である。
オレが生き延びる為には火口に呑み込まれる前に脱出する必要がある。
が…
飛び散るマグマ、降りしきる噴石、ただでさえ全てを焼き尽くす高温の中、どうやれば脱出できるのだっ!!
そんなオレの目の端に非常用キットの箱が映っていた。
通常は宇宙船に常備されている非常用キットには、極限での状態でもなんとか生き延びられる手段があると聞く。
非常用キットの蓋を開けると、そこには様々なアイテムが詰まっていた。
オレの目に止まったのは肉体強化薬だった。
これを使えば一時間近くは無呼吸で宇宙空間を活動できると聞いていた。
そしてそのバリエーションなのだろうか、水中活動用や強放射線・有毒ガス帯活動用などがある。
オレが手にしたのは耐火性能に特化した肉体強化薬だ。
本当の非常時にのみ使用が認められるとの注意書きがあった。
が、今コレを使わずして何が「非常時」だと言うのであろう。
オレは無針注射器から薬液を血管内に送り込んだ…
ジワジワと身体が熱を帯びてきた。
とはいえ、その熱さをオレは感じることはなかった。
ボッ!!と炎が立ち上がった。
着ていた服が燃え上がり、消し炭となって足元に落ちていった。
強化された肉体に衣服が耐えられなかったようだ。
時を経ずして、部屋の中もまた炎に包まれていった。
オレの肉体がどの程度外の環境に耐えられるかは未知数である。
が、このままここに留まっている理由もなかった。
既に研究所内の機能は停止していた。
扉に触れても開こうとはしない…が、触れた所から扉の素材が解け落ちていった。
いくつかの扉を潜り抜け、外界に繋がる最後の扉の前に立った。
核の直撃にも耐えられるとの扉である。流石にオレが触れただけで解け落ちることはなかった。
が、扉を開く機構が停止してしまっている。
あとは力ずくで開くしかない。
オレは反動をつけ、扉に体当たりした。
三度目で扉がきしんだ。
十数回繰り返すと、隙間ができていた。
そこに指を掛け押し開いた。
辺りは噴煙に包まれていた。
研究所の周囲は噴き出すマグマに囲まれているようだ。
バラバラと噴石が落ちてくるが、どうということはなかった。
しかし…
周囲を取り囲む火口の裂け目がどれだけの幅をもっているかは想像もできない。
火炎の壁を飛び越えたとしても、その下に大地のある保証はないのだ。
鳥のように空を飛べでもすれば…
そんな、叶いもしない望みを口にした…その時
オレの背中から肩にかけてムズムズする感じがした。
そしてそれは腕全体に広がる…
オレの腕に炎を形にしたような羽毛が生えていた。
羽毛が全身を覆うとともに、腕は鳥の翼に変化していた。
足も細くなり、鳥の足のようになる。
試しに羽ばたいてみた。
フッと身体が浮き上がった。
(飛べるのか?)
俺は上空を見上げた。
噴煙に包まれてはいるが、その先には青い空がある筈…
力尽きた俺は少し離れた場所にある田圃の中に落ちていった。
熱が引いてゆくと炎の色の羽毛は白く変わっていた。
今のオレの姿は瀕死の白鳥…否、鶴のように見えるかもしれない。
もし、オレが人間の姿を取り戻せたら、昔話のように機織りだってしてやっても良い…
そして、意識を失ったオレはヒトの姿を取り戻していった。
直前にイメージした…若い娘の姿に…
確かにここは火山帯の一角であり、地熱を計測するために建てられた施設ではある。
が最寄りの火口からは十分に離れており、断層やマグマ溜まりの位置関係から充分に安全な場所に建てられていた筈である。
とはいえ、現実には目の前に火口開き噴煙を上げているのだ。
ドーム状の施設は耐核シェルターを元に作られている。
火山灰に埋もれても半年は生存できる用意があった。
が、今の状況は想定を越えている。
火口の裂け目が広がっている。
施設を挟み込み、やがてはドームごと呑み込んでしまいそうな勢いがあった。
確かにドームは強固である。
このまま火口に呑み込まれても、かなり長い時間を耐えきれる筈だ。
が、そこからの救出は不可能である。
オレが生き延びる為には火口に呑み込まれる前に脱出する必要がある。
が…
飛び散るマグマ、降りしきる噴石、ただでさえ全てを焼き尽くす高温の中、どうやれば脱出できるのだっ!!
そんなオレの目の端に非常用キットの箱が映っていた。
通常は宇宙船に常備されている非常用キットには、極限での状態でもなんとか生き延びられる手段があると聞く。
非常用キットの蓋を開けると、そこには様々なアイテムが詰まっていた。
オレの目に止まったのは肉体強化薬だった。
これを使えば一時間近くは無呼吸で宇宙空間を活動できると聞いていた。
そしてそのバリエーションなのだろうか、水中活動用や強放射線・有毒ガス帯活動用などがある。
オレが手にしたのは耐火性能に特化した肉体強化薬だ。
本当の非常時にのみ使用が認められるとの注意書きがあった。
が、今コレを使わずして何が「非常時」だと言うのであろう。
オレは無針注射器から薬液を血管内に送り込んだ…
ジワジワと身体が熱を帯びてきた。
とはいえ、その熱さをオレは感じることはなかった。
ボッ!!と炎が立ち上がった。
着ていた服が燃え上がり、消し炭となって足元に落ちていった。
強化された肉体に衣服が耐えられなかったようだ。
時を経ずして、部屋の中もまた炎に包まれていった。
オレの肉体がどの程度外の環境に耐えられるかは未知数である。
が、このままここに留まっている理由もなかった。
既に研究所内の機能は停止していた。
扉に触れても開こうとはしない…が、触れた所から扉の素材が解け落ちていった。
いくつかの扉を潜り抜け、外界に繋がる最後の扉の前に立った。
核の直撃にも耐えられるとの扉である。流石にオレが触れただけで解け落ちることはなかった。
が、扉を開く機構が停止してしまっている。
あとは力ずくで開くしかない。
オレは反動をつけ、扉に体当たりした。
三度目で扉がきしんだ。
十数回繰り返すと、隙間ができていた。
そこに指を掛け押し開いた。
辺りは噴煙に包まれていた。
研究所の周囲は噴き出すマグマに囲まれているようだ。
バラバラと噴石が落ちてくるが、どうということはなかった。
しかし…
周囲を取り囲む火口の裂け目がどれだけの幅をもっているかは想像もできない。
火炎の壁を飛び越えたとしても、その下に大地のある保証はないのだ。
鳥のように空を飛べでもすれば…
そんな、叶いもしない望みを口にした…その時
オレの背中から肩にかけてムズムズする感じがした。
そしてそれは腕全体に広がる…
オレの腕に炎を形にしたような羽毛が生えていた。
羽毛が全身を覆うとともに、腕は鳥の翼に変化していた。
足も細くなり、鳥の足のようになる。
試しに羽ばたいてみた。
フッと身体が浮き上がった。
(飛べるのか?)
俺は上空を見上げた。
噴煙に包まれてはいるが、その先には青い空がある筈…
力尽きた俺は少し離れた場所にある田圃の中に落ちていった。
熱が引いてゆくと炎の色の羽毛は白く変わっていた。
今のオレの姿は瀕死の白鳥…否、鶴のように見えるかもしれない。
もし、オレが人間の姿を取り戻せたら、昔話のように機織りだってしてやっても良い…
そして、意識を失ったオレはヒトの姿を取り戻していった。
直前にイメージした…若い娘の姿に…
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