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一年後のハロウィーン
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「トリックオアトリート♪」
目の前の扉が開かれると、ボクはそう声をあげた。
「あら♪可愛い魔女さんね。」
出てきたのは温和な雰囲気のおばあさんだった。
「このキャンディーで良いかしら?」
と透明な袋にキャンディーを詰めて可愛らしいリボンで結ばれたものを差し出してきた。
「っあ、うん。ありがとう♪」
ボクはそう言ってキャンディーを受け取ると次の家に向かった。
何で…
何でイタズラさせてくれないの?
この一年、ボクはこの「イタズラが許される」ことだけを待ち侘びていたのに…
それは丁度一年前のハロウィーンの晩…
コンコンと「俺」の部屋のドアを叩く音がした。
(何だろう?)とあまり考えもせずにドアを開くと
「トリックオアトリート♪」
の声とともに魔女っ娘が愛らしく微笑んでいた。
「何?」
と聞くと
「トリックオアトリートだよ。お菓子くれなきゃイタズラしちゃうって♪」
「何だよそれ?」
「ハロウィーンって知らないの?」
勿論、その時の俺は何も知らなかったのだ。
だから…
「イタズラされるのは嫌だが、お前にやれるようなお菓子などもないぞ。」
「だったらイタズラするしかないね♪」
そう言って魔女っ娘は俺に魔法を掛けた。
いつの間にか見下ろしていた魔女っ娘の顔が俺と同じ高さにあった。
「ボクに何をしたの?」
と俺の口からは可愛らしい声が零れた。
俺は「俺に何をしやがったんだ!!」と叫んだ筈なのに…
「これで、貴女もあたしと同じ魔女っ娘ね♪」
そう言われ、自分を見下ろすと彼女とは色違いのヒラヒラのドレスを着せられていた。
そう…腰から太股にかけてスカートが広がっている?
「じゃあ、一緒に隣のおうちに行かない?お菓子を沢山貰えるわよ♪」
とボクの手を引いて連れ出そうとする。
「イヤッ!!」
ボクはそう叫んでいた。
彼女の手を振り解き、ドアを閉めた。
ベッドに倒れ込んだ。
ベッドの大きさに今の自分がさっきの魔女っ娘と同じくらい小さくなってしまったことを物語っていた。
何故かボクは大声で泣いていた。
その声はさっきまでの「俺」の声ではなく、女の子の声にしか聞こえてこない。
そのまま、ボクは寝入ってしまっていた。
翌朝、目が覚めるが、ボクは「魔女っ娘」のままだった。
鏡を覗き込み「今」の自分の顔を確認する。
そこに「俺」の面影など一切ない。
だれがこの「魔女っ娘」を見てボクだと認識してくれるというのだろうか?
どうやって「ボク」の身分を証明すれば良い?
ボクはカバン…本来は男物の筈がピンク色の可愛らしいデザインに変わっていた…から身分証を取り出した。
(ウソだろ?!)
身分証の写真は、今の「ボク」の顔に変わっていたのだ。
(どういう事だ?)
スマホに保存されていた写真を開いてみると、そのどれもが「ボク」になっている。
(他の写真は?)
ボクは本棚の奥から昔のアルバムを掘り出してきた。
(そんな…)
アルバムを開くと「俺」の場所には「魔女っ娘」のボクが写っていた。
(写真だけなのだろうか?)
おそるおそる親友に電話してみた。
声が変わっているにもかかわらず、彼はボクを認識していた。
そして、ボクの容姿を言わせてみると、現在の「ボク」と寸分変わらぬ容姿を伝えてきた。
親にも電話してみたが、その答えは親友のものと同じだった。
つまり、「俺」を知る誰もがボクが昔から「魔女っ娘」であったと認識しているとわかった。
そう…「魔女っ娘」なのだ。
彼等はボクが魔法を使えると言っていた。
確かに魔法は使えた。
しかし、試してみた中で分かったことは…
・力の強い魔法は「誰かの為」にならないと使えない
・自分自身に使った魔法は即に効果が失われる
→よって、ボク自身を「俺」に戻すことは不可能である
しかし、あのハロウィーンの日、ボクはこの姿にされたのだ。
かなり影響力のある魔法である。
それは到底「誰かの為」のものではない。
単なるイタズラであった筈だ。
一つの可能性として考えられるのは…ハロウィーンの晩、
「イタズラ」が許容されたことで、ボクを魔女っ娘にし、それを世界に認識させた?
ハロウィーンの日には制限を超えて魔法が使えるのではないだろうか。
ボクを「俺」に戻すことも可能な筈!!
そして今日、ハロウィーンを迎えてボクはイチバンの魔法を発した!!
ボクを「俺」に戻す!!
自分自身に向けて…
だが、それは一瞬であった。
確かにボクは「俺」に戻れていた。が、それは一瞬の事だった。
(夜を待つ必要があるのか?)
ボクは夜を待った。
そして魔法を使う…が、再びボクは魔女っ娘に戻っていた。
(イタズラが許されていないからか?)
ボクは近くの家を一軒一軒廻っていった。
「トリックオアトリート♪」
そう言うと、皆はニコニコしてボクにお菓子を渡してくれる。
何で…
何でイタズラを許してくれないの?
コンコンとボクはその部屋のドアを叩いた。
ドアを開く…
「トリックオアトリート♪」
とボクが言うと
「何?」
とその男は聞き返した
「トリックオアトリートだよ。お菓子くれなきゃイタズラしちゃうって♪」
「何だよそれ?」
「ハロウィーンって知らないの?」
その男は何も知らないようだ♪
「イタズラされるのは嫌だが、お前にやれるようなお菓子などもないぞ。」
男はそう言った。
(ヤッタ!!)
「だったらイタズラするしかないね♪」
ボクはそう言ってコレとばかりに魔法を発した!!
目の前の扉が開かれると、ボクはそう声をあげた。
「あら♪可愛い魔女さんね。」
出てきたのは温和な雰囲気のおばあさんだった。
「このキャンディーで良いかしら?」
と透明な袋にキャンディーを詰めて可愛らしいリボンで結ばれたものを差し出してきた。
「っあ、うん。ありがとう♪」
ボクはそう言ってキャンディーを受け取ると次の家に向かった。
何で…
何でイタズラさせてくれないの?
この一年、ボクはこの「イタズラが許される」ことだけを待ち侘びていたのに…
それは丁度一年前のハロウィーンの晩…
コンコンと「俺」の部屋のドアを叩く音がした。
(何だろう?)とあまり考えもせずにドアを開くと
「トリックオアトリート♪」
の声とともに魔女っ娘が愛らしく微笑んでいた。
「何?」
と聞くと
「トリックオアトリートだよ。お菓子くれなきゃイタズラしちゃうって♪」
「何だよそれ?」
「ハロウィーンって知らないの?」
勿論、その時の俺は何も知らなかったのだ。
だから…
「イタズラされるのは嫌だが、お前にやれるようなお菓子などもないぞ。」
「だったらイタズラするしかないね♪」
そう言って魔女っ娘は俺に魔法を掛けた。
いつの間にか見下ろしていた魔女っ娘の顔が俺と同じ高さにあった。
「ボクに何をしたの?」
と俺の口からは可愛らしい声が零れた。
俺は「俺に何をしやがったんだ!!」と叫んだ筈なのに…
「これで、貴女もあたしと同じ魔女っ娘ね♪」
そう言われ、自分を見下ろすと彼女とは色違いのヒラヒラのドレスを着せられていた。
そう…腰から太股にかけてスカートが広がっている?
「じゃあ、一緒に隣のおうちに行かない?お菓子を沢山貰えるわよ♪」
とボクの手を引いて連れ出そうとする。
「イヤッ!!」
ボクはそう叫んでいた。
彼女の手を振り解き、ドアを閉めた。
ベッドに倒れ込んだ。
ベッドの大きさに今の自分がさっきの魔女っ娘と同じくらい小さくなってしまったことを物語っていた。
何故かボクは大声で泣いていた。
その声はさっきまでの「俺」の声ではなく、女の子の声にしか聞こえてこない。
そのまま、ボクは寝入ってしまっていた。
翌朝、目が覚めるが、ボクは「魔女っ娘」のままだった。
鏡を覗き込み「今」の自分の顔を確認する。
そこに「俺」の面影など一切ない。
だれがこの「魔女っ娘」を見てボクだと認識してくれるというのだろうか?
どうやって「ボク」の身分を証明すれば良い?
ボクはカバン…本来は男物の筈がピンク色の可愛らしいデザインに変わっていた…から身分証を取り出した。
(ウソだろ?!)
身分証の写真は、今の「ボク」の顔に変わっていたのだ。
(どういう事だ?)
スマホに保存されていた写真を開いてみると、そのどれもが「ボク」になっている。
(他の写真は?)
ボクは本棚の奥から昔のアルバムを掘り出してきた。
(そんな…)
アルバムを開くと「俺」の場所には「魔女っ娘」のボクが写っていた。
(写真だけなのだろうか?)
おそるおそる親友に電話してみた。
声が変わっているにもかかわらず、彼はボクを認識していた。
そして、ボクの容姿を言わせてみると、現在の「ボク」と寸分変わらぬ容姿を伝えてきた。
親にも電話してみたが、その答えは親友のものと同じだった。
つまり、「俺」を知る誰もがボクが昔から「魔女っ娘」であったと認識しているとわかった。
そう…「魔女っ娘」なのだ。
彼等はボクが魔法を使えると言っていた。
確かに魔法は使えた。
しかし、試してみた中で分かったことは…
・力の強い魔法は「誰かの為」にならないと使えない
・自分自身に使った魔法は即に効果が失われる
→よって、ボク自身を「俺」に戻すことは不可能である
しかし、あのハロウィーンの日、ボクはこの姿にされたのだ。
かなり影響力のある魔法である。
それは到底「誰かの為」のものではない。
単なるイタズラであった筈だ。
一つの可能性として考えられるのは…ハロウィーンの晩、
「イタズラ」が許容されたことで、ボクを魔女っ娘にし、それを世界に認識させた?
ハロウィーンの日には制限を超えて魔法が使えるのではないだろうか。
ボクを「俺」に戻すことも可能な筈!!
そして今日、ハロウィーンを迎えてボクはイチバンの魔法を発した!!
ボクを「俺」に戻す!!
自分自身に向けて…
だが、それは一瞬であった。
確かにボクは「俺」に戻れていた。が、それは一瞬の事だった。
(夜を待つ必要があるのか?)
ボクは夜を待った。
そして魔法を使う…が、再びボクは魔女っ娘に戻っていた。
(イタズラが許されていないからか?)
ボクは近くの家を一軒一軒廻っていった。
「トリックオアトリート♪」
そう言うと、皆はニコニコしてボクにお菓子を渡してくれる。
何で…
何でイタズラを許してくれないの?
コンコンとボクはその部屋のドアを叩いた。
ドアを開く…
「トリックオアトリート♪」
とボクが言うと
「何?」
とその男は聞き返した
「トリックオアトリートだよ。お菓子くれなきゃイタズラしちゃうって♪」
「何だよそれ?」
「ハロウィーンって知らないの?」
その男は何も知らないようだ♪
「イタズラされるのは嫌だが、お前にやれるようなお菓子などもないぞ。」
男はそう言った。
(ヤッタ!!)
「だったらイタズラするしかないね♪」
ボクはそう言ってコレとばかりに魔法を発した!!
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