HARLEQUIN

マルエージング鋼

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Bizarre Youth

1話

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 ━━2018年6月28日━━
 ━━アメリカ合衆国 デトロイト州━━

 草木も眠る丑三つ時が過ぎて針葉樹が生い茂る林の中で、1台のジープが異様に舗装された一本道を走っている。しかしジープは法定速度を守っておらず、そして後ろに付いてくる他の三台のジープも同じように法定速度を守っていなかった。

 そして三台のジープの助手席から、サブマシンガンの銃撃音が響く。相手の狙いはタイヤであり、目の前のジープの走行を止めようとする。何とか蛇行運転を続けていく内に弾を回避し続けているジープは、遂に開けた場所へと辿り着く。

 途中遭遇する銃を持った者が、そのジープに向けて連射していく。銃弾を受けながらも丁字路に差し掛かると右へと曲がり、次に左へ曲がってゲートバーを壊して逃げていく。

 ふと、ジープを運転している男が後部座席にあるに目を向ける。カプセルに閉じ込められている液体のようだが、ヤケに粘着性が高そうなのが特徴的である。

 その液体らしきものが、ペタと自身の身体を伸ばしてガラスに一つだけ張り付く。揺れているが、その部分だけ揺れによって動く気配は無かった。

 そしてここから、時は進んでいく───




 ──2年後 2020年7月15日
 ━━ニューヨーク州━━

 ──ピピピピピッ──ピピピピピッ──ピピピピピッ──

 画面が透明なスマホタイプの携帯【リツウェッド】のアラームが鳴っていると、ゆっくりとそちらに手が伸ばされ取った。その当の本人は眠た気な様子で、7割ほど寝ている状態でアラームを解除するとすぐにまた布団を被って寝た。

 それから5分後、またアラームが鳴る。そして同じようにアラームを解除してまた寝た。そのようなことが後3回起こったところで、漸くその本人は起きた。そして時間を見て──


Oh, Noヤバい遅刻する!」


 すぐに跳ね起きた。ベッドから出ていくとすぐにパジャマから外出用の服装に着替え、勉強机の近くに置いていた黄色いリュックサックを持って部屋から出る。しかしリツウェッドを忘れていたのを思い出したのか、慌てて取りに戻り階段を降りていく。台所では母『ShartierシャルティアRatstockラタストク』が食器類を洗っていた。


「Good morning 『Claudeクロード』.」
「Hey mom!  Why didn’t you wake me up何で起こしてくれなかったの!?」
You said yesterday that you got up on your own自分で起きるって昨日言ってたわよね?」
Yeah, yeah I was saying thatそう言ってたよButけどさぁ──」
「Claude, is it time for the bus will come soonそろそろバスが来る時間じゃないのか?」


 新聞を閲覧している父『AdelアデルRatstockラタストク』の言葉で時間を確認すると、すぐに何も言わずに目の前の朝食を食べ始めた。トーストの上にサラダとハムエッグ全部乗せて端から食べていく。

 ものの1分弱で食べ終えると、今度は牛乳を飲み干し食器をそのままにして洗面台まで急いで向かう。洗顔と歯磨き、寝癖直しに使った時間は約5分。それらが終わるとリュックサックを持って外へと出ていく。


I'm going行ってきます!」


 玄関の扉から出ていくと近くのバス停留所まで走って向かう。途中赤信号で止まり、少し時間をロスしたのでさらに走る速度を上げる。と、その彼は途中で足を止めて雑貨店の中に入っていくとメンソール入りのガムを買って外へと出た。

 ギリギリ、本当にギリギリのところでバスに間に合い乗り込んで安堵の息を漏らす。


Hey, heyおい、こっち!」


 その声を聞いてクロードはそちらの方まで行く。その席には茶髪で碧眼の、少しだけあどけなさが残っている顔だちの青年『Marcマーク ・ Salmilliaサルミリア』であった。


You were late for a while after a whileギリギリ間に合ったなWhat were you doing yesterday昨日は何してたんだよ?」
I was playing a video gameゲームしてたAnd youそっちは?」
I was in the live condition of a horror gameホラゲー実況してたぜI finally broke through 100 people遂に百人突破.」
Nice良いじゃんWhat is the comment likeコメはどんな感じだ?」
Popular好評.」


 お互い拳をぶつけると次に手を握り、手のひら手の甲と続けて重ね合わせ、最後にまた拳をぶつけて指鉄砲を撃つ。その指鉄砲を見てその友達はふと思い出したかのように訊ねた。


By the wayそういやさwhat is the progress of the group taskグループ課題どんな感じだ?」
Don’t ask itそれを聞くな.」


 クロードが苦笑して俯くと、その友達の表情も苦々しいものになる。そうこう話していたりしている内にバスは幾つかの停車場に止まり人が僅かながら減っていき、学校前で停車した。両側のドアが同時に開かれると中に居たクロードとその友達を含める学生全員が降りていく。

 しかし今は夏休み序盤であるのにも関わらず、こうして学校に来ている。というのも学校へは全員部活やコンクールなどと行事によって変わらず学校へと向かう生徒が多いのだ。

 クロードもその1人であり、大学には先程言っていた通りグループ課題の用事でここに来ている。所属学科である物理学科の教室まで走っていき、窓から近くて電子黒板から少し遠い席に座る。友人は別の学科なので離れている。

 これが『ClaudeクロードRatstockラタストク』の、何時もの日常である。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 昼の2時、それぐらいの時間で今回の用事は終わり。なのでマークと一緒に自宅へ赴いてVRレースゲームをしていた。ここ最近新たに五感全てを仮想世界で疑似体験するフルダイブVR技術の開発により、家庭用ゲーム機に革新が起きると情報誌に掲載されていた。


「Claude.」
「Mh?」
Do you buy full dive typeフルダイブ型のヤツ products when they come outが出たら買うか?」
「Amm…… I don’t buy it because it’s short of money金足りないからいいや.」
I seeだよなぁIt seems that it will costあれ予定じゃ 1000 dollars on that plan1000ドルするらしいからな.」
I can’t put out such a lot of moneyあーもう無理そんなの出せない.」
I wonder if he can buy a millionaire Aemies金持ちのエーミーズならいけるんだろうなぁWell thenってかare you still in a state of lonelinessお前また1人だけぶっちぎりだなオイ!」
I always do the game seriously勝負はマジでやらせてもらうからよぉ!」


 結局、この日は15レースほどして終わったとか。その日の夕方、クロードはこんな時間帯に家を出ていき近くのビルの屋上まで上がる。

 その屋上でクロードは小型カメラ付きを取り付けたピエロの仮面を着けて、走った。屋上の手すりにジャンプして飛び乗ると、その勢いで他のビルへと飛び移った。受身も難なく行いそのまま同じようなことを何度も何度も繰り返す。

 クロード自身以外は知られていないが、彼はパルクールを他の誰にも内緒にして身バレしないように仮面まで着けてストリート系パルクールをここ1年は続けているのだ。

 ビルからビルへ、時には家屋の屋根を走りアクロバティックに後方宙返りしながらビルへと飛び移ったりと忙しない。だが本人はこのスリルと勢いを楽しんでいる。成功した時の爽快感が、いつになっても忘れられないのだ。

 かれこれもう30分は経っただろうか。少し高めのビルの屋上から景色を見渡すクロードが居た。体力の方はパルクールを続けているので、やり始める以前よりかは持つ。回復に必要なクールタイムもほんの少し短くなった。

 が、彼はもっと長く街を飛び回っていたいのだ。体力の限界を超えて、もっと様々な場所を巡り巡ってこの目で世界を見ていきたいと、そんな壮大な理想を掲げて毎日のように行っているのだ。

 しかしそろそろ夕飯の時間に差し迫っているので、ここら辺でさっさと帰ってシャワーでも浴びようと考えながら帰宅していくのであった。まだ彼も16歳、若気の至りを理解するには早い時期なのだ。誰かに注目されたいと願うのは、ティーンエイジャーの時代なら誰しも思ったことだろう。

 帰りは別の道を通り、家の近くに着いたら仮面を取り外してビルの屋上を降りていく。そして汗だくになりながらも仮面を隠しながら自室へと向かっていくのであった。


I'm homeただいまーI’ll take a shower first先にシャワー浴びるよー.」
Welcome homeおかえりPut the laundry in the washing machine洗濯物は洗濯機に入れといて.」
Yeah yeahはいはーい.」


 自室に戻ると、クロードは仮面をベッドの上に置いて朝の洗濯物と今日着るパジャマを持って洗面所まで向かい、自分の着ている服一式と朝のものを洗濯機に入れたあと浴室へと入りシャワーを浴びる。

 念入りに髪と体を洗い、浴室で洗顔もする。最近の男の嗜みというヤツである。シャワーを浴びた後は体を拭き、パジャマを着てドライヤーで髪を乾かす。温水に濡れてペタンとなっている髪には手を付けず、夕食を摂る。


Bless us, O Lord, and these, Thy gifts主、願わくは我らを祝しwhich we are about to receive from Thy bountyまた主の御恵によりて我らの食せんとするこの賜物を祝したまえThrough Christ, our Lord.我らの主、キリストによりて願いたてまつる Amenアーメン.」


 そしてラタストク家はキリスト教であるため、毎回このように礼拝の儀をするのだとか。ちなみに今回の夕食はグラタンとバゲット、グレープジュースを味わった。

 そんな彼の日常が、まさに運命のイタズラか。はたまた何処ぞの邪神が興味本意に狂わせたのか、そこまでは分からないが……この後大きく変わってしまうのであった。


Is there substitute for gratinグラタンのおかわりまだある?」
There are two or three more minutes leftあと二、三杯分あるわよ.」
Serve cheese plentyチーズ大盛りにしよっと.」


 今はこのように、露ほども思ってすらいないが。
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