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Bizarre Youth
3話
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━━7月 21日━━
翌朝、起床したクロードであったがその表情は優れないものであった。昨日の変な廃洋館での出来事が脳裏を過ってしまい、寝ようにも寝付けにくかったため少し寝不足気味になっているのだ。
しかし夢で有りもしない不気味なことを体験したせいで6時半に起きるぐらい恐ろしかったそうな。そのせいでバスの車内で欠伸をする始末、ついでに隣のマークにも欠伸が移った。
「I feel like you look sleepy, is it okay?」
「……I'm okay. I only met many troublesome things yesterday.」
「Is not enough sleep?」
「Yeah yeah.」
「Do you exercise too much and get muscle pain?」
「No.」
そう断言するとすぐに、バスが学校前の停留所に停る。席を立ち上がり降りると入り口まで2人で並び、他愛ない話をしながら昇降口まで向かう。
その後、それぞれのロッカーに荷物を保管しようとするが背中を誰かにどつかれ少し前のめりになる。ロッカーの縁に手を付けて体勢を戻し、後ろを振り返って辺りを見渡す。左側にこちらを見て中指を立てている同級生らしき人物が居た。
何故こうなったのかは、勿論理由がある。クロード一家は父親以外ユダヤ系であるから。ただユダヤ系民族の国際的な問題も関係し、赤の他人である彼らにも偶にこのような事が起きている。
加えてなのだが、彼は運動神経も良い。パルクールでの運動技量の積み重ねもあって、学校ではその運動神経の良さは知られている。頭も良い、少なくともクラスで上位3名にくい込むほどには。故に先程のような弊害も起きているのだ。
そして極一部ではあるが、教師からも少々差別的な対応を取られることもある。勿論多くの教師はクロードの優秀な成績と健康的な生活態度から、好評を得てはいるものの理不尽な対応をされることもある。
だがこんなことが起こっていたとしても、それを伝える気にはならなかった。……思春期という複雑な時期と重なって、誰かに相談することに対して何処か無意識に距離を取っているのだ。
それでも、この生活に不満はあった。充実しているかと問われれば、“満足していない”よりの意見になるだろう。実際、ストリートでのパルクールも現実逃避に近いから。
妬みや嫉み、学校からの期待や普段から自分を隠し続けていたツケが回っていたからこそ、何か忘れるようなことをずっとしていたかったのだ。
暫くして教室に到着すると、席に着いてリツウェッドにイヤホンを付けて音楽を聴き始めた。その音楽を聴きながら動画サイトでエゴサーチを始めると、僅か2日程度で18万再生されている。そのことだけを確認しているが、他に何かしようとする気は起きないらしい。
ふと、誰かに肩を2回ほど叩かれる。振り向いてみれば茶髪の日系アメリカ人である『笹垣=サルヴァ・恵美』が居た。彼女はクロードと同じグループであり、交流関係を持っている。クロードでさえも数学では彼女に負けるぐらい、頭の良さはある。
「What are you looking at?」
「Parkour video.」
「Just show me.」
「OK.」
先程の動画をもう一度初めから再生させると、この一人称視点の自分の動画と、投稿者を見て頷いていた。
「Harlequin. It’s popular movie of Harlequin recently. You like it too?」
「Ah……That's it. I thought that this person can move so far. What do you think of Emi?
「Hm, I think it’ll be painful if it falls.」
「Which one do you like or dislike?」
「Hmmm………… neither.」
内心“えっ?”と思っているクロードを無視し、学校のチャイムが鳴る。それを気に恵美は手を振って自分の席に座ると、頭を切り替えてクロードも勉強モードになる。
因みに今回は物理学を学んだ。この次は体育という授業構成となっているが、それを改めて確認したクロードは一つ息を吐いてつまらなさそうな表情をした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学校でやるべきことも終わり、帰宅すると珍しく父のアデルが帰ってきていた。アデルは地元の大学教師をしているのだが、いつもは午後6時まで帰ってくることは無い。今は午後4時なので2時間早いことになる。
「Today it was early to go home.」
「The lecture was until 2 pm.」
アデルは哲学の本を読みながらそう答える。彼は大学で哲学を教えている准教授で、こうして先人達の言葉をずっと読み直したりし続けていたりすることがある。
アデルとクロードの親子仲は特にこれと言って拗れている訳では無い。お互い付かず離れずという風に自分の距離を保っている、なのでアデルはクロードが何かしていたとしても本人のことなので干渉はしていない。クロードも同じく。
親子、というより話すことのある知り合いのような関係に見える。だがこの距離が保たれているおかげか、思春期に入ってから親子喧嘩をしたことは無い。喧嘩はどちらかといえば母親とが多い。
自室へと戻ってベッドで横になると、左腕で両目を覆い隠して息を吐いた。学校でのことによって、彼自身に多少ながらストレスが溜まっていたのであろう。不意にピエロの仮面の方に振り向くと、5分ほど経って彼は【ハーレクイン】に変わる。
この時、彼は頭の中にあの廃洋館のことが思い浮かんでいた。あの人影やジープなどからして確実に人が居ることは確かだが、何故あのような場所に人が住んでいるのか気になっていた。
そのため、この時間からあの廃洋館に行こうと行動していた。ついでに、今日の嫌なことを忘れようとして動きたかったのもある。あらかた準備を整えると、ピエロの仮面を着けて窓から家の庭に降りてダッシュで裏からいつものビルの屋上に向かった。
屋上まで少しかかったが、クロードはあの廃洋館を目指して行った。2マイル離れているが、効率的に行けばそこまで時間はかからずに向かえるので時間的には大丈夫だろうとクロードは考えていた。
そして最短距離であの廃洋館のある住宅街まで辿り着き、民家の屋根に隠れながら森の入り口を見た。今のところ出入りした様子は無さそうなので、そのまま降りて森の中へと入って行った。
覚えている道順の通りに向かうと、あの廃洋館に辿り着いた。まずは安全に塀を登りそこから全体を探る。人影や灯りは無く、何処かに出かけているのかと思い庭へと入った。
まだ安全に済ませるために隠れられる場所を経由しながら玄関扉に到着し、試しに扉のノブを回してみる。どうやら鍵がかけられているようで開きそうになかった。
「There seems to be no choice but to find another entrance.」
その廃洋館の窓枠に足を引っ掛けて、蔦などに掴まり屋根まで登る。到着すると、ゆっくりと屋根を歩き裏に回ろうとした。
が、その前に屋根の一部が脆かったのか穴が開き、その穴から足が落ちてなし崩しに周りの屋根も崩れて落ちた。
「Ow! Ou…… .」
急な出来事だったので受け身を取れずに落下したが、結果的に侵入は出来た。痛みに耐えながらもそのことを確認すると、リツウェッドのライトで中を照らした。
「The result is pretty good. It's an exploration at once.」
辺りを照らすと、どうやらここは書斎らしき部屋らしいことが分かった。しかし埃っぽいせいで長時間居たくないので、扉を見つけるとすぐに部屋を出た。すると廊下に出て、下へと続く階段を見つけた。
また足を踏み外すことがないように慎重に降りていくと、改めてお化け屋敷なのでは無いのかと思えるぐらい不気味なボロ具合であった。階段を降りて目の前にある大きな扉が出入口であることを確認すると、廊下を探索し始める。
そしてクロードは、階段下にある扉を見つけた。ノブを回してみると開いているので、押してみる。
「What this?」
そこにはさらに下へと続く階段があった。好奇心が働き、クロードはその階段を降りていく。何段あるのか分からなくなるぐらい降りると、地下倉庫のような場所に辿り着く。
辺りを照らすと何やら備蓄品のようなものなどがある。やはり昨日見た人影はここに住んでいるらしい、だがこんな場所に住む理由が分からない。
「A ghost will not eat. So who lives here?」
そんな疑問の中、奥へ奥へと進んでいく。すると作業台のある場所に突き当たった。埃を被った作業台だが、一部分だけが埃を被っていなかった。
「Why is there no dust here?」
不思議に思い、その場所に手を伸ばして──見えない何かに触れた。
「Woops?!」
するとその場所から徐々に姿を現すものがあった。円筒状のカプセルだろうか、その中に何やら液体のようなものがあるのが見えた。
「Why is this technology here? And what's inside? It looks like a liquid.」
そのカプセルに触れて観察していくと、ふと何処かのスイッチを押してしまった。するとカプセルが開いてしまった。
「Open. ……What is this? New product of Cole Corporation?」
しかしそのような商品は作っていない筈だと考える。だが社長であるトーマス・コールが独自に作ったとすれば納得はいくが……にしても腑に落ちなかった。
「No, he made TAXIM but would he make this?」
そう思案している内に、中にある液体が少し動いたように見えた。
「Hm?」
怪しくなってその液体をマジマジと見ていると、突然その液体がクロードに飛び付いてきた!
「?????!!!!!」
その液体はクロードの体内に流れ込むように入っていく。口や鼻からではなく皮膚からドンドン入っていくのだ。
そしてその液体が全てクロードに入ったかと思えば、そのクロードは意識を失って倒れたのであった。
翌朝、起床したクロードであったがその表情は優れないものであった。昨日の変な廃洋館での出来事が脳裏を過ってしまい、寝ようにも寝付けにくかったため少し寝不足気味になっているのだ。
しかし夢で有りもしない不気味なことを体験したせいで6時半に起きるぐらい恐ろしかったそうな。そのせいでバスの車内で欠伸をする始末、ついでに隣のマークにも欠伸が移った。
「I feel like you look sleepy, is it okay?」
「……I'm okay. I only met many troublesome things yesterday.」
「Is not enough sleep?」
「Yeah yeah.」
「Do you exercise too much and get muscle pain?」
「No.」
そう断言するとすぐに、バスが学校前の停留所に停る。席を立ち上がり降りると入り口まで2人で並び、他愛ない話をしながら昇降口まで向かう。
その後、それぞれのロッカーに荷物を保管しようとするが背中を誰かにどつかれ少し前のめりになる。ロッカーの縁に手を付けて体勢を戻し、後ろを振り返って辺りを見渡す。左側にこちらを見て中指を立てている同級生らしき人物が居た。
何故こうなったのかは、勿論理由がある。クロード一家は父親以外ユダヤ系であるから。ただユダヤ系民族の国際的な問題も関係し、赤の他人である彼らにも偶にこのような事が起きている。
加えてなのだが、彼は運動神経も良い。パルクールでの運動技量の積み重ねもあって、学校ではその運動神経の良さは知られている。頭も良い、少なくともクラスで上位3名にくい込むほどには。故に先程のような弊害も起きているのだ。
そして極一部ではあるが、教師からも少々差別的な対応を取られることもある。勿論多くの教師はクロードの優秀な成績と健康的な生活態度から、好評を得てはいるものの理不尽な対応をされることもある。
だがこんなことが起こっていたとしても、それを伝える気にはならなかった。……思春期という複雑な時期と重なって、誰かに相談することに対して何処か無意識に距離を取っているのだ。
それでも、この生活に不満はあった。充実しているかと問われれば、“満足していない”よりの意見になるだろう。実際、ストリートでのパルクールも現実逃避に近いから。
妬みや嫉み、学校からの期待や普段から自分を隠し続けていたツケが回っていたからこそ、何か忘れるようなことをずっとしていたかったのだ。
暫くして教室に到着すると、席に着いてリツウェッドにイヤホンを付けて音楽を聴き始めた。その音楽を聴きながら動画サイトでエゴサーチを始めると、僅か2日程度で18万再生されている。そのことだけを確認しているが、他に何かしようとする気は起きないらしい。
ふと、誰かに肩を2回ほど叩かれる。振り向いてみれば茶髪の日系アメリカ人である『笹垣=サルヴァ・恵美』が居た。彼女はクロードと同じグループであり、交流関係を持っている。クロードでさえも数学では彼女に負けるぐらい、頭の良さはある。
「What are you looking at?」
「Parkour video.」
「Just show me.」
「OK.」
先程の動画をもう一度初めから再生させると、この一人称視点の自分の動画と、投稿者を見て頷いていた。
「Harlequin. It’s popular movie of Harlequin recently. You like it too?」
「Ah……That's it. I thought that this person can move so far. What do you think of Emi?
「Hm, I think it’ll be painful if it falls.」
「Which one do you like or dislike?」
「Hmmm………… neither.」
内心“えっ?”と思っているクロードを無視し、学校のチャイムが鳴る。それを気に恵美は手を振って自分の席に座ると、頭を切り替えてクロードも勉強モードになる。
因みに今回は物理学を学んだ。この次は体育という授業構成となっているが、それを改めて確認したクロードは一つ息を吐いてつまらなさそうな表情をした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学校でやるべきことも終わり、帰宅すると珍しく父のアデルが帰ってきていた。アデルは地元の大学教師をしているのだが、いつもは午後6時まで帰ってくることは無い。今は午後4時なので2時間早いことになる。
「Today it was early to go home.」
「The lecture was until 2 pm.」
アデルは哲学の本を読みながらそう答える。彼は大学で哲学を教えている准教授で、こうして先人達の言葉をずっと読み直したりし続けていたりすることがある。
アデルとクロードの親子仲は特にこれと言って拗れている訳では無い。お互い付かず離れずという風に自分の距離を保っている、なのでアデルはクロードが何かしていたとしても本人のことなので干渉はしていない。クロードも同じく。
親子、というより話すことのある知り合いのような関係に見える。だがこの距離が保たれているおかげか、思春期に入ってから親子喧嘩をしたことは無い。喧嘩はどちらかといえば母親とが多い。
自室へと戻ってベッドで横になると、左腕で両目を覆い隠して息を吐いた。学校でのことによって、彼自身に多少ながらストレスが溜まっていたのであろう。不意にピエロの仮面の方に振り向くと、5分ほど経って彼は【ハーレクイン】に変わる。
この時、彼は頭の中にあの廃洋館のことが思い浮かんでいた。あの人影やジープなどからして確実に人が居ることは確かだが、何故あのような場所に人が住んでいるのか気になっていた。
そのため、この時間からあの廃洋館に行こうと行動していた。ついでに、今日の嫌なことを忘れようとして動きたかったのもある。あらかた準備を整えると、ピエロの仮面を着けて窓から家の庭に降りてダッシュで裏からいつものビルの屋上に向かった。
屋上まで少しかかったが、クロードはあの廃洋館を目指して行った。2マイル離れているが、効率的に行けばそこまで時間はかからずに向かえるので時間的には大丈夫だろうとクロードは考えていた。
そして最短距離であの廃洋館のある住宅街まで辿り着き、民家の屋根に隠れながら森の入り口を見た。今のところ出入りした様子は無さそうなので、そのまま降りて森の中へと入って行った。
覚えている道順の通りに向かうと、あの廃洋館に辿り着いた。まずは安全に塀を登りそこから全体を探る。人影や灯りは無く、何処かに出かけているのかと思い庭へと入った。
まだ安全に済ませるために隠れられる場所を経由しながら玄関扉に到着し、試しに扉のノブを回してみる。どうやら鍵がかけられているようで開きそうになかった。
「There seems to be no choice but to find another entrance.」
その廃洋館の窓枠に足を引っ掛けて、蔦などに掴まり屋根まで登る。到着すると、ゆっくりと屋根を歩き裏に回ろうとした。
が、その前に屋根の一部が脆かったのか穴が開き、その穴から足が落ちてなし崩しに周りの屋根も崩れて落ちた。
「Ow! Ou…… .」
急な出来事だったので受け身を取れずに落下したが、結果的に侵入は出来た。痛みに耐えながらもそのことを確認すると、リツウェッドのライトで中を照らした。
「The result is pretty good. It's an exploration at once.」
辺りを照らすと、どうやらここは書斎らしき部屋らしいことが分かった。しかし埃っぽいせいで長時間居たくないので、扉を見つけるとすぐに部屋を出た。すると廊下に出て、下へと続く階段を見つけた。
また足を踏み外すことがないように慎重に降りていくと、改めてお化け屋敷なのでは無いのかと思えるぐらい不気味なボロ具合であった。階段を降りて目の前にある大きな扉が出入口であることを確認すると、廊下を探索し始める。
そしてクロードは、階段下にある扉を見つけた。ノブを回してみると開いているので、押してみる。
「What this?」
そこにはさらに下へと続く階段があった。好奇心が働き、クロードはその階段を降りていく。何段あるのか分からなくなるぐらい降りると、地下倉庫のような場所に辿り着く。
辺りを照らすと何やら備蓄品のようなものなどがある。やはり昨日見た人影はここに住んでいるらしい、だがこんな場所に住む理由が分からない。
「A ghost will not eat. So who lives here?」
そんな疑問の中、奥へ奥へと進んでいく。すると作業台のある場所に突き当たった。埃を被った作業台だが、一部分だけが埃を被っていなかった。
「Why is there no dust here?」
不思議に思い、その場所に手を伸ばして──見えない何かに触れた。
「Woops?!」
するとその場所から徐々に姿を現すものがあった。円筒状のカプセルだろうか、その中に何やら液体のようなものがあるのが見えた。
「Why is this technology here? And what's inside? It looks like a liquid.」
そのカプセルに触れて観察していくと、ふと何処かのスイッチを押してしまった。するとカプセルが開いてしまった。
「Open. ……What is this? New product of Cole Corporation?」
しかしそのような商品は作っていない筈だと考える。だが社長であるトーマス・コールが独自に作ったとすれば納得はいくが……にしても腑に落ちなかった。
「No, he made TAXIM but would he make this?」
そう思案している内に、中にある液体が少し動いたように見えた。
「Hm?」
怪しくなってその液体をマジマジと見ていると、突然その液体がクロードに飛び付いてきた!
「?????!!!!!」
その液体はクロードの体内に流れ込むように入っていく。口や鼻からではなく皮膚からドンドン入っていくのだ。
そしてその液体が全てクロードに入ったかと思えば、そのクロードは意識を失って倒れたのであった。
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