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47)理性
「梓っ!あずさっ!!」
清武の声が廊下に響き渡る。その声には抑えきれない怒鳴り声が込められ、荒れた呼吸が隠せなかった。
痛みと欲望に満ちたその叫びは、まるで命を削るかのように震え、部屋の扉を叩く音が続けて響く。
その度に、扉が微かに震える。彼の手から血が滲み、拳を握りしめたまま、無意識に力を込める。血のにじんだ手で、まるでその扉を破壊するように、何度も何度も叩きつける。
痛みなど、もはや感じていないかのようだった。
その暴走した姿は、まさに獣のようだ。
人間の理性はどこかに消え去り、残るのはただひたすらに求める衝動だけ。梓を手に入れなければ、全てが終わるかのように感じていた。血走った目には、もはや何も見えていない。体が震え、手のひらからは力を込めるたびに血がこぼれる。けれど、そんなことには一切気にも留めない。
ただ、梓の姿をその目に焼き付けたくて、求めて、欲して、そして手を伸ばす。
「清武くん、やめなさい!」
岼屋の声が必死に響く。だが、もうその声さえも清武には届かない。
完全に理性を失っている彼には、何も感じ取ることができなかった。
あの、元々冷静で穏やかな清武の面影は、もうどこにもなかった。目の前にいるのは、ただひたすらに梓を求めて暴れる獣だけだった。
彼を止めることができる者は、今この場にはいない。
その時、スタッフや他の人々が集まり始める。
ざわつく声、低い囁き、目を見開いた人々の視線が集まり、その場の空気が重く、さらに緊張を増していく。
だが、誰も清武を止めることはできない。
暴走を止められる者は、ただ一人。
しかしその者も、今は一歩も近づくことができない。
恐ろしいまでに暴れ狂う清武の姿を見て、誰もが目を背けたくなるような思いに駆られる。
そして、突如として、母親の声が聞こえた。
「なんの騒ぎなの?!何が起きているの?」
その声には、心配と不安が入り混じっている。清武の母親が、事の重大さに気づき、慌てて駆け寄ってきた。
顔色が青ざめ、まるで息を呑むような気配で、彼女はその場に立ち尽くした。
彼女もまた、今起きていることの意味を瞬時に察したのだろう。胸を締めつけられるような恐怖が、その目に浮かぶ。
「清武!あんた、何してるの?!」
希清の叫び声が耳に響く。その声には怒りと恐れが交錯している。
母親が必死に呼びかけるが、清武はそれに応じることなく、ただ扉を叩き続けていた。
その目は、もはやどこにも戻らない場所を見つめているかのように、虚ろだった。
「すみません、お母さん……梓さんがヒートを起こして、清武くんが……」
岼屋の言葉が震えながら口をついて出る。
その声には、無力さと、どうしようもない事実に対する絶望が滲んでいた。
「なら、どうして清武はここにいるの?和司はどこ?」
希清の言葉が刺さる。質問が鋭利な刃物のように、岼屋を追い詰める。その問いに、岼屋は一瞬言葉を詰まらせた。
「まさか……こんなことが……」
岼屋はその目を伏せ、今起きていることの恐ろしさを理解しながら、次第に冷徹に、そして避けることのできない現実を受け入れるしかなかった。
「楓さん!和司はあなたの夫になるのよ!今すぐ止めないと!」
希清が叫ぶ。その必死の声が、岼屋の心をさらに痛めつける。しかし、岼屋の目は、すでにその無力さを認めるしかないことを物語っていた。
「いえ……カズはラット状態です。誰も、止められません」
その言葉が冷徹に響くと、希清の顔に、信じられないという表情が浮かんだ。信じたくない現実が、彼女の目の前に突きつけられている。その拒絶の感情が、まるで空気を切り裂くように強く感じられた。
「信じられない……警察官のあの子がラット状態だなんて……あり得ない!そんなこと……!」
希清の声が震える。その目は今、現実を信じたくないという気持ちでいっぱいだ。しかし、岼屋は静かに続ける。
「……運命だと思うんです」
その言葉が、重くその場に落ちる。
岼屋の言葉には、もはや反論の余地がない。
すべてが終わり、すべてがこの一言に集約されてしまったかのように感じられた。
「運命なんて、馬鹿なことを……」
希清は呆然と呟く。信じられないという想いが、彼女の口から零れ落ちる。
しかし、それでも岼屋は静かに、そして冷徹に答える。
「訓練された警察官でも抑えられないんです。運命の番相手には」
その言葉が重く響くと、今度は周囲に集まっていたスタッフが気づき、一斉に動き出す。
「お客様、ほかの方の迷惑になりますので……」
その声に、岼屋は一度目を閉じ、決断を下す。もう、迷っている暇はなかった。すべてを引き受け、清武を抑えなければならない。
「私は清武くんを見てます。このままじゃ危ないから。すみません、どこか空き部屋はありますか?」
一言一言に、岼屋の決意が込められていた。
ためらうことなく行動を起こすべき時だと感じていた。
「キャンセルにより一部屋空いております。少し下の階になりますが」
スタッフの言葉に、岼屋はすぐに反応する。
「ありがとうございます。なら、急いでお願いします」
その言葉に、岼屋はスタッフの後ろについていく。清武を抑え、事態をなんとか収拾させなければならない。
彼が引きずるようにその場を離れた時、梓の苦しむ姿が頭に浮かび、その切なさが胸を締めつけた。
――――――――――
一方、部屋の中では、梓が和司のものを身に纏いながらも、深く息を吐き、静かにその感覚に浸っていた。
和司の香りが身体中に広がり、その安心感が心を落ち着ける。
梓の胸の中には、まだ抑えきれない欲望が渦巻いていた。
和司のものをまとうことで、まるで和司に抱かれているような気持ちになる。
それが、梓にとっては無意識に、強く心を惹きつける。
その感情を抑えきれない自分が、まるで暴れ出しそうだ。
胸が痛み、心が震える。その欲望を感じる度に、梓はただ心の中で和司を呼び続ける。
彼に、そしてただひたすらに彼の手に導かれたくてたまらない自分がいる。
欲しい、抱きたい、噛みたい、感じたい。
その全てを今すぐにでも求めたくなる。
もし自分がその状態になったら、和司の手で暴力的に求められてしまうだろう。
心の中でその恐れと欲望がぶつかり合い、梓の理性がその限界を迎えようとしていた。
ラットを完全に起こし、理性を失った自分がどうなるのか、和司にはまるで予測がつかない。
身体の中で何かが膨張していく感覚に、和司はただ静かに耐えるしかなかった。
庇護欲が異常に膨らみ、いっそ梓を抱きしめて守りたくなる気持ちが押し寄せる一方で、他の誰かが近づけばその身を引き裂かんばかりの衝動が湧き上がる。
梓が発情し、苦しんでいる姿を、誰かに見せることなどできない。
誰も、近づけたくない。
ただ、梓のそばにいるだけで、心が裂けそうだった。
その感情は、傲慢で、強欲で、歪んでいる。
だが、和司にとってはそれが「愛」だと感じてしまうほど、心の奥底で沸き上がってくるのだ。
彼がこの瞬間に求めるもの、それはただひとつ、梓そのものだった。
―――このまま、理性を完全に失ってしまったらどうなるのか。
和司はその先を想像することができない。
ただ、梓に触れたいという欲求が、さらに強く湧き上がるばかりだった。
その欲望を抑え込み、耐え続けている自分に、かろうじて理性の糸が繋がっていることを感じる。
訓練を積んだおかげで、オメガのフェロモンに対する耐性が身についている。
だからこそ、今もこうして梓の前にいられるのだ。
もし耐性がなければ、間違いなく彼はすぐにでも暴走し、梓を力づくで番にしてしまっただろう。
そう思うと、どれほど恐ろしいことか、身震いが止まらない。
だが和司は、梓の気持ちを最優先にしたいと強く願っている。
もしも梓が、清武を選ぶのであれば、和司はその場を去るつもりだった。
それでも、今はどうしても伝えたい。
自分の気持ちを、梓に―――この胸に秘めた想いを、どうしても彼に伝えたかった。
だから、今こうして、目の前の部屋にいる。
「梓」
声がかすれていた。耐えて耐え抜いていたため、声が掠れ、呼びかけるたびにその響きが儚く消えそうだった。
だがその声に、どれほどの意味が込められているのか、梓には分かってほしいと、和司は強く願う。
「好きだよ」
その一言が、まるで引き金となったかのように、部屋の空気が一変した。
和司の声とともに、室内にはさらに強い香りが広がり、梓の身体に反応を引き起こす。
その香りは、まるで二人の距離を一気に縮めるように、激しく、でも切なく、深く響き渡る。
和司はその瞬間、無意識に自分の中で一歩踏み込んだ。
これ以上、耐えられなくなる前に、梓がその気持ちに応えてくれることを祈るばかりだった。
清武の声が廊下に響き渡る。その声には抑えきれない怒鳴り声が込められ、荒れた呼吸が隠せなかった。
痛みと欲望に満ちたその叫びは、まるで命を削るかのように震え、部屋の扉を叩く音が続けて響く。
その度に、扉が微かに震える。彼の手から血が滲み、拳を握りしめたまま、無意識に力を込める。血のにじんだ手で、まるでその扉を破壊するように、何度も何度も叩きつける。
痛みなど、もはや感じていないかのようだった。
その暴走した姿は、まさに獣のようだ。
人間の理性はどこかに消え去り、残るのはただひたすらに求める衝動だけ。梓を手に入れなければ、全てが終わるかのように感じていた。血走った目には、もはや何も見えていない。体が震え、手のひらからは力を込めるたびに血がこぼれる。けれど、そんなことには一切気にも留めない。
ただ、梓の姿をその目に焼き付けたくて、求めて、欲して、そして手を伸ばす。
「清武くん、やめなさい!」
岼屋の声が必死に響く。だが、もうその声さえも清武には届かない。
完全に理性を失っている彼には、何も感じ取ることができなかった。
あの、元々冷静で穏やかな清武の面影は、もうどこにもなかった。目の前にいるのは、ただひたすらに梓を求めて暴れる獣だけだった。
彼を止めることができる者は、今この場にはいない。
その時、スタッフや他の人々が集まり始める。
ざわつく声、低い囁き、目を見開いた人々の視線が集まり、その場の空気が重く、さらに緊張を増していく。
だが、誰も清武を止めることはできない。
暴走を止められる者は、ただ一人。
しかしその者も、今は一歩も近づくことができない。
恐ろしいまでに暴れ狂う清武の姿を見て、誰もが目を背けたくなるような思いに駆られる。
そして、突如として、母親の声が聞こえた。
「なんの騒ぎなの?!何が起きているの?」
その声には、心配と不安が入り混じっている。清武の母親が、事の重大さに気づき、慌てて駆け寄ってきた。
顔色が青ざめ、まるで息を呑むような気配で、彼女はその場に立ち尽くした。
彼女もまた、今起きていることの意味を瞬時に察したのだろう。胸を締めつけられるような恐怖が、その目に浮かぶ。
「清武!あんた、何してるの?!」
希清の叫び声が耳に響く。その声には怒りと恐れが交錯している。
母親が必死に呼びかけるが、清武はそれに応じることなく、ただ扉を叩き続けていた。
その目は、もはやどこにも戻らない場所を見つめているかのように、虚ろだった。
「すみません、お母さん……梓さんがヒートを起こして、清武くんが……」
岼屋の言葉が震えながら口をついて出る。
その声には、無力さと、どうしようもない事実に対する絶望が滲んでいた。
「なら、どうして清武はここにいるの?和司はどこ?」
希清の言葉が刺さる。質問が鋭利な刃物のように、岼屋を追い詰める。その問いに、岼屋は一瞬言葉を詰まらせた。
「まさか……こんなことが……」
岼屋はその目を伏せ、今起きていることの恐ろしさを理解しながら、次第に冷徹に、そして避けることのできない現実を受け入れるしかなかった。
「楓さん!和司はあなたの夫になるのよ!今すぐ止めないと!」
希清が叫ぶ。その必死の声が、岼屋の心をさらに痛めつける。しかし、岼屋の目は、すでにその無力さを認めるしかないことを物語っていた。
「いえ……カズはラット状態です。誰も、止められません」
その言葉が冷徹に響くと、希清の顔に、信じられないという表情が浮かんだ。信じたくない現実が、彼女の目の前に突きつけられている。その拒絶の感情が、まるで空気を切り裂くように強く感じられた。
「信じられない……警察官のあの子がラット状態だなんて……あり得ない!そんなこと……!」
希清の声が震える。その目は今、現実を信じたくないという気持ちでいっぱいだ。しかし、岼屋は静かに続ける。
「……運命だと思うんです」
その言葉が、重くその場に落ちる。
岼屋の言葉には、もはや反論の余地がない。
すべてが終わり、すべてがこの一言に集約されてしまったかのように感じられた。
「運命なんて、馬鹿なことを……」
希清は呆然と呟く。信じられないという想いが、彼女の口から零れ落ちる。
しかし、それでも岼屋は静かに、そして冷徹に答える。
「訓練された警察官でも抑えられないんです。運命の番相手には」
その言葉が重く響くと、今度は周囲に集まっていたスタッフが気づき、一斉に動き出す。
「お客様、ほかの方の迷惑になりますので……」
その声に、岼屋は一度目を閉じ、決断を下す。もう、迷っている暇はなかった。すべてを引き受け、清武を抑えなければならない。
「私は清武くんを見てます。このままじゃ危ないから。すみません、どこか空き部屋はありますか?」
一言一言に、岼屋の決意が込められていた。
ためらうことなく行動を起こすべき時だと感じていた。
「キャンセルにより一部屋空いております。少し下の階になりますが」
スタッフの言葉に、岼屋はすぐに反応する。
「ありがとうございます。なら、急いでお願いします」
その言葉に、岼屋はスタッフの後ろについていく。清武を抑え、事態をなんとか収拾させなければならない。
彼が引きずるようにその場を離れた時、梓の苦しむ姿が頭に浮かび、その切なさが胸を締めつけた。
――――――――――
一方、部屋の中では、梓が和司のものを身に纏いながらも、深く息を吐き、静かにその感覚に浸っていた。
和司の香りが身体中に広がり、その安心感が心を落ち着ける。
梓の胸の中には、まだ抑えきれない欲望が渦巻いていた。
和司のものをまとうことで、まるで和司に抱かれているような気持ちになる。
それが、梓にとっては無意識に、強く心を惹きつける。
その感情を抑えきれない自分が、まるで暴れ出しそうだ。
胸が痛み、心が震える。その欲望を感じる度に、梓はただ心の中で和司を呼び続ける。
彼に、そしてただひたすらに彼の手に導かれたくてたまらない自分がいる。
欲しい、抱きたい、噛みたい、感じたい。
その全てを今すぐにでも求めたくなる。
もし自分がその状態になったら、和司の手で暴力的に求められてしまうだろう。
心の中でその恐れと欲望がぶつかり合い、梓の理性がその限界を迎えようとしていた。
ラットを完全に起こし、理性を失った自分がどうなるのか、和司にはまるで予測がつかない。
身体の中で何かが膨張していく感覚に、和司はただ静かに耐えるしかなかった。
庇護欲が異常に膨らみ、いっそ梓を抱きしめて守りたくなる気持ちが押し寄せる一方で、他の誰かが近づけばその身を引き裂かんばかりの衝動が湧き上がる。
梓が発情し、苦しんでいる姿を、誰かに見せることなどできない。
誰も、近づけたくない。
ただ、梓のそばにいるだけで、心が裂けそうだった。
その感情は、傲慢で、強欲で、歪んでいる。
だが、和司にとってはそれが「愛」だと感じてしまうほど、心の奥底で沸き上がってくるのだ。
彼がこの瞬間に求めるもの、それはただひとつ、梓そのものだった。
―――このまま、理性を完全に失ってしまったらどうなるのか。
和司はその先を想像することができない。
ただ、梓に触れたいという欲求が、さらに強く湧き上がるばかりだった。
その欲望を抑え込み、耐え続けている自分に、かろうじて理性の糸が繋がっていることを感じる。
訓練を積んだおかげで、オメガのフェロモンに対する耐性が身についている。
だからこそ、今もこうして梓の前にいられるのだ。
もし耐性がなければ、間違いなく彼はすぐにでも暴走し、梓を力づくで番にしてしまっただろう。
そう思うと、どれほど恐ろしいことか、身震いが止まらない。
だが和司は、梓の気持ちを最優先にしたいと強く願っている。
もしも梓が、清武を選ぶのであれば、和司はその場を去るつもりだった。
それでも、今はどうしても伝えたい。
自分の気持ちを、梓に―――この胸に秘めた想いを、どうしても彼に伝えたかった。
だから、今こうして、目の前の部屋にいる。
「梓」
声がかすれていた。耐えて耐え抜いていたため、声が掠れ、呼びかけるたびにその響きが儚く消えそうだった。
だがその声に、どれほどの意味が込められているのか、梓には分かってほしいと、和司は強く願う。
「好きだよ」
その一言が、まるで引き金となったかのように、部屋の空気が一変した。
和司の声とともに、室内にはさらに強い香りが広がり、梓の身体に反応を引き起こす。
その香りは、まるで二人の距離を一気に縮めるように、激しく、でも切なく、深く響き渡る。
和司はその瞬間、無意識に自分の中で一歩踏み込んだ。
これ以上、耐えられなくなる前に、梓がその気持ちに応えてくれることを祈るばかりだった。
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