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王都防衛編
115.頭の先からつま先まで
しおりを挟む猫のような身のこなしで、四つん這いで近づいてきたエリーアス様が私の右足首を掴む。それからこちらに色香の乗った眼差しを向けながら、するりと履いていた靴下を脱がしてしまった。
「おっおじさま、離してくれ!私がその、えと、ぉま……っされてるのを見るのは、嫌なのだろうっ?」
後ずさろうとも、背後にいるおじさまは、私の身体をしっかりと抑え込んでいて身動きが取れない。軽い力では動かなかったので、少し強めに力を込めたが、おじさまの腕に血管が浮き出ただけで離してくれなかった。
こんな強い力で抱き留められたのは初めてだ。絞めるというほどではないが、余分がない。気づけばもう片方の靴下も脱がされており、次はベルトに手がかかっていた。
「エリーアス様!」
「ふふ……『動くな』」
ずん、と身体が重くなる。言霊によりまとわりつくエリーアス様の魔力で、自由が利かない。くたりとおじさまの膝にもたれた私から、苦も無くシャツを脱がしていく。
私が苦々しい表情でエリーアス様を睨みつけると、髪をかき混ぜるようにベッカーに撫でられた。それから、視線を前に向ける。
目が合ったらしいエリーアス様は手を止めて、ベッカーに先を促すように軽く小首を傾げた。うう……こんな時でもエリーアス様は麗しい。
<近くで見守っててもいいか>
「本気で残るつもりなのベッカー。大丈夫?」
<ユストゥスや雄が手ぇ出すんじゃねえなら、まだ、なんとか、な>
「ふうん?僕たちもこんな身体でも雄なんだけど」
<わかってる。けど違うだろう?>
「まあ、僕たちは仲間同士での性交はご法度だから、キスで蕩けさせて、かわいがるだけだけどね」
「きすだけなら!脱がさずともっ、ぅんっ」
会話に割り込んだ私に、エリーアス様が覆いかぶさってくる。柔らかい唇を重ねて、下唇を甘噛みされた。碧眼を細めたエリーアス様に、そのまま歯列を舐められる。
視線が集中する中、十分に息が弾むぐらいには私の唇を蹂躙して、ようやくエリーアス様は顔を上げた。つやつやに濡れている唇を舐め取る仕草は恐ろしく色気が漂っている。
「唇だけがキスするところじゃないのは、クンツも知ってるだろう?全身舐めてあげる。せっかくだから、クンツに誰のキスが一番上手いか、審査してもらおうか」
「はあっ?」
結構な頻度で私は他の奴隷とも、先輩方とも口付けを交わすが、皆比べるべくもなく上手い、と思う。一番下手なのは私か、やる気のないエイデンぐらいではなかろうか。
エリーアス様の提案には乗り気ではないのか、皆が半目がちになる。
「エリーだろう」
「エリーアスでしょう」
「エリーに決まってるって」
「そんなんエリーアスじゃんか」
私をベッド中央まで引き寄せたエリーアス様に対して、周囲に囲うように陣取った先輩方が次々に口にしている。ベッカーはただただ複雑そうな表情で、その場に留まった。助けてくれる気はないらしい。
「……誰が上手いかより、クンツが誰のキスが一番好きかが知りたい、かも」
円陣の中央に、まるで供物のように留め置かれた私を見やりながら、唯一その輪から少し外にはみ出ていたディー先輩が、ぺたんと腰を下ろし眉間にやや皺を寄せながら、そんな提案をしてきた。
そんなディー先輩に、アンドレ先輩やエリーアス様が面白そうに顔を合わせ、ライマー先輩はぴゅうっと軽く口笛を吹く。ディー先輩の隣に腰を下ろしていたジギー先輩が、軽く目を細めるともう少し輪に入りやすいように寄ると、私の頬を軽く撫でたクリス先輩が笑みを深くした。
「ディーったら、随分自信がありそうですね」
「僕は結構クンツとキスしてるから」
「そうですか?僕も負ける気はしませんね」
「へえ……」
なん、なんの言い争いだこれは!
バチィと2人の間に、見えない火花が散った気がする。2人とも微笑みを浮かべている分、身が竦む。びゃっと存在感を消すように、胸の前で指を組み合わせている私が縋るようにベッカーを見上げれば、口元にわずかに笑みを浮かべてゆっくりと頷いてくれた。
言葉を交わしてはいないが、この分だとなにか問題があったら助けてくれそうな気がする。さすが、私は、おじさまに愛されているな!そこまで考えて、ふと私は?と浮かんだ疑問に、うっかりと落ち込んだ。
心の弱った私の視線の端で、ちらっと手が動いた気がしたのでつられてそちらを見れば、ライマー先輩とジギー先輩とアンドレ先輩が、こそこそと手話で話していた。
<俺、クリスともディーともキスしたことない>
<俺もない>
<あるとしたら、エリーアスぐらいじゃないか?>
そのまま3人の視線がエリーアス様に向く。我らが英雄様は楚々とした笑みを浮かべたまま、<僕もないよ>と頷いていた。
確かに、訓練中やちょっとしたやりとりで先輩方はキスし合ったりしてはいるが、それこそクリス先輩は、専用奴隷のエイデンとしか口づけをしているのを見たことがない。
ディー先輩に至っては見た記憶がなかった。さらに言えば、ディー先輩が性的な触れ合いをしていることすら見たことがない。ひい。
私の意識の範疇外で、騎士たちの輪の外にいるユストゥスが、不機嫌に尾を揺らしてフスフス荒い鼻息を漏らしながら「クンツの唇は俺のもんだってのに」と愚痴っているのを、ハイルヴィヒやハイラムに面白半分に慰められていた。
「クンツぐらいじゃない?この場の全員とキスしてるの。愛されてるよね」
「……それならば嬉しいが、私よりもっとほかに愛情の向け先があってしかるべきだ。敬愛する陛下や王族の皆様方、それに我らのこくみ「そういう話じゃないでしょ」」
む。エリーアス様に断じられてしまった。口元がむずむずする。こうして私を囲んで留める程度には、大事にされているのだとは理解できた。ありがたいと思うし、口にした通り素直に嬉しい。
だが、それらの気持ちは、私に向けたものではないだろう。ぽっかりと消えた記憶を持っていた、私に好意を持ってくれているのだ。一部は私も覚えているが、言うほど今の私には親しみがないのではないだろうか。
キスをし合うようになったきっかけも、たかだか1年ほど前のことだというのに、記憶が曖昧だ。誰かに顔を寄せられたら口づけをすると教えてもらったのがきっかけで、唇を交わしたような……それからあいさつ代わりにいろいろ触れ合った記憶があるが、どこもかしこも虫食いだらけで、自信がない。
そうだな、愛されているとエリーアス様はおっしゃったが、その親愛は私のものだという自信がないのだ。まず土台となる、共有した思い出を今の私は半分も持っていない。だから自分の物だと思えない。
わずかに目を伏せると、その間に素早く全員がそれぞれ目で無言の会話をしていた。ただクリス先輩とディー先輩は、ただ2人揃って笑顔で視線の殴り合いを繰り返している。
「皆の気持ちはよくわかった。差し当たって、少し優秀になってくるので、3時間ぐらい外出させてくれ」
どう考えても、それが一番いい気がする。記憶にある中の私も、今の私と大差ないポンコツ具合だが、こうして親愛を向けられて報いろうとはしていた、気がする。たぶん。
……どう記憶を掘り起こしても好き勝手にしかしてないが、たぶん消えた部分の記憶には、ちゃんとしている私が存在するのだ。そうに決まっている。でなければ、こんなに親愛を向けられる要素がない。
しみじみと頷いた私は、身体を起こそうとしたところで、ややあきれ顔のアンドレ先輩と痛ましそうに眉根を寄せるクリス先輩に肩を抑えられて、またぽすんとベッドに戻ってしまった。なぜ。
「お前な、わかってないだろ」
アンドレ先輩がくしゃくしゃと私の頭を撫でてくる。異を唱えたいところだが、私以外はアンドレ先輩の言葉に同意を示していた。軽く瞬きで疑問を浮かべれば、ふっと笑みを浮かべてくれる。
「大丈夫、私はわかっている。少しいい子になってくるだけだ。大丈夫だから」
「俺のお嫁様は不安になると、『大丈夫』だと自分に言い聞かせる傾向がある。エリーアス、囲んで脅してるだけなら部屋にクンツ連れ込んで篭るぞ、俺は」
「はいはい、わかってるよユストゥス」
輪の外から、そう狼の声が飛んできた。お前が私の何を知っているというのだ、と睨みつけようとしたところで、ほっそりとしたディー先輩が私に圧し掛かってきた。手足も細く、中性めいた容貌のディー先輩が、開きかけた私の口をその口で塞ぐ。
「でぃ、ぅ」
ディー先輩はエリーアス様より女性的で、唇も舌も小さい。何度も唇を重ねたが、私のような大柄な相手では委縮してはしまわないかといつも細心の注意を払っていた。
こう、抱きつかれる形で唇を交わすのは初めてだった。あまり力を込めては折れてしまいそうな細腰を、やんわりと掴んで押しのけようとするが、首に腕を巻き付けたディー先輩は離れそうにない。
「ずるいです」
「っ?!」
むすっと、年齢の割に子供のような表情を浮かべたクリス先輩が、呼吸を求めるようにディー先輩が口を離したのを見計らって、私の唇を塞いできた。
私も同じく息を吸おうとしたした瞬間だったので、まるで請うて口付けをしたかのように差し出された舌に吸い付き、しっとりとした唇を甘受してしまった。ふっと目元を緩めたクリス先輩の瞳に勝ちを誇るような色が浮かび、それを向けられたディー先輩に苛立ちが灯る。
重さもあまり感じないディー先輩の身体を抱き留めたままだった私は、乳首に疼痛が走って小さくうめき声を漏らした。見れば、ディー先輩の細い指先が、私の乳首を摘まんで苛んでいた。立派な性感帯となったソコは、軽い刺激にぷっくりと膨らみ、肉芯を硬くし始める。
「でぃーせんぱっ」
慌ててクリス先輩を押しのけて、制止しようとした私の唇を、またもやディー先輩の唇が塞いだ。えっ、なん、なぜディー先輩はこんなに積極的なのだ?!
今度は明確に、敵意を表すようにディー先輩が何やらクリス先輩に対して挑発するようなジェスチャーをし……なか、中指を立てるのは行儀が良くないぞ、ディー先輩!
それを受けたクリス先輩がうっそりと笑みを深くして、隣にいたライマー先輩に断って私の隣に身を横たえると、耳にふっと息を吹きかけた。ぞくりと背筋が痺れる。そのままちゅっと耳朶に吸い付き、まるで性器を見立てるように私の耳元で、水音を立て始めた。
甘い快感が零れ落ちてくる。まるで脳を犯されるようなその行為に、私はクリス先輩の髪を掴むが、力を込められない。
ディー先輩もクリス先輩も、深い話は聞いてはいないが、乱暴されたことがあるということは聞いている。肉厚で、男性的な肉体の私が力を込めれば、それこそ2人を傷つけてしまうかもしれない。怪我は治癒で治せるが、心のダメージは治しにくいのだ。
それを思うと、止めたいのだか強請りたいのだか、わからない程度の力しか籠められなかった。
「っぁ、ん?ン、っんーっ?!」
ぷは、とまたようやく唇が自由になったところで、クリス先輩に塞がれた。嬲られていた耳朶を指で撫でられて、びくんと身体が跳ねる。
そこで今度は片方ではなく両方の乳首を、ディー先輩につままれて息が詰まった。足が抵抗するように、ばたばたとベッドを蹴る。上に乗ったディー先輩は少し驚いたようだったが、それでも突起を離してはくれない。私をうっとりと見つめながら、きりっとさらに爪を立てられた。
「なんか変な気分になってくるの、俺だけ?」
「いやわかる。ディーもクリスも、普段こんなに積極的じゃないからな」
ぼそぼそとアンドレ先輩とジギー先輩が会話しているが、そんな話をしてるぐらいなら止めてくれ。おじさまに水を向けるが、真面目な顔でこちらを見つめてくるだけだ。アッ、これは、助けてもらえない……?
他の誰かの助けを求めてぱたぱたと動かした手を、アンドレ先輩に取られた。これで助かると思った瞬間に、ぬるつく熱い粘膜に指先が包まれてぎょっとする。
人差し指と中指が、まるで陰茎を見立てたかのように吸い付かれた。眼差しはしっかりしているが顔に朱が散らばり、恥ずかしそうな素振りを見せつけつつも、ねっとりと舌を這わせている。アンドレ先輩も私ほどではないが、程よく雄々しい体格をしている。それがまるで雌のような媚びる姿を見せると、より周囲の空気が淫靡なものに変わる気がした。
「ま、キスするってんならここだろ」
先ほど泣きわめいて気分がすっきりしたのか、いつもの調子を取り戻したライマー先輩が、上に乗ったディー先輩に身体をずらすように告げて、嬉々として私の下肢を捕らえた。性的な刺激でやんわりと反応を見せていた陰茎を鷲掴みにされて、ひゅっと息を飲む。
ちろりと赤い舌を覗かせたライマー先輩は、まるで飴でも舐めしゃぶるかのようにぱくっと軽く咥えた。舌先で亀頭を突いたりしている。正直、ライマー先輩にフェラチオをされると、ふとした瞬間に噛みつかれそうで視線が離せなかった。
「大事に扱ってくださいね、ライマー」
「……僕も後でそこ舐めるから」
「クリスせんぱっ、とめて!それから、ディー先輩もっ!無理しなくていいで、ぅうー!」
腹筋を使ってぐっと上半身を起こしたところで、ディー先輩とクリス先輩と、そしてアンドレ先輩の3人で、肩や胸を押されてまた私は天井を見上げるような位置に戻されてしまった。
「んじゃ、俺は足かな。足裏とかマジすごいよ」
何事もないかのように私の足元まで這って下がったジギー先輩は、暴れかける私の身体を抑え込むようにして右足を抱き込み、そして恭しく足の甲に口づけを落とす。全身好き好きに抑え込まれた私は、頬をひくつかせた。
誰に視線を合わせても、優しく見返してくれるだけで、私を放そうとはしてくれない。1人、巨大狼となったユストゥスの元まで下がったエリーアス様に縋るような目を向ければ、うっそりと微笑まれた。
「ちゃんと学習するまでみんな離さないからね」
寝そべってる狼の下半身を、エリーアス様はまさぐっている。それを見た私は何かを言いかけたが、それはアンドレ先輩の唇で封じられて、きちんとした言葉にならなかった。
それからがまたすごかった。
全身のあらゆるところを先輩方の手や唇や舌が這いまわり、私の性感を高めていく。何度ペニスを絞られたことだろう。手慣れている先輩方にはもちろんのこと、慣れないディー先輩にすら口で精液を搾り取られた。苦そうに顔を顰めていたが、気遣う余裕すら私にはなかった。
足裏も指の股もわきも腰も、快感がある場所だと示されたし、両耳を舌で舐められ睦言を囁かれて、言葉にならない喘ぎ声しか出なかった。
ユストゥスや奴隷たちに抱かれるのとは違う快感の地獄に、私の思考は覚束なくなる。
「もぅ、もっ、っやぁ……っおちんぽっほしぃ」
「はいはい我慢しようね~」
「ゃあ、あっいれ、いれてっねっ?」
全身ぐずぐずにされて、腹の奥が切ない。皆よくわかっているせいか魔肛には一切触れなかった。ひくひくとその箇所が雄を求めて動いている分、触れられないのはつらい。
「もう、離れていこうとしないって約束できる?」
「するっ!するからっ!」
離れたところから飛んできたエリーアス様の深みのある声に、私は真っ先に飛びついた。何度も舐め取られた陰茎は、頭は擡げはするものの、もう完全には勃起しない。けれど、まだ私の身体はソコではないところで、溺れるような快感を求めていた。
ちゃっちゃっ、とシーツの上をリズミカルに近づいてくる爪音が聞こえ、囲んでいた先輩たちの輪が割れる。力の入らない身体を叱咤しつつ上半身を起こせば、銀の瞳の狼が進み出てきていた。鼻先で閉じていた膝頭を割り開き、長い舌を差し出して私の股に頭を突っ込む。
「わっ、あっ!」
狭いソコに舌先をねじ込まれた。痛みはない。ずっと待っていた刺激に、がくがくと腰が震える。
後頭部と腕を支点にして背を反らし、腰がベッドから浮き上がった。はしたなさを忘れた私は、雄を受け入れるために肉膣を開こうとする分厚い舌を、かぱりと大きく足を開いて受け入れる。
もう勃たないと思ったペニスが、真っ赤な亀頭を皮から覗かせて震えた。へこへこと腰を揺らすたびに、ぶるんと陰茎が躍った。熱のこもった視線が、あちこちから飛んでくる。
「っひ、っぁあ、あああっ」
より入りやすくなった後孔に舌をねじ込まれて、嬌声が漏れた。でも、まだ、足りない。
舌が引き抜かれ、私もどさりと身体をベッドに落とす。内または粗相をしたかのように濡れていて、舌ではないものを欲しがったおまんこが、くぱくぱと収縮を繰り返した。
「入れるぞ」
短く宣言したユストゥスは、ぱさぱさと尾を揺らしながら私に圧し掛かってくる。べろりと大きな舌で顔を一舐めされた。狼が相手なら、それらしい格好で番った方が良いだろうと、回らない頭で考える。
「っは、っぁ、あ……っ」
最後の力を振り絞ってうつ伏せになる。ふすふす首筋に鼻息がかかった。ぺろりとうなじも舐め上げると、両前足で器用に腰を引き寄せられた。欲しいものがやっと入ってくることにほっと息を抜いた次の瞬間、ぎくりと身体を強張らせた。
「っ、う……ぅうっ」
……長い。先端のくびれのような物がない分、つるりと入ってきたが、私の内臓を我が物顔で押し上げてくる性器は、軽々と奥の窄まりを突いた。
「あっ、うそ、あっあっ」
ぐっぐっと、奥を切っ先で押され、私は前に逃げようと這う。見守る先輩方の間からおじさまが見えてはっとした。助けを請えばきっと来てくれる。
でも、私はこの狼から逃げたいのだろうか。欲しいと確かに思ったはずなのに。
「クンツ、クンツ……クウ」
「あ」
耳元で呼ばれた途端、頭が真っ白になった。胸が痛い。苦しい。周辺の誰も目に入らなくなり、背後の狼の息遣いや獣臭さ、脳幹を痺れさせる声しかわからなくなる。
もふもふな胸毛が私の後頭部にあたる。温かいはずなのにどこかうなじが寒い気がする。ねっとりと首筋を舐められて、無性にうなじが噛まれたくて仕方がなかった。強い痛みをそこで感じたくて仕方がない。
「い……から、もっと、おくに……ぅうっ!」
私の声量のない声をきちんと拾ったらしい雄に、ずんっと最後まで押し込まれる。根元の亀頭球を受け入れる際に、柔らかく柔軟性のあるはずの魔肛が、ぴりりと痛んだ。ごりっと前立腺を潰されて、私は言葉なく絶頂する。
全身からぶわりと汗が噴き出た。受け入れるには少しつらいはずなのに、胸の奥は何かが満たされていた。それでいて警告を示すかのように、ずきんと頭が痛んだ。
「クウ……クウ」
「も、いいから、っうごい、あっあんっ!あ、あっああっ」
私の訴えにユストゥスは腰を揺すり始めた。しっかり根元まで入り込んでいるせいで、腰を振っても蠕動にはならない。全身で揺さぶられる。代わりに、精液を欲した私のいやらしい部分がきゅううんっと甘く絡みつく。
「あーくっそキスしてぇな!クウ、ああもう、堪んねえ…っあいっ…………ああくそっ」
ユストゥスは何かを言いかけて言葉を飲み込んだ。私にはそれがなんなのか気を回す余裕がなかった。一突きされるごとに脳神経が焼き切れるぐらい、連続して絶頂を迎えている。
一際強く突き上げると、そこでユストゥスは動きを止めた。最奥にびゅうびゅうと精液を吐き出し始め、私は小さく呻いた。意識はとうに飛んで、ただ身体だけがユストゥスの精液を歓迎するように、淫らな反応を繰り返していた。
「……クンツ大丈夫なのこれ」
「気絶してねえかこれ」
「やりすぎじゃねえユストゥス」
「獣姦なんて、初めてなんですから」
「クンツ、ねえクンツ、大丈夫?」
ぐったりとした私の様子を伺おうと、ユストゥスの下を覗き込んだディー先輩は、背後から伸びてきたイェオリに抱き寄せられた。その前にディー先輩のいたところには、尖った爪で大きな前足が振り下ろされている。
気が立ったユストゥスが毛を逆撫でてて唸った。
「俺の雌に近づくんじゃねえよ」
<ユストゥス、ディーに嫉妬してもしょうがないだろう?>
「わかってるけど、くそ……っ」
「獣人の本能って言うか、本当に獣のようだよユストゥス」
イェオリがユストゥスを諫め、エリーアス様が呆れたように声を漏らすが、それには苛立ったように尾を揺らしただけだった。
<エリーアス>
一段落ついたところで、リビングから姿を消していたマインラートが戻ってくる。そして手話で何か報告し始めた。端的に伝えられる情報に、エリーアス様は片眉を上げる。
「その話が本当なら、もしかしたらユストゥスさえ元に戻せれば、うまく誤魔化せるかもしれない。バルタザールは余計なことは言わなかったんだよね?」
<はい。バルタザールは、ユストゥスから取った呪いの指輪の状況だけを確認したと>
「ちょうどいい、ディーのことで本部には行く用事があったんだ。様子伺ってくる。マインラート、ベッカー行くよ。みんなはクンツがまた外に行こうとしてたら、僕に連絡ちょうだ……」
そこで周囲を見回して、エリーアス様はむっつりと閉口した。
気を飛ばしてしまった私と戯れている間、放置されていたエイデンがクリス先輩を押し倒したのを皮切りに、それぞれの奴隷が担当の騎士たちを、そこかしこで組み敷き始めたのだ。
ただ唯一、イェオリだけはディー先輩を抱き上げて、リビングから連れ出そうとしていたが、ぐっと顔を掴まれ、唇に噛みつかんばかりに口づけしてくる深窓の姫君に、目を白黒させている。
「いいなあ。僕もクンツに当てられてんだけどな……はあエッチしたい」
<あとでたっぷりしましょうね>
散々淫猥な光景を見せつけられたのだから身体が火照って仕方がない、とぼやくエリーアス様の肩にシャツを掛けたマインラートは微笑みながら先を促す。
「ベッカー行くよ」
<……ああ>
最後まで見守るつもりでいた獅子を呼んで、英雄とその奴隷は先にリビングを出ていった。残ったベッカーはユストゥスをねめつける。
<あんまりやりすぎんなよ、ユストゥス>
親友からの苦言に、ユストゥスは素知らぬ顔でヴォンッと吠えた。
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