世界の深淵を0歳までの退化デバフをかけられた俺が覗くとき

卵くん

文字の大きさ
9 / 70
キリの村編 〜クーリエ 30歳〜

X-9話 怪物の居所

しおりを挟む
 通路自体は狭かったが、それを抜けてしまえば中は思ったよりも広かった。通路を抜けた先には上下に伸びる大きな柱のような役割を果たしていると思われる空洞があった。蟻の巣を連想させるように、その壁に沿うようにして幾つもの穴が点在し、そこに行くための狭い道が螺旋状に張り巡らされている。光源は相変わらず魔性石に依存しているので、空洞の高さまでは正確には計り知れいない。それどころか、一つ一つの穴がどこに伸びているのかすらも把握できない。全てが謎に包まれている洞窟であるが、それもそのはずだ。なぜならここは、人類が足を踏み入れない未踏の怪物の住処なのだから。

「これは、どこから探すのが正解なんだ? こんなに幾つも穴があったら一つ一つをしらみつぶしに探しても時間がかかりすぎるぞ」

 こんな時にコルルがいてくれれば、ふとそんなことを考えてしまう。彼女の天恵があればこんな場所ほんの数分で全て把握してくれるただろうに。そんな甘い考えを思い浮かべてしまうが、すぐに頭を振り払う。

「今は、考える時じゃない。動く時だろ!」

  とにかく何もヒントがない中、俺は現在地から一番近くにある穴にへと移動する。中に入っていくと、先ほど通ってきた通路よりかは広く感じたが、それでも依然として狭さを覚えるほどの幅で奥に進むのも体力を奪われる。特に、この通路では奥に進むほど魔性石の露出が減少しているためか、光源が失われ視界が暗闇に染められていくのも、歩く速度を遅くする。だが、立ち止まることはなく身体を拗らせ、砂を顔や服にまといながらも着実に前に進んでいく。

「これは——なんだ?」

 通路の終着点にまでたどり着くのにそれほど時間は掛からなかった。通路の側面には魔性石があまりみられなかったが、今通路を塞ぐ土壁には大量の魔性石が乱雑に点在し、その前にある景色をより強調するような形をしている。俺の目の前には、まず藁が重なりあうように置かれていた。それも、通路いっぱいにだ。重なり合うそれは、明らかにを外敵から守っているように見える。慎重にかつ大胆に俺は、それとの距離を縮めた。藁を踏んだ時には、隠された何かを壊してしまわないかと不安に襲われたが、幸いなことに藁の端の方にはそれは置かれていないようだ。そして、中心部までたどり着くと俺は右手で積もる藁を掴むと一気に剥がしとった。

藁に包まれていたそれが一気に魔性石から溢れる光に当てられその姿を露にする。

「この縦長の円形をした白いものは何だ。まさか、怪物の卵!? だとすると、この藁の下は!!」

 俺は身体に走った衝動に身を任せそのまま一気にこの場に広がる覆い被さるように置かれた藁を全て払い除ける。藁と共にその上に薄く積もっていた土までも同様に空中に舞い上げられ途端に目を細める。だが、うっすらと捉えた視界のその先には先ほど、頭をよぎった最悪な景色が広がっていた。

「一体いくつ産んでんだよ、この怪物は・・・!」

 払い除けられた藁の下にはびっしりと下の地面が見えないほどの数の卵が埋めつけられていた、つまるところ、側面に広がる穴の先には卵を育てる機能を持たせてい他のだ。さしずめ、魔性石の光は太陽の光か。青白く光るその光線の温かさで孵化のタイミングを今か今かと待っているのだ。じっと見つめていると、どの卵も微かに横に移動している。その時が近づいているのは間違いない。

「こいつらが一気に孵化するとコルルの父さんの救出は——ほぼ不可能になってしまう!」

 俺は、一気にその場から駆け出すと先ほど通ってきた道を前の半分以下の時間で戻りきる。上にも下にも点在する穴には先ほどと同様に大量の卵が存在し、人間を小虫のように殺すことができる怪物が今か今かとその時を待っているのだろう。俺は、数多くある穴から目を逸らす、その遥か下まで伸びている穴の底を睨みつける。

「怪物はきっとこの底だ」

 確信があった。現状、自分が集めた情報を冷静に分析するとたどり着いた答えは一つ。この怪物はキリの村での戦闘で何かしらの昆虫が天恵により怪物化したものだと俺の頭の中では答えが弾き出されていた。それは、で断定できた。鳥類ならもっと早く飛翔することができるし、仮に『空を飛ぶことができる』という天恵を持つ怪物だとしても同様でその時間は早い。だとすると考えられるのは、にも関わらず、怪物化という強大な力を持ったことにより、そのバランスがさらに激しく歪んでしまった、この一択だ。

 そして、もう一点。この怪物の死期は近い。この大量に産まれた卵がそれを物語っている。俺が侵入した穴は不自然な点がいくつかみられた。一つは、異常なほどの卵数。そしてもう一つは、という2点。前者は、もしかしたら大量に卵を産む生物と考えられるかも知れないが、後者を先に考えるとその説は容易に覆された。怪物はエネルギー源として魔性石を食す。つまり、食すのであれば一気に食べればいいのだ。そう、通路のように手当たり次第に。だが、あれほどその先の壁に魔性石が埋め込まれていたのにも関わらず食そうとした形跡が一つも見られないのはおかしい。だとすれば、通路を掘っている最中にはではないだろうか。

つまり、卵を産むというエネルギーを大量に必要とする行為を。それを中間層であるこの穴でも見て取れるのだ、上に行けばいくほど、怪物がいる場所に遠くなればなるほどその工程の感覚が狭まっているということを表している。さて、なぜ怪物がこの堂々と恐怖の対象として存在する穴の底に怪物がいると俺が想定したかというと、その答えはこれまでで一番シンプルなものだ。この洞窟の隣は分かるように湖だ。そして、排卵には少なからず血液なり、その他体液が体外を撒き散らかしての行為だと俺は認識している。だから。

 汚れた身体って綺麗な水で洗い流したくなるものじゃないの? ただ、それだけの考えで俺は、下に向かって走り出していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...