世界の深淵を0歳までの退化デバフをかけられた俺が覗くとき

卵くん

文字の大きさ
61 / 70
アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜

X-61話 名乗る老人

しおりを挟む
 ピッ・・ピッ・・ピ・・・

 一定の間隔で鳴り響く機械音。静寂に包まれる俺と、目の前で熱いお茶を口に運んでいる老人の間を取り繕うかのようにすら思えてくる。老人は、あの一言を話したきり、また口を閉ざしてしまった。理由は分からない。何から話せば良いのか、迷っているとでも言うのだろうか。

「なぁ。話したいことがまとまらないようなら、俺からいくつか尋ねても良いのだろうか」

 痺れを切らして、俺はそう老人に尋ねる。返答は——返ってこない。ただ、一定に鳴っていた機械音が不自然なほど突発的に停止した。俺は、思わず座っていた椅子を押し退け、腰をあげて、周りを確認する。

俺は依然として警戒心を一度も解いてはいなかった。当然だ。ここは既に敵地だと認識していた。老人が現れようが、それは変わることはない。いや、それすらも俺の油断を作るための罠なのではないか、と疑っていたほどだ。

それゆえに、過剰なまでの反応は至って普通であった。だが、それは空振りで終わったのだが。一度機械音が乱れただけで、その後に特に俺の身に何か起きることもない。完全な勇足で、俺は少し恥ずかしさを覚えながらも、再び着席する。

「警戒がすごいな、お主は。いくつか修羅場であり、死線を乗り越えてきたように見受けられる。だが、安心して欲しい。ここは、安全だ。それは、私がここに堂々と姿を現わせているところからも、証明できるだろう?」

「急に重たい口を開いたと思ったら。いったい何を言い出すんだ? なんで、あんたの存在が安全の証明になるんだ?」

「うん? 何じゃ。ユウシの奴はそこを説明しておらんかったのか。はぁ。だから、ここまで来るのに時間があれほどかかったのか。全く、ユウシも頭は回るのだが、人の行動を読むことに関しては、からっきしじゃな」

 老人は一人で言葉をすらすらと並べると、両手で頭を抱える動作を見せる。何が起きてるのか、俺には一切分からない。そもそも、彼の口からユウシの名前が出てきたことすらも、衝撃だ。てっきり、その内容は俺の前では隠し通すものと思っていた。

「もう少し俺にも分かりやすいように説明できないか? 勝手に一人で突っ走られても、俺はスタート地点で置いてけぼりだ。フライングはなしだ」

「ほぉ。例え話が上手いのじゃな。はて、誰にそれを教えてもらったのかな。まぁ、見当はつく。じゃろうな~。だが、その話をすると、また君は置いてかれるじゃろうから、やめとこう」

「加減してくれて感謝するよ、白衣の博士。さぁ、早くここに俺を招待した理由を話してくれ」

「博士ではない。医者じゃよ。わしは。でも、そうじゃな。カーブス。そう名乗れば、君にもわかってもらえるのではないのかな?」

 なっ!! こいつが!?

 どうやら、俺をキリの村に招いたやつは、目の前に現れたらしい。それどころか、この集落で行われていた実験の黒幕も——。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...