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22日目 妖艶の部屋に誘われて

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 正面に設置されている窓から風が強く入り、そこに設置されたカーテンレースが大きく靡いている。扉から見ると。そこには白色の壁に包まれた部屋が顔を出していた。廊下側から見る分ではまだ全貌ははっきりと見ることはできない。だが、僕の重い足を気にすることなく、彼女は躊躇うことなくその部屋にへと入っていく。当然と言えば当然だ。だって、ここは僕にとっては新しい生活の基盤となる場所であるが、彼女にとってはもう住み慣れた場所なのだから。

「そんなところに突っ立てないで、早く部屋に入ったら?」

 そう急かされて、僕は思わずそのまま首を縦に振ってしまいそうになる。いけない。僕にはやらなきゃいけないことがあるんだから、しっかりしないと。

「そうしたいのは山々なのですが、なにぶん荷物を取りに行かないと」

 そういうと彼女は不敵な笑みを浮かべてみせる。その顔にはいつにも増して自信の色が強くうかがえた。

「大丈夫よ、私に任せなさいな。ここまで連れてきてもらったお礼くらいするわ。さぁ、とりあえず部屋に入って。疲れたでしょ、お茶でも入れてあげるわ」

 目の前の彼女にそう促されると、こちらとしてはもうそれを跳ね除ける理由は存在しない。僕は彼女に連れられて、妖艶漂う彼女とこれから共に過ごす部屋に入っていった。
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