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04「ビジンナウラギリ」
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青年は、地面へと倒れこむ、若干のぬかるみのある地面は、ぴちゃっと音を立て、我が身を散らす。
ただ、そんな光景をつまらなそうに見るグラブは、先程の威勢や焦りは見受けられず、やけに冷静だった。
「獣ケダモノの肉体、貧弱、いや醜悪、不快、疎ましく……そして身搾らしい」
その喋り方、そして雰囲気はどこか地面に倒れている青年に似ている。
グラブは下方を見るのを止め、コニカの方へと歩み寄る。
コニカは警戒心を完全に解く、事はなかった。
あからさまな違和感、それをコニカは感じた、という訳でもなかった。
今回は違和感ではなく、疑問。その理由は青年がグラブの技を破り、防いだのを見たから。
だが、青年は倒れた。
それが彼女が疑問を持つには十分過ぎた。
ただ、そんな事を全くと言っていい程に知らず、何も警戒していないイオ以外の新人2人がコニカの横を通り過ぎ、グラブの元へと近寄る。
「センパイ!終わりましたか?」
そんな、自分達は終わるのを待っていたかのような言葉をグラブにへと言う。
そしてグラブは、新人達2人の頭を撫で────
首を掴んだ。
新人達2人とイオ、そしてグラブは兜を着けてはいなかった。
新人達2人とイオ、もとい新人達3人は髪が痛んだり、ムレるのが嫌だった、何よりもダサくあるのが嫌いだった。
ただ、グラブは兜がある事によって視界が遮られるのと、若干の呼吸の乱れを嫌がった。
そのため、計4人は出発式までは着けているが、国から出たらすぐに脱いだ。
ただグラブは、コニカのすぐ近くにいたせいか、とりあえずは脱がないことにしていた。
しかし、結果的に脱いでしまったら同じである。
それが彼女達の失敗だった。
「脆い、いや我が強いのか」
グラブは力を目一杯込めて新人達の首を掴む、新人2人はまず最初に理解、いや状況判断を行おうとしていた。
しかし、このような状況に陥った事や、このような状況を想像する事など全くと言っても良いほどなかったのだろう。
ただ、そんな新人達でさえ咄嗟の判断を下す事が出来、そして実行にまで移す事が出来た。
相手の腕を引っ掻き、多少ではあるが相手を負傷させる事。
自分の命を脅かしている相手を傷付け、相手が手を止めようと仕向けた行動、最悪少しでも手を弛めてくれればいい。
その程度の願いで行った抗いアラガイは無惨にも阻まれる。
グラブは特に何もしていなかった。したと言っても良いのであれば、それは新人達もしていた。
ガントレット、ヴァンブレイス。
双方全てが今、彼女らが身に付けている鎧の、一部位の名称である。
それらは全て、腕や手首を守る物として用いられる。
つまり、金属を何の道具も使わず素手で変形させる事が出来なければ、グラブに傷を付ける事など出来ないだろう。
無論、新人達にそんな力などなかった。
「これも警告したのだ、我は」
一瞬、慈悲のあるかに思えるその言葉は、人間味の溢れるただの自己満だった。
コニカは、まだ動かなかった。相手が両手を使い、意識を2人に向けている、この絶好のチャンスとも言える状況、しかしコニカは決断しきれない。
何故ならば、グラブが我々を攻撃している意味が全く検討もつかないからだ。
何故? 何故?
寝返ったのか?
怒号とまではいかないその言葉を聞いたグラブは、手を離した。
地面に吸い込まれるように落ちていく2人は無論、気を失っている、ただ生きているだけマシだろう。
そしてコニカは、動く───事はなかった。
コニカはまだ考えていた。
寝返った?寝返ったのであればいつ?どんな方法で?
裏切りや、内部情報や、顧客情報を漏らさないために電子機器、はたまた伝書鳩まで禁止している。
であれば何時、どのように、誰の手引きで寝返ったのか?
疑問符が繰り返す脳内に響く言葉があった。
───裏切りを殺せ、奴等は人間ではない───
誰だか分からない女の声、きっと、そう、きっとこれは天啓なのだろうとコニカは思った。
「貴様は弱者か? いや、我の目の前の物全てが弱者」
グラブは、目の前の屍シカバネによく似た、2匹の生き物の片方を踏みつける。
まさに、自らの力を誇示するようで勇ましく、尚且つ滑稽コッケイだった。
「弱者とやらが、それであれば、お前は弱者を倒して誇る子供ガキでいいのか?」
コニカは無機物な兜の中で、嘲笑の表情を見せる。
コニカに敵意はない。いや敵意ではなく、確信。
おおよその答えが出ていた。
しかし、それがもし正解であれば、コニカはただグラブを殺すだけとなる。
それをコニカは、避けたかった。
「詭弁、分かるぞ。貴様は怖いのだろう?同種を殺すのが」
グラブが動いた。コニカに向かって1歩づつ、何の抵抗も、何の迷いもなく。
恐ろしくも、危機感も感じない。
何故ならば、今コニカに近付く者の外見はいつも陽気な彼女なのだから。
「1歩踏み込み、剣を振るえばこの首ぐらい斬り飛ばす事ぐらい可能なのだろう? コニカ隊長殿」
挑発するように、コニカに語りかける。
コニカは、自分の剣へと手を伸ばす。
コニカは心理戦という物が苦手であった。
相手の心を乱す方法なら分かる。しかし、次が分からない。
憤り、策も無しに突っ込んでくれば良いものの、もしそうでなければ、コニカに手はない、ただ対峙するだけである。
「あぁ、出来るぞ」
コニカは簡潔に答えた。
「ではなぜしない。いや答えなくていい、当ててやろう」
「しないのではなく、出来ない。これが正解であろう?」
「つまらない、ただただつまらない。グラブが貴様になってから」
コニカは剣へと手を伸ばすのを止め、兜へと手を伸ばし、外す。
そこからは栗色の男のような髪型をした、見た目だけで言うなら美人な女性が現れた。
何故、今外したのか、頭が蒸れてきたから?
ただ、グラブは笑い、足を止めた。
先に攻撃したのはグラブだった。
そして、声にならない声を発したのもグラブだった。
「あぁ舌の長いナニカよ、お前は馬鹿だ、阿呆だ、愚鈍だ、低脳だ。愚かだ。貴様は芸がない、速さしか取り柄がない。あぁつまらない、ただこれで仕事が終わる」
先に攻撃したのはグラブだったが、それは一瞬の差であった。
グラブが攻撃した0コンマ1秒程後に、コニカは剣を抜いた。
何百、何千、何万と行われたその動作は、最加速に達していないグラブの攻撃など、優に上回った。
「さぁどうする?ご自慢の可愛いく、桃色の舌はこの通り地面に落ちているぞ?拾うか?それとも取って欲しいか?」
グラブは返事をする事、いや返事を考える事など出来ないほどにグラブは動揺、そして深傷を負っていた。
その姿にコニカは嬉しそうに無邪気、いや綺麗な顔立ちを歪める程の正義の笑顔を見せた。
ただ、そんな光景をつまらなそうに見るグラブは、先程の威勢や焦りは見受けられず、やけに冷静だった。
「獣ケダモノの肉体、貧弱、いや醜悪、不快、疎ましく……そして身搾らしい」
その喋り方、そして雰囲気はどこか地面に倒れている青年に似ている。
グラブは下方を見るのを止め、コニカの方へと歩み寄る。
コニカは警戒心を完全に解く、事はなかった。
あからさまな違和感、それをコニカは感じた、という訳でもなかった。
今回は違和感ではなく、疑問。その理由は青年がグラブの技を破り、防いだのを見たから。
だが、青年は倒れた。
それが彼女が疑問を持つには十分過ぎた。
ただ、そんな事を全くと言っていい程に知らず、何も警戒していないイオ以外の新人2人がコニカの横を通り過ぎ、グラブの元へと近寄る。
「センパイ!終わりましたか?」
そんな、自分達は終わるのを待っていたかのような言葉をグラブにへと言う。
そしてグラブは、新人達2人の頭を撫で────
首を掴んだ。
新人達2人とイオ、そしてグラブは兜を着けてはいなかった。
新人達2人とイオ、もとい新人達3人は髪が痛んだり、ムレるのが嫌だった、何よりもダサくあるのが嫌いだった。
ただ、グラブは兜がある事によって視界が遮られるのと、若干の呼吸の乱れを嫌がった。
そのため、計4人は出発式までは着けているが、国から出たらすぐに脱いだ。
ただグラブは、コニカのすぐ近くにいたせいか、とりあえずは脱がないことにしていた。
しかし、結果的に脱いでしまったら同じである。
それが彼女達の失敗だった。
「脆い、いや我が強いのか」
グラブは力を目一杯込めて新人達の首を掴む、新人2人はまず最初に理解、いや状況判断を行おうとしていた。
しかし、このような状況に陥った事や、このような状況を想像する事など全くと言っても良いほどなかったのだろう。
ただ、そんな新人達でさえ咄嗟の判断を下す事が出来、そして実行にまで移す事が出来た。
相手の腕を引っ掻き、多少ではあるが相手を負傷させる事。
自分の命を脅かしている相手を傷付け、相手が手を止めようと仕向けた行動、最悪少しでも手を弛めてくれればいい。
その程度の願いで行った抗いアラガイは無惨にも阻まれる。
グラブは特に何もしていなかった。したと言っても良いのであれば、それは新人達もしていた。
ガントレット、ヴァンブレイス。
双方全てが今、彼女らが身に付けている鎧の、一部位の名称である。
それらは全て、腕や手首を守る物として用いられる。
つまり、金属を何の道具も使わず素手で変形させる事が出来なければ、グラブに傷を付ける事など出来ないだろう。
無論、新人達にそんな力などなかった。
「これも警告したのだ、我は」
一瞬、慈悲のあるかに思えるその言葉は、人間味の溢れるただの自己満だった。
コニカは、まだ動かなかった。相手が両手を使い、意識を2人に向けている、この絶好のチャンスとも言える状況、しかしコニカは決断しきれない。
何故ならば、グラブが我々を攻撃している意味が全く検討もつかないからだ。
何故? 何故?
寝返ったのか?
怒号とまではいかないその言葉を聞いたグラブは、手を離した。
地面に吸い込まれるように落ちていく2人は無論、気を失っている、ただ生きているだけマシだろう。
そしてコニカは、動く───事はなかった。
コニカはまだ考えていた。
寝返った?寝返ったのであればいつ?どんな方法で?
裏切りや、内部情報や、顧客情報を漏らさないために電子機器、はたまた伝書鳩まで禁止している。
であれば何時、どのように、誰の手引きで寝返ったのか?
疑問符が繰り返す脳内に響く言葉があった。
───裏切りを殺せ、奴等は人間ではない───
誰だか分からない女の声、きっと、そう、きっとこれは天啓なのだろうとコニカは思った。
「貴様は弱者か? いや、我の目の前の物全てが弱者」
グラブは、目の前の屍シカバネによく似た、2匹の生き物の片方を踏みつける。
まさに、自らの力を誇示するようで勇ましく、尚且つ滑稽コッケイだった。
「弱者とやらが、それであれば、お前は弱者を倒して誇る子供ガキでいいのか?」
コニカは無機物な兜の中で、嘲笑の表情を見せる。
コニカに敵意はない。いや敵意ではなく、確信。
おおよその答えが出ていた。
しかし、それがもし正解であれば、コニカはただグラブを殺すだけとなる。
それをコニカは、避けたかった。
「詭弁、分かるぞ。貴様は怖いのだろう?同種を殺すのが」
グラブが動いた。コニカに向かって1歩づつ、何の抵抗も、何の迷いもなく。
恐ろしくも、危機感も感じない。
何故ならば、今コニカに近付く者の外見はいつも陽気な彼女なのだから。
「1歩踏み込み、剣を振るえばこの首ぐらい斬り飛ばす事ぐらい可能なのだろう? コニカ隊長殿」
挑発するように、コニカに語りかける。
コニカは、自分の剣へと手を伸ばす。
コニカは心理戦という物が苦手であった。
相手の心を乱す方法なら分かる。しかし、次が分からない。
憤り、策も無しに突っ込んでくれば良いものの、もしそうでなければ、コニカに手はない、ただ対峙するだけである。
「あぁ、出来るぞ」
コニカは簡潔に答えた。
「ではなぜしない。いや答えなくていい、当ててやろう」
「しないのではなく、出来ない。これが正解であろう?」
「つまらない、ただただつまらない。グラブが貴様になってから」
コニカは剣へと手を伸ばすのを止め、兜へと手を伸ばし、外す。
そこからは栗色の男のような髪型をした、見た目だけで言うなら美人な女性が現れた。
何故、今外したのか、頭が蒸れてきたから?
ただ、グラブは笑い、足を止めた。
先に攻撃したのはグラブだった。
そして、声にならない声を発したのもグラブだった。
「あぁ舌の長いナニカよ、お前は馬鹿だ、阿呆だ、愚鈍だ、低脳だ。愚かだ。貴様は芸がない、速さしか取り柄がない。あぁつまらない、ただこれで仕事が終わる」
先に攻撃したのはグラブだったが、それは一瞬の差であった。
グラブが攻撃した0コンマ1秒程後に、コニカは剣を抜いた。
何百、何千、何万と行われたその動作は、最加速に達していないグラブの攻撃など、優に上回った。
「さぁどうする?ご自慢の可愛いく、桃色の舌はこの通り地面に落ちているぞ?拾うか?それとも取って欲しいか?」
グラブは返事をする事、いや返事を考える事など出来ないほどにグラブは動揺、そして深傷を負っていた。
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