魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

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第四十話 遠征終了

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 王国への入り口を抜けると、辺りは歓声と拍手で賑わっていた。
 馬車が通る大通りの脇道には老若男女大勢の人々で埋め尽くされている。
 カケルは馬車の窓から顔を出し、外の賑わいを見る。

 「これは凄い! セレスさんいつもこんな感じなの!?」

 カケルは目をキラキラと輝かせながら、セレスへ飛ぶ勢いで迫る。
 実は彼女、いや彼女たちはカケルにパレードの盛り上がりの大きさをあえて伝えず、反応を楽しもうとしていたのだ。だが思ったより反応が大きく、現在進行形で戸惑っているのだ。

 「そ、そうですよ。いつも遠征帰還時には王国学園区の民は街全体でお迎えするんですよ」

 王国には四つの区で分けられており、セレスが言った学園区もその中に入っている。その四区の中でも学園区は貴族や、学園、宮殿などがあるため一番力や勢いを持っている。
 その為、民の人口を他の区に比べ多い。しかし民の人口が多ければ多いほど富豪と貧困の差は大きくなる。が、他と比べ差がそれほど開いては無い。

 それは何故かと言うと、学園、貴族、宮殿と大きな三つのグループで民を支えあっているからだ。そして民も三つのグループを支えている。自然とお互いがお互いを支えあっている事を自覚できているからこそ、今カケル達が見ることが出来る光景にも繋がっているのだ。

 カケル達は、大広場で馬車から降りその後は大通りを徒歩で進んでいく。
 
 「馬車の中と外では、やっぱり気迫が違うね。肌に直接伝わってきて、学園って凄いな」

 「この国の一つのシンボルですからね。生徒たちもこの学園に入れば有名人みたいなものですから」

 「「「「へー」」」」

 セレス以外の皆は初めて知ったように、口を揃える。
 
 「ってお前らは知らなかったのかよ」

 「だってー興味なかったもん」
 と口笛を吹く素振りを見せているスーフ。

 「知らないのはしょうがないだろ!」
 と言い訳するギル。

 「ご、ごめんなさい」
 涙目になりそうに謝るディア。

 「まあ良いけど。さぁ行こうぜ!」

 歓声と熱狂で溢れている大通りを再びカケル達は歩き出す。


 大広場から学園まで残り半分の道のりぐらいになった時、ある一人の幼い男の子がカケルの視界に入る。
 その子は手に小さな一輪の花を持っている。それを生徒たちにだろうか渡そうと必死になって前に進もうとするが、周りの大人の視界に入ることなく、もみくちゃになって今でも押しつぶされそうになっている所を目撃したのだ。

 「セレスさん。フローラリアをちょっと頼む」

 そう言い、フローラリアの手を放し民が居る所へ向かう。

 「ちょっと! カケルさ!?」

 セレスが最後の言葉を言おうとした時、片手を握っていたフローラリアが服の裾を引っ張った。

 「だいじょうぶ。きっとだれかをたすけにいったんだよ!」

 「そうだと良いんですが……」


 カケルは少年が揉みくちゃにされている現場に着くと同時に、その場に居る民に『そこを空けてください』と大声で叫ぶ。
 この場に生徒が来たことから注目を集め、言うことを素直に聞いてくれた。
 前から大人次々と退いていき、やっと少年が集団の中から解放された。

 「少年。大丈夫? 怪我はしてない?」

 手を引き、大通りまで誘導すると、怪我が無いか確認する。

 「うん! 大丈夫! それよりお兄さんもしかしてカケルって言う人!」

 「そうだよ。僕がカケルだよ」

 すると少年の瞳はキラキラと輝きだす。 
 まるでカケルの姿に憧れているように。

 「僕も大きくなったらお兄さんみたいに強くなれる?」

 「きっと強くなれるさ。君が優しさと、強さを求めれば」

 「うん! きっと強くなって見せるよ!」

 そう言い少年は手に握っていた一輪の花をカケルに渡し、満足そうに走り去った。

 『あれが金の卵と言うのか……将来が楽しみだ』

 表の爽やかな表情とは裏腹に、心の中ではオッサン臭いことを思っているのであった。
 そして急いで皆の元へ向かうのであった。

 大通りを歩き終え、学園内に入ると次は在校生達が遠征から帰ってきた新入生たちをお出迎えする。
 その中にはミア、アイ、クレアの姿も確認できた。
 何日ぶりにミア達の顔を見て、カケルは『やっと帰ってこれた』と実感を持つことが出来た。

 この後の予定は教室に戻るのではなく、ホールで学年集会をした後各自解散となっている。
 まだ興奮が冷めていない生徒は学園で夜まで遊んだり、何処かへ食事に行ったりと皆予定を決まっていた。カケルの場合ミーニァに色々と報告することもあるし、奴隷のこともある。それに疲労もかなり溜まっているので早く帰って休みたいのだ。

 ホールでの集会は生徒たちの事を考えて、五分も掛かることなく終えた。

 カケル終わると同時にフローラリアを片腕で持ち、もう片方の腕で荷物を持ち学園の入り口付近に停められている馬車に向かう。

 『早く家に帰りたい! 早く家に帰りたい!』

 心の中で何回も復唱し呪文のように言い続ける。
 この時、もう頭の中から班の皆の事は抜け出しており、考えても居なかった。
 ただ、早く家に帰ることしか考えていなかった。

 馬車を宿まで持っていったように運ぶのだが、急いでいるあまりに神速を使いながら運んでしまうという荒業に走ってしまう。だが、そこはしっかり衝撃が中に伝わらないよう細心の注意を払う。
 そして家まで歩きだと片道三十分掛かる道のりを、たった五分で着いてしまった。

 家の前に馬車を停め、フローラリアと荷物を持って家に入る。

 「た、ただいま~」

 ゆっくり扉を開け中を確認する。
 中を見た感じは誰も居なかったが、部屋の奥の方から徐々に足音らしき音が大きく聞こえる。
 そして彼女が姿を現した。

 「お帰りなさいです!!カケルさんずっと待ってましたよ! って横に居る女の子は誰の子ですか?」

 ミーニァは耳と尻尾をぶんぶんと振っていた。
 余程カケルと会いたかったのだろう。
 自然な動作で荷物をカケルから預かる。

 「この子は帝都で色々問題があってね。元奴隷で今は僕が親になっているんだよ。そして何だけど……」

 「ん? 何か言いたくないことでもあるんですか?」

 カケルは気まずそうな顔でミーニァを見る。

 「実は外にも買い取った奴隷が居るんですよ……その可愛そうだったので、こうつい……」

 ミーニァは大きな溜め息をすると、荷物を下に置き両手を腰に当てた。

 「全く、カケルさんらしくて良いですけど。丁度今宮殿内が人員不足なのでエリン王女に相談してみますね」

 「すみません。ありがとうございます」

 「はい! ではお風呂が沸いていますので、入りたいのでしたらどうぞ」

 「うん。この後はご飯を食べて寝るから、フローラリアをよろしくね。あ! その子フローラリアって言うからよろしくしてあげて」

 「分かりました。よろしくねフローラリアちゃん」
 
 ミーニァはフローラリアに優しく微笑み、それに答えるようにフローラリアも笑顔で答える。

 「おねーちゃん! よろしくね」

 その後はお風呂に入り、早めの夕ご飯を食べすぐベッドに入り眠りに就く。
 フローラリアはミーニァが世話をしてくれているので、安心できた。

 こうして色々あった帝都遠征が終わったのだ……
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