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第3章 聖戦
6.変化
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ガタガタと部屋が大きく揺れ立ち上がれないほどの振動があった後、室内はシンと静まり返った。
辺りを見渡すと夜光貝の混ざった白壁は所々こぼれ落ち灰色の土台が露になっている。キラキラと光るシャンデリアは先程の衝撃で右へ左へゆらりゆらりと揺れていた。
ーーー次に何かが起こる前に。
少しの間放心状態になった後、尻餅をついた状態から体勢を立て直し僕は立ち上がった。
窓の外からはザワザワと音が聞こえてくるが、今はそれを見に行く余裕は無い。
ーーーひとまず部屋から出ないと!
緊張のせいか膝に力が入らずいつものように走ることが出来ない。
一歩一歩なんとか足を動かしドアへとたどり着き、やっとの思いで扉を開けると悲惨な光景が目に飛び込んできた。
いつも綺麗に整えられている廊下は壁が所々こぼれ落ち、台に置かれた花瓶は落下し割れ、水や花がカーペットの上に散乱していた。
「ユウト!」
大きな声に呼び掛けられて右を見ると、階段へと続く通路の奥から二人の男が走ってくるのが見えた。
近づいてくる男達が、ウェーブした金髪を揺らしながら走るクリスと、黒く長い牧師服を着た枢機卿だと分かった時僕は心から安堵した。
二人はあっという間にユウトの元へ辿り着いた。
「ユウト、怪我はない?」
「うん、僕は大丈夫。二人は?」
「僕と枢機卿も大丈夫だよ。突然魔物の襲来があってユウトの無事を確認しようとここに向かっていたら途中で枢機卿に会ったんだ」
クリスは少し興奮し紅潮した顔で早口で話し、対照的に枢機卿の顔にいつもの朗らかさは無く重い口をゆっくりと開いた。
「私はその時庭園にいたんです。魔物達が大量に城に侵入してきてリオルド様や魔術師、兵士達がすぐに応戦体勢に入りました。私はリオルド様より皆さんを避難させるように伝言を承りました。さぁ、詳しい説明は後です。早く城壁の上の広場へ急ぎましょう。鋸壁の隙間から外の様子も見れますから」
枢機卿の説明に僕とクリスは顔を見合わせて頷いた。ここに居残っていても仕方がない。
どのみち外では戦闘が始まっている。上へ逃げるしか道は無いのだろう。
「さぁ、急いで!」
枢機卿の声を合図に僕達は階段へと向かい通路を走り出した。
息を切らせながら階段へと向かう長い通路を走る。先程より膝はいくらかマシになったが、いつもより自分の体が重く感じカーペットに足を取られて転んでしまいそうになる。
ーーー普段から身体を鍛えておくべきだった。
後悔してもすでに遅い。もし助かったなら絶対に兵士達の訓練にまぜてもらおう。そんな事を考えながら走っていると長い通路はやっと終わり、階段へと辿り着いた。
屋上へと向かい階段に脚をかけた時、あることが頭をよぎり僕は枢機卿に尋ねた。
「メイは…メイはどこですか?」
ーーーどうして気づかなかったんだろう!メイはまだ体調が万全ではない。僕より下の階にいるのだから枢機卿と一緒にここに来なければおかしいのだ。
呼び止められた枢機卿は階段を上がる足を止めると振り返り悲しそうに言った。
「勿論メイに声をかけに行きました。しかし彼女は避難はしないと答えました。自分は城内の1階入り口で待機すると」
「メイ…どうして?」
「自分は兵士だと。国とユウト様を守るのだと申しておりました」
「そんな」
「もしリオルド様達が戦いに敗れ魔物が城に侵入してきた時に、少しでも時間を稼ぐのだと。」
僕は言葉を失った。
「ユウト様、メイの望みでもあるのです。急ぎましょう」
「…」
悲しくて何も答えられなくなった時背中に暖かい手の感触を感じた。
「ユウト、気持ちはわかるよ。でも今は枢機卿の言う通りにしよう?ね、メイもユウトに早く避難して欲しいと望んでいるはずだよ?」
子供の時のようにクリスが僕の背中を撫で顔を覗き込んできた。クリスの瞳は困ったように揺れていた。
ーーー二人に迷惑はかけられない。し、メイの思いを無駄には出来ない。
「ごめんなさい。急ごう」
「ユウト、うん行こう」
気持ちを切り替えて言うとクリスは安心したように微笑んだ。
「さぁ、お二人は私より先に上へ!上には魔物はいないはずです!」
枢機卿に促されるままに僕らは枢機卿を追い越し屋上へと階段を上がった。
上がったといっても実際には多くは走れなかったのだ。
僕が枢機卿を追い越し、その後にクリスが続いた。
数歩かけ上がったところで後ろから「うぅ…」というくぐもった声が聞こえた。
何事かと振り返った僕が見たのは、腕にナイフを刺され痛みに顔を歪めるクリスとその柄をしっかりと掴み鬼気迫る表情をした枢機卿の姿だった。
辺りを見渡すと夜光貝の混ざった白壁は所々こぼれ落ち灰色の土台が露になっている。キラキラと光るシャンデリアは先程の衝撃で右へ左へゆらりゆらりと揺れていた。
ーーー次に何かが起こる前に。
少しの間放心状態になった後、尻餅をついた状態から体勢を立て直し僕は立ち上がった。
窓の外からはザワザワと音が聞こえてくるが、今はそれを見に行く余裕は無い。
ーーーひとまず部屋から出ないと!
緊張のせいか膝に力が入らずいつものように走ることが出来ない。
一歩一歩なんとか足を動かしドアへとたどり着き、やっとの思いで扉を開けると悲惨な光景が目に飛び込んできた。
いつも綺麗に整えられている廊下は壁が所々こぼれ落ち、台に置かれた花瓶は落下し割れ、水や花がカーペットの上に散乱していた。
「ユウト!」
大きな声に呼び掛けられて右を見ると、階段へと続く通路の奥から二人の男が走ってくるのが見えた。
近づいてくる男達が、ウェーブした金髪を揺らしながら走るクリスと、黒く長い牧師服を着た枢機卿だと分かった時僕は心から安堵した。
二人はあっという間にユウトの元へ辿り着いた。
「ユウト、怪我はない?」
「うん、僕は大丈夫。二人は?」
「僕と枢機卿も大丈夫だよ。突然魔物の襲来があってユウトの無事を確認しようとここに向かっていたら途中で枢機卿に会ったんだ」
クリスは少し興奮し紅潮した顔で早口で話し、対照的に枢機卿の顔にいつもの朗らかさは無く重い口をゆっくりと開いた。
「私はその時庭園にいたんです。魔物達が大量に城に侵入してきてリオルド様や魔術師、兵士達がすぐに応戦体勢に入りました。私はリオルド様より皆さんを避難させるように伝言を承りました。さぁ、詳しい説明は後です。早く城壁の上の広場へ急ぎましょう。鋸壁の隙間から外の様子も見れますから」
枢機卿の説明に僕とクリスは顔を見合わせて頷いた。ここに居残っていても仕方がない。
どのみち外では戦闘が始まっている。上へ逃げるしか道は無いのだろう。
「さぁ、急いで!」
枢機卿の声を合図に僕達は階段へと向かい通路を走り出した。
息を切らせながら階段へと向かう長い通路を走る。先程より膝はいくらかマシになったが、いつもより自分の体が重く感じカーペットに足を取られて転んでしまいそうになる。
ーーー普段から身体を鍛えておくべきだった。
後悔してもすでに遅い。もし助かったなら絶対に兵士達の訓練にまぜてもらおう。そんな事を考えながら走っていると長い通路はやっと終わり、階段へと辿り着いた。
屋上へと向かい階段に脚をかけた時、あることが頭をよぎり僕は枢機卿に尋ねた。
「メイは…メイはどこですか?」
ーーーどうして気づかなかったんだろう!メイはまだ体調が万全ではない。僕より下の階にいるのだから枢機卿と一緒にここに来なければおかしいのだ。
呼び止められた枢機卿は階段を上がる足を止めると振り返り悲しそうに言った。
「勿論メイに声をかけに行きました。しかし彼女は避難はしないと答えました。自分は城内の1階入り口で待機すると」
「メイ…どうして?」
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「そんな」
「もしリオルド様達が戦いに敗れ魔物が城に侵入してきた時に、少しでも時間を稼ぐのだと。」
僕は言葉を失った。
「ユウト様、メイの望みでもあるのです。急ぎましょう」
「…」
悲しくて何も答えられなくなった時背中に暖かい手の感触を感じた。
「ユウト、気持ちはわかるよ。でも今は枢機卿の言う通りにしよう?ね、メイもユウトに早く避難して欲しいと望んでいるはずだよ?」
子供の時のようにクリスが僕の背中を撫で顔を覗き込んできた。クリスの瞳は困ったように揺れていた。
ーーー二人に迷惑はかけられない。し、メイの思いを無駄には出来ない。
「ごめんなさい。急ごう」
「ユウト、うん行こう」
気持ちを切り替えて言うとクリスは安心したように微笑んだ。
「さぁ、お二人は私より先に上へ!上には魔物はいないはずです!」
枢機卿に促されるままに僕らは枢機卿を追い越し屋上へと階段を上がった。
上がったといっても実際には多くは走れなかったのだ。
僕が枢機卿を追い越し、その後にクリスが続いた。
数歩かけ上がったところで後ろから「うぅ…」というくぐもった声が聞こえた。
何事かと振り返った僕が見たのは、腕にナイフを刺され痛みに顔を歪めるクリスとその柄をしっかりと掴み鬼気迫る表情をした枢機卿の姿だった。
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