5 / 12
入院一ヶ月目
——で、実際どんなとこ?
しおりを挟む
私が入院した病棟について改めて説明すると、そこは急性期の精神病患者を受け入れる閉鎖病棟。つまり、この病棟に入院してくる患者は皆が絶不調で入れ替わりも激しい。
拘束具付きの車椅子に数人がかりで押さえつけられ泣き喚きながら入ってくる、なんてことは日常茶飯事で、慣れれば「ああまた新入りか」くらいのものだ。
病棟の中でいちばん奥まった場所には、特に容態の悪い患者をぶち込む隔離された病室エリア、通称『隔離』があり、話を聞く限りではさながら ”収容所” のような場所なのだという。
というのも、私は幸いなことに(?)隔離に入ることなく退院し、そのエリアは内側から出られないのみならず他の患者も立ち入ることができない未知のゾーンであり、隔離経験者の友人から中の様子を聞いたことしかない。
曰く、24時間監視カメラ付き、看護師が来ないと水すら飲めない、窓といえば潜水艦みたいな丸い小窓、というまさに「地獄でしかなかった」場所らしい。
私は隔離の話を聞くたびに頭の中に『アウシュヴィッツ』の文字が浮かんでいた。
とはいえ、それ以外の場所は基本的には穏やかな空間で、寧ろ外来の待合所なんかよりずっと明るい雰囲気だった。
『ホール』と呼ばれる共有スペースは高い天井に大きな窓があり、とても開放的な空間だった。
そこにはフードコートのように椅子とテーブルが並び、患者同士で会話をしたり、読書や音楽鑑賞などの趣味に没頭したり、ナースステーションから借りればボードゲームの類もできた。
私がイメージしていた刑務所のような場所ではなく、24時間体制で看護師に見守られながら精神疾患を治療するための優しい世界が広がっていた。
但し、普通の社会ではあり得ないような出来事が日常的に起こるのも事実だった。
入院生活を振り返って、すごく貴重で楽しい経験ができたと常々感じているが、もう一度入りたいかと問われたら迷わず「NO」と即答する。
トンデモナイ人たちに囲まれて、ずっと変な夢を見ているような期間だった。
ここで伝えておきたいのが、そんなトンデモナイ人たちも、トンデモナイ言動を精神疾患の症状として抱え闘っているのであり、私だって側から見ればトンデモナイ状態だったに違いない。
そうでなければ、こんなところに入院などしないのだから。
拘束具付きの車椅子に数人がかりで押さえつけられ泣き喚きながら入ってくる、なんてことは日常茶飯事で、慣れれば「ああまた新入りか」くらいのものだ。
病棟の中でいちばん奥まった場所には、特に容態の悪い患者をぶち込む隔離された病室エリア、通称『隔離』があり、話を聞く限りではさながら ”収容所” のような場所なのだという。
というのも、私は幸いなことに(?)隔離に入ることなく退院し、そのエリアは内側から出られないのみならず他の患者も立ち入ることができない未知のゾーンであり、隔離経験者の友人から中の様子を聞いたことしかない。
曰く、24時間監視カメラ付き、看護師が来ないと水すら飲めない、窓といえば潜水艦みたいな丸い小窓、というまさに「地獄でしかなかった」場所らしい。
私は隔離の話を聞くたびに頭の中に『アウシュヴィッツ』の文字が浮かんでいた。
とはいえ、それ以外の場所は基本的には穏やかな空間で、寧ろ外来の待合所なんかよりずっと明るい雰囲気だった。
『ホール』と呼ばれる共有スペースは高い天井に大きな窓があり、とても開放的な空間だった。
そこにはフードコートのように椅子とテーブルが並び、患者同士で会話をしたり、読書や音楽鑑賞などの趣味に没頭したり、ナースステーションから借りればボードゲームの類もできた。
私がイメージしていた刑務所のような場所ではなく、24時間体制で看護師に見守られながら精神疾患を治療するための優しい世界が広がっていた。
但し、普通の社会ではあり得ないような出来事が日常的に起こるのも事実だった。
入院生活を振り返って、すごく貴重で楽しい経験ができたと常々感じているが、もう一度入りたいかと問われたら迷わず「NO」と即答する。
トンデモナイ人たちに囲まれて、ずっと変な夢を見ているような期間だった。
ここで伝えておきたいのが、そんなトンデモナイ人たちも、トンデモナイ言動を精神疾患の症状として抱え闘っているのであり、私だって側から見ればトンデモナイ状態だったに違いない。
そうでなければ、こんなところに入院などしないのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる