5 / 8
狂ってる
しおりを挟む
「ガムテープ取りますね」
公園の椅子に座らせて、クルスは女性の手首に巻き付いたガムテープをとった。
女性はすぐに自分の口に巻き付いたガムテープをはがしにかかった。
その間、クルスは足首のガムテープをはがした。
女性は口に巻き付いたガムテープに悪戦苦闘している。
無理もない。目も見えないし、ムリに引っ張っても何重にも巻かれたガムテープはそう簡単に切れるものではない。
「やります」
クルスは女性に代わって、口に巻き付いたガムテープをはがしにかかった。
ふわふわで飴細工のように繊細な髪の毛が、強引にガムテープに巻き込まれている様は痛々しかった。
なるべく髪の毛が抜けることのないよう、頭を押さえてはがした。
女性の口があらわになる。
女性は慌てて言った。
「他にも捕まっている人がいます!」
クルスは目にも巻き付いているガムテープをはがしにかかった。
「さっき、車の中で男たちが『これで今日のノルマ達成』って話してました!」
頭を押さえて、一巻き、二巻きとはがす。
「きっと、他にも捕まっている娘たちがいるんです!」
はがし終わった。
その手を女性はつかむ。
「お願いします!一緒に助けに行って下さい!」
彼女の見開かれた瞳がまっすぐにクルスを見つめていた。テープをはがされた直後だから、何度も瞬きする。それでも、瞳をそらさずに、クルスを射抜くように見つめていた。
クルスはあまりのことに体が硬直した。
自分のことを警察だと思っているからこんなことを言うのだろうか?いや、だとしてもこのご時世に警察を信じ切るわけがあるまい。まさにこの件自体に警察の関与があるのだ。彼女にはそのことは聞こえていなかったとしても、一縷の望みが過ぎるだろう。
また、ついさっき自身が恐ろしい目にあった直後にもかかわらず、他人の心配をし、なおかつ助けて来てくれと依頼するのではなく、協力してくれと言うのだ。
ここで断っても、おそらく彼女は一人きりでもなんとかしようとするだろう。そんな真剣味が感じられた。
ふと、彼女の様子に気づく。
手が震えている。
唇は真っ青だ。
まだ恐怖から覚めていないのだ。
それなのに。
クルスは自分の唇が歪んでいることに気づいた。
ーー狂ってる。
「わかった」
クルスは我知らず、応えていた。
公園の椅子に座らせて、クルスは女性の手首に巻き付いたガムテープをとった。
女性はすぐに自分の口に巻き付いたガムテープをはがしにかかった。
その間、クルスは足首のガムテープをはがした。
女性は口に巻き付いたガムテープに悪戦苦闘している。
無理もない。目も見えないし、ムリに引っ張っても何重にも巻かれたガムテープはそう簡単に切れるものではない。
「やります」
クルスは女性に代わって、口に巻き付いたガムテープをはがしにかかった。
ふわふわで飴細工のように繊細な髪の毛が、強引にガムテープに巻き込まれている様は痛々しかった。
なるべく髪の毛が抜けることのないよう、頭を押さえてはがした。
女性の口があらわになる。
女性は慌てて言った。
「他にも捕まっている人がいます!」
クルスは目にも巻き付いているガムテープをはがしにかかった。
「さっき、車の中で男たちが『これで今日のノルマ達成』って話してました!」
頭を押さえて、一巻き、二巻きとはがす。
「きっと、他にも捕まっている娘たちがいるんです!」
はがし終わった。
その手を女性はつかむ。
「お願いします!一緒に助けに行って下さい!」
彼女の見開かれた瞳がまっすぐにクルスを見つめていた。テープをはがされた直後だから、何度も瞬きする。それでも、瞳をそらさずに、クルスを射抜くように見つめていた。
クルスはあまりのことに体が硬直した。
自分のことを警察だと思っているからこんなことを言うのだろうか?いや、だとしてもこのご時世に警察を信じ切るわけがあるまい。まさにこの件自体に警察の関与があるのだ。彼女にはそのことは聞こえていなかったとしても、一縷の望みが過ぎるだろう。
また、ついさっき自身が恐ろしい目にあった直後にもかかわらず、他人の心配をし、なおかつ助けて来てくれと依頼するのではなく、協力してくれと言うのだ。
ここで断っても、おそらく彼女は一人きりでもなんとかしようとするだろう。そんな真剣味が感じられた。
ふと、彼女の様子に気づく。
手が震えている。
唇は真っ青だ。
まだ恐怖から覚めていないのだ。
それなのに。
クルスは自分の唇が歪んでいることに気づいた。
ーー狂ってる。
「わかった」
クルスは我知らず、応えていた。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる