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第1章 統一戦争
28話
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丘陵に築かれた防衛陣地を攻略した私たちは順調に部隊を進め、特に抵抗もなくデルダラを占領し、輸送路が確保された。
以後の戦闘は淡泊に進行し、力押しと包囲殲滅の繰り返しにより、アフリカでの戦闘は終了した。
数日後、最後の戦闘が終了したタンジェ市街にて各部隊が集結し、イベリア本国への異動準備と各部隊長による懇談会が実施された。
男所帯のなかで私は随分と浮いた存在であったが、このアフリカの地である程度の戦果を挙げたことにより多くの士官が私のことを認めてくれている。
会場が暗くなり、コンドル軍団に配属された新米少尉による司会進行で懇談会が進んでいく。
まぁこういう時にも国民性はよく出るものだ。
厳格で大した面白みのないスピーチを行うのは決まってドイツ軍人。
多少のジョークを交え、会場を沸かせるのはイタリア軍人。
情熱的にスピーチを行い士気を大いに向上させるのはイベリア軍人。
たかが植民地の一つを平定しただけなのに、多くの将官の顔が笑みに満ちていた。
ケーキなどを口にふくみながらそれを見ていると、私の名前が呼ばれた。
何事かと思いながらマイクの方を注視しているとアレッシオ大佐がこちらに向かって手招きをしている。
私はそれに動揺しながらもそちらに向かい歩みを進める。
何故か通り過ぎる者たちからは拍手と歓声が贈られるのだが、なぜだろうか。
「リューイ・ルーカス少佐であります」
私は壇上に上がるとそう挨拶をした。
こんな時にドイツの軍服であることが悔やまれる。
表面上わが大隊はドイツに属している。
間違ってもバルトニアの軍服を着ることは許されない。
「そう硬くならなくていい。この度はわが祖国、イタリア王国から貴官に対し、勲章が授与された。国王陛下代理として私がこの場にて貴官に以下の勲章を授与したい」
アレッシオ大佐の言葉に私は耳を疑った。
外国人たる私が受章するなど名誉以外の何物でもないのだ。
「リューイ・ルーカス少佐にサヴォイア軍事勲章、士官級を授与する」
その言葉にざわつく会場。
私はイタリアの勲章には詳しくないが、それなりの等級に定められた勲章であったはずだ。
司令級などは確か、前世ではデーニッツ提督が受勲していたような覚えがある。
「理由としては78連隊の救出、および同部隊に同行し際立った戦果を挙げたことであり、国王陛下自らが命令された」
そして、彼は刺繍の入った豪華絢爛な小箱を参謀から受け取ると、私に箱を開けひざまずいた。
まるで、どこぞの恋愛ドラマのプロポーズシーンである。
こういった時、私はどうするべきかという知識を持ち合わせていない。
「ご不満かな?」
アレッシオ大佐は私に微笑む。
その言葉に私は意を決し、恭しく彼に礼をしたあと、勲章を受け取る。
すると沸き上がる拍手。
国外からの受勲はこれが初めてだ。
無限の拍手を浴びながら私は勲章を左胸に着ける。
その隣には燦然と輝く、『忠国一等勲章』、これが私の誇りだ。
金色のそれに、連なるように銀色と緑で彩られた『サヴォイア軍事勲章』。
「では少佐。一言を」
そういってアレッシオ大佐はマイクの前を譲った。
突然の出来事に硬直する私。
受勲ですら今聞いたのに、一言すら要求されるとは。
うつむき加減で自嘲すると、私はマイクの前へと歩みを進めた。
「この度、私がこのような栄誉ある勲章を受勲できたこと、とても光栄に思います」
よくあるテンプレート。
何の変哲もない言葉を連ねようと私はした。
だが、どこかでそれを許せなかった。
そして意を決して語る。
「しかし同時に、私がこのような勲章を受勲してもよいのかと疑問に思っております」
不思議そうな顔を浮かべるアレッシオ大佐。
「わが大隊は非正規に、国民にも知らされずに派遣されております。この地で死んだ者たちは戦後、その戦ぶりを語ることも許されずに、訓練中で死亡したことになります」
ただ、ひたすらに事実を並べる。
「……なんていうんでしょうか」
思わず言葉に詰まり笑みが漏れる。
多くの者が私に優しい視線を向けているが、その奥に今後何が語られるのだろうかという期待がこもっている。
「私はこの戦争で優秀な部下を32名も失いました。そしてそれはすべて私の命令と、力量不足によるものです」
アレッシオ大佐が何か言おうとしているが、それを手で制止し言葉を続ける。
「ですから、私は彼らの死が無駄にならぬように、そして、彼らを忘れないためにも、この栄誉ある勲章を一生身に着けていたいと思います」
そういって言葉を締めた。
懇談会のあと、私はアレッシオ大佐と共に歩いていた。
向かう先はとくにない。
だが、気が付けば港についていた。
「少佐、あまり気に病むんじゃないぞ」
歩みを止めたところで大佐は私にそう声をかけてくれた。
「それは、出来ません」
優しい言葉に私は冷たく答える。
いくら大佐の助言とはいえ、私はそれを受け入れることはできなかった。
おそらく、軍人としての覚悟が足りなかったのだろう。
今まで戦車部隊では友の死に遭遇することはあっても、眼前で血を流し倒れていく姿を見たことがなかった。
爆風で敵を吹き飛ばすことはあっても、自らの銃弾で敵の命を奪うことがなかった。
「彼らを殺したのは、私であります」
その言葉に大佐は静かに語り始めた。
「私はアルプスに多くの部下を置いてきた」
恐らく、WW1の話だろう。
「いいか、大隊長程度では戦闘の勝敗を決めることはできても戦争の趨勢を決めることはできない」
彼は自分の無力さを嘆きながら私に言う。
彼もまた、戦争の中で無力であった人間の一人なのだろう。
「私はいくつも自分の部隊を壊滅させてきた。そのたびに気に病んでいては仕方ない」
自らを悔いるかのように、語り続ける。
「いいか、少佐。ここで止まるんじゃないぞ。貴官は自らの命を賭して、国民の命を救うんだ」
「この戦争では私は何を守ればいいのですか?」
「……私にもわからないさ。だが、命じられたことを命じられたようにするのが軍人たるものだろう」
大佐はそう言うと身をひるがえした。
これを言うためだけに私をここまで連れ出してきたのだろうか。
だとしたら、なんともありがたい話だ。
私は一人埠頭に腰を下ろす。
港には多くの貨物船が入港している。
明日、私たちはこれに乗ってイベリア本国へと向かう。
向こうではすでに首都を巡った攻防戦が繰り広げられているようで、早急に我々の戦力が必要とされている。
私はこの戦争についての知識が乏しい。
故に、何が起きるのかがわからない。
そう考えると言葉にしようがない不安が私を襲ってきた。
しかし翌日、我々には乗船の命令が下されなかった。
その話を聞いたとき、私には安堵の気持ちと抑えきれない怒りがわいてきた。
私は怒りに満ちた足取りでコンドル軍団の本部が置かれている建物へと向かった。
迷うことなく軍団長の執務室へと向かい乱雑にドアをノックする。
「入りたまえ」
聞きなれたフーゴ少将の声が聞こえる。
私は「失礼します」と不機嫌そうに言い、ドアを開ける。
「なんだね。リューイ少佐か」
「ハッ」
私の顔を見て少し残念そうにする少将。
それでどうしたのだね? と尋ねる少将に私は怒鳴りつけそうになった。
私が来た理由なんぞお前が一番わかっているだろう。と。
「なぜわが大隊はイベリア本土への異動命令がでないのですか?」
私の問いにフーゴ少将はそのことかと言わんばかりに顔をしかめた後、タバコを一息吹かした。
「貴隊をこれ以上損耗させるわけにはいかんからだよ」
グッと息をのむ。
損耗の原因は私にある、それを気遣ってくれているのだろうか。
「そもそも、貴官に求められていたのはドイツからの増援が到着するまでの時間稼ぎと敵をくぎ付けにすること。間違っても本土で消耗戦をするためじゃない」
「つまり、我々はお払い箱であると?」
「端的に言えばそうだ」
くやしさで手を握りしめる。
私はてっきり本土で華々しく戦果を挙げることを期待されていると思っていたのだ。
それは思い上がりだったのだろうか。
「それに貴官らは十分にその任務を果たしてくれた。もう、十分だ」
そう言ってフーゴ少将はタバコを灰皿に押し付けた。
32名の戦死と引き換えに得た戦果としては十分だと彼は言いたいのだろう。
「君も、本国に戻りたいだろう」
フーゴ少将はとどめを刺すようにそう言ってきた。
思わず、リマイナを思い出してしまう。
彼女は元気だろうか。
私がいなくてもやっていけるだろうか。
「あとは、我々がこの泥臭い戦争を終わらせて来る。故郷に帰って待っていたまえ」
これ以上、言葉を交わしても無駄だろうと思った。
もはや決まったことで私にどうすることもできないのだ。
それに、兵を思えばもうそろそろ家族に会いたいことだろう。
「……了解致しました」
煮え切らない思いを引きずりながらも私はそう答えた。
数週間後にはバルトニアからの偽装輸送船が到着し、我々はそれに乗船した。
見送ってくれる戦友はもはやアフリカの地にはおらず、もはやすべてがスペイン本土へと渡った後であった。
「……32名の遺体は回収しなくてよいのですか?」
ロレンス大尉が甲板上で海を眺めていた私に尋ねてきた。
「持って帰ってきてもどうすることもできないわよ。彼らは海中転落したと伝えられるのだから」
無慈悲、そう言われるかもしれないが、海中転落したはずの者の遺体があってはいけない。
だが、彼らを思わずにはいられなかった。
そして、アフリカのほうに向かって敬礼をする。
彼らは歴史に埋もれた無名の兵士。
哀れだと思うが、彼らのおかげで今後急速にバルトニア陸軍の改革は進んでいくのだ。
以後の戦闘は淡泊に進行し、力押しと包囲殲滅の繰り返しにより、アフリカでの戦闘は終了した。
数日後、最後の戦闘が終了したタンジェ市街にて各部隊が集結し、イベリア本国への異動準備と各部隊長による懇談会が実施された。
男所帯のなかで私は随分と浮いた存在であったが、このアフリカの地である程度の戦果を挙げたことにより多くの士官が私のことを認めてくれている。
会場が暗くなり、コンドル軍団に配属された新米少尉による司会進行で懇談会が進んでいく。
まぁこういう時にも国民性はよく出るものだ。
厳格で大した面白みのないスピーチを行うのは決まってドイツ軍人。
多少のジョークを交え、会場を沸かせるのはイタリア軍人。
情熱的にスピーチを行い士気を大いに向上させるのはイベリア軍人。
たかが植民地の一つを平定しただけなのに、多くの将官の顔が笑みに満ちていた。
ケーキなどを口にふくみながらそれを見ていると、私の名前が呼ばれた。
何事かと思いながらマイクの方を注視しているとアレッシオ大佐がこちらに向かって手招きをしている。
私はそれに動揺しながらもそちらに向かい歩みを進める。
何故か通り過ぎる者たちからは拍手と歓声が贈られるのだが、なぜだろうか。
「リューイ・ルーカス少佐であります」
私は壇上に上がるとそう挨拶をした。
こんな時にドイツの軍服であることが悔やまれる。
表面上わが大隊はドイツに属している。
間違ってもバルトニアの軍服を着ることは許されない。
「そう硬くならなくていい。この度はわが祖国、イタリア王国から貴官に対し、勲章が授与された。国王陛下代理として私がこの場にて貴官に以下の勲章を授与したい」
アレッシオ大佐の言葉に私は耳を疑った。
外国人たる私が受章するなど名誉以外の何物でもないのだ。
「リューイ・ルーカス少佐にサヴォイア軍事勲章、士官級を授与する」
その言葉にざわつく会場。
私はイタリアの勲章には詳しくないが、それなりの等級に定められた勲章であったはずだ。
司令級などは確か、前世ではデーニッツ提督が受勲していたような覚えがある。
「理由としては78連隊の救出、および同部隊に同行し際立った戦果を挙げたことであり、国王陛下自らが命令された」
そして、彼は刺繍の入った豪華絢爛な小箱を参謀から受け取ると、私に箱を開けひざまずいた。
まるで、どこぞの恋愛ドラマのプロポーズシーンである。
こういった時、私はどうするべきかという知識を持ち合わせていない。
「ご不満かな?」
アレッシオ大佐は私に微笑む。
その言葉に私は意を決し、恭しく彼に礼をしたあと、勲章を受け取る。
すると沸き上がる拍手。
国外からの受勲はこれが初めてだ。
無限の拍手を浴びながら私は勲章を左胸に着ける。
その隣には燦然と輝く、『忠国一等勲章』、これが私の誇りだ。
金色のそれに、連なるように銀色と緑で彩られた『サヴォイア軍事勲章』。
「では少佐。一言を」
そういってアレッシオ大佐はマイクの前を譲った。
突然の出来事に硬直する私。
受勲ですら今聞いたのに、一言すら要求されるとは。
うつむき加減で自嘲すると、私はマイクの前へと歩みを進めた。
「この度、私がこのような栄誉ある勲章を受勲できたこと、とても光栄に思います」
よくあるテンプレート。
何の変哲もない言葉を連ねようと私はした。
だが、どこかでそれを許せなかった。
そして意を決して語る。
「しかし同時に、私がこのような勲章を受勲してもよいのかと疑問に思っております」
不思議そうな顔を浮かべるアレッシオ大佐。
「わが大隊は非正規に、国民にも知らされずに派遣されております。この地で死んだ者たちは戦後、その戦ぶりを語ることも許されずに、訓練中で死亡したことになります」
ただ、ひたすらに事実を並べる。
「……なんていうんでしょうか」
思わず言葉に詰まり笑みが漏れる。
多くの者が私に優しい視線を向けているが、その奥に今後何が語られるのだろうかという期待がこもっている。
「私はこの戦争で優秀な部下を32名も失いました。そしてそれはすべて私の命令と、力量不足によるものです」
アレッシオ大佐が何か言おうとしているが、それを手で制止し言葉を続ける。
「ですから、私は彼らの死が無駄にならぬように、そして、彼らを忘れないためにも、この栄誉ある勲章を一生身に着けていたいと思います」
そういって言葉を締めた。
懇談会のあと、私はアレッシオ大佐と共に歩いていた。
向かう先はとくにない。
だが、気が付けば港についていた。
「少佐、あまり気に病むんじゃないぞ」
歩みを止めたところで大佐は私にそう声をかけてくれた。
「それは、出来ません」
優しい言葉に私は冷たく答える。
いくら大佐の助言とはいえ、私はそれを受け入れることはできなかった。
おそらく、軍人としての覚悟が足りなかったのだろう。
今まで戦車部隊では友の死に遭遇することはあっても、眼前で血を流し倒れていく姿を見たことがなかった。
爆風で敵を吹き飛ばすことはあっても、自らの銃弾で敵の命を奪うことがなかった。
「彼らを殺したのは、私であります」
その言葉に大佐は静かに語り始めた。
「私はアルプスに多くの部下を置いてきた」
恐らく、WW1の話だろう。
「いいか、大隊長程度では戦闘の勝敗を決めることはできても戦争の趨勢を決めることはできない」
彼は自分の無力さを嘆きながら私に言う。
彼もまた、戦争の中で無力であった人間の一人なのだろう。
「私はいくつも自分の部隊を壊滅させてきた。そのたびに気に病んでいては仕方ない」
自らを悔いるかのように、語り続ける。
「いいか、少佐。ここで止まるんじゃないぞ。貴官は自らの命を賭して、国民の命を救うんだ」
「この戦争では私は何を守ればいいのですか?」
「……私にもわからないさ。だが、命じられたことを命じられたようにするのが軍人たるものだろう」
大佐はそう言うと身をひるがえした。
これを言うためだけに私をここまで連れ出してきたのだろうか。
だとしたら、なんともありがたい話だ。
私は一人埠頭に腰を下ろす。
港には多くの貨物船が入港している。
明日、私たちはこれに乗ってイベリア本国へと向かう。
向こうではすでに首都を巡った攻防戦が繰り広げられているようで、早急に我々の戦力が必要とされている。
私はこの戦争についての知識が乏しい。
故に、何が起きるのかがわからない。
そう考えると言葉にしようがない不安が私を襲ってきた。
しかし翌日、我々には乗船の命令が下されなかった。
その話を聞いたとき、私には安堵の気持ちと抑えきれない怒りがわいてきた。
私は怒りに満ちた足取りでコンドル軍団の本部が置かれている建物へと向かった。
迷うことなく軍団長の執務室へと向かい乱雑にドアをノックする。
「入りたまえ」
聞きなれたフーゴ少将の声が聞こえる。
私は「失礼します」と不機嫌そうに言い、ドアを開ける。
「なんだね。リューイ少佐か」
「ハッ」
私の顔を見て少し残念そうにする少将。
それでどうしたのだね? と尋ねる少将に私は怒鳴りつけそうになった。
私が来た理由なんぞお前が一番わかっているだろう。と。
「なぜわが大隊はイベリア本土への異動命令がでないのですか?」
私の問いにフーゴ少将はそのことかと言わんばかりに顔をしかめた後、タバコを一息吹かした。
「貴隊をこれ以上損耗させるわけにはいかんからだよ」
グッと息をのむ。
損耗の原因は私にある、それを気遣ってくれているのだろうか。
「そもそも、貴官に求められていたのはドイツからの増援が到着するまでの時間稼ぎと敵をくぎ付けにすること。間違っても本土で消耗戦をするためじゃない」
「つまり、我々はお払い箱であると?」
「端的に言えばそうだ」
くやしさで手を握りしめる。
私はてっきり本土で華々しく戦果を挙げることを期待されていると思っていたのだ。
それは思い上がりだったのだろうか。
「それに貴官らは十分にその任務を果たしてくれた。もう、十分だ」
そう言ってフーゴ少将はタバコを灰皿に押し付けた。
32名の戦死と引き換えに得た戦果としては十分だと彼は言いたいのだろう。
「君も、本国に戻りたいだろう」
フーゴ少将はとどめを刺すようにそう言ってきた。
思わず、リマイナを思い出してしまう。
彼女は元気だろうか。
私がいなくてもやっていけるだろうか。
「あとは、我々がこの泥臭い戦争を終わらせて来る。故郷に帰って待っていたまえ」
これ以上、言葉を交わしても無駄だろうと思った。
もはや決まったことで私にどうすることもできないのだ。
それに、兵を思えばもうそろそろ家族に会いたいことだろう。
「……了解致しました」
煮え切らない思いを引きずりながらも私はそう答えた。
数週間後にはバルトニアからの偽装輸送船が到着し、我々はそれに乗船した。
見送ってくれる戦友はもはやアフリカの地にはおらず、もはやすべてがスペイン本土へと渡った後であった。
「……32名の遺体は回収しなくてよいのですか?」
ロレンス大尉が甲板上で海を眺めていた私に尋ねてきた。
「持って帰ってきてもどうすることもできないわよ。彼らは海中転落したと伝えられるのだから」
無慈悲、そう言われるかもしれないが、海中転落したはずの者の遺体があってはいけない。
だが、彼らを思わずにはいられなかった。
そして、アフリカのほうに向かって敬礼をする。
彼らは歴史に埋もれた無名の兵士。
哀れだと思うが、彼らのおかげで今後急速にバルトニア陸軍の改革は進んでいくのだ。
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