野獣公爵の執愛

ゆき真白

文字の大きさ
19 / 98
第一章

十七※

しおりを挟む
 ◇◇◇

「ああぁっ……ぁンッ、やあぁあっ」

 叫び声にも似た嬌声を上げながら、シーラは柔らかな肢体を跳ねさせた。
 痙攣するシーラの腕を撫で、ジルヴィウスは剥き出しの首筋に噛みつく。

(シーラ……このままお前のすべてを食らい尽くせればどれほどいいだろう)

 痛々しい歯型が付いた首元を舐め、顔を上げる。すると、焦点が定まらない目で虚空を見つめるシーラが視界に入った。

「シーラ」

 顔を覗き込んで名を呼べば、若草色の瞳が揺れ、ゆっくりとこちらへと向く。視線が絡むと、いまだ狭く、けれどぐずぐずに解れた隘路が、きゅう、と陽根を締め付けた。

(他の男が相手でも、こんな反応をしたか?)

 その疑問は口に出さずに、ジルヴィウスは濡れたシーラの唇を舐めると、自身を引き抜いた。それだけで、シーラは赤い唇を震わせ、悩ましげな声を漏らす。
 栓を失った膣道からは収まりきらなかった白濁がこぼれ出る。
 何度出しても、昂ぶりが治まることはなかった。
 むしろ、出すごとに硬度は増していき、もっとシーラを貪りたくてたまらなくなる。

(他の女を相手にするのと、お前の抱くのとでは、意味がまるで違う)

 汗ばんだシーラの肌に手を這わせながら、その体をひっくり返す。
 もう力が入らないのか、シーラはされるがままうつ伏せになった。背中にも、数えきれないほどの鬱血痕が滲んでいる。少しの隙間を見つけては、ジルヴィウスは唇を寄せ、吸い付いた。
 体を密着させ、至るところに歯型と赤い痕を残していく。
 触れる面積が大きくなれば、より強く、のを感じ取ることができた。
 ここ数年何をしても味わえなかった爽快感に、ほっと息を吐き出しながら、ジルヴィウスは張り詰めたものをシーラの中に埋めていく。

「ふ、っん」

 シーラの蕩け切った甘い声を聞くだけで、己のものは質量を増していく。
 ジルヴィウスは重く息を吐き出すと、シーラの顔にかかった向日葵色の髪を耳にかけ、こめかみに口付ける。それに応えるように、彼女は力の入らない手でベッドについたジルヴィウスの指先を握った。
 たったそれだけのことに、心には深い歓びが広がっていく。

(シーラ。たとえお前が何の変哲もないただの凡愚だったとしても、俺はお前を選んだだろう。いや、むしろ、お前が平凡な人間であれば、もっと早く……)

 先ほど胸に広がった歓びが、一瞬にして独占欲や執着心、嫉妬心に塗り替えられていく。
 ジルヴィウスはシーラの薄い腹を抱えるように腕を回すと、芽生えた苛立ちをぶつけるように腰を叩きつけた。

「ふあっ、あっぁあっ、ンっ」
「っは……!」

 他の女のそれはただかしましく耳障りなだけなのに、何故シーラだけは違うのだろう、と考える。

(昔からそうだ。俺にとって、お前はずっと特別で……お前がじゃなくても、俺は……)

「はあっ、ああんっ……ああっあっ、ッぁ――!」

 大きく腰を震わせたシーラは、全身を痙攣させながら、ベッドに沈み込んだ。
 ジルヴィウスは構わず抽送を続けたものの、シーラの反応が鈍いことに気付き、一度自身を引き抜く。仰向けになるようひっくり返せば、シーラの目は閉じられ、わずかに開いた口からは細い息が漏れていた。

(……さすがにやりすぎたな。思ったよりは持ったほうだが)

 男に散々嬲られたあとだとは思えないほどあどけない顔を晒すシーラに、ジルヴィウスは何とも言えない表情を浮かべると、シーラの赤い唇を舐めた。舐めて、吸い付き、を繰り返しながら、欲芯に手を伸ばし上下に扱く。

「――は」

(シーラ。愚かで哀れなシーラ)

 自分のような男に捕まってしまった、可哀想な少女。

(だが、初めに俺を選んだのは他でもないお前だ、シーラ)

『ジル。あなたってば、本当にとってもきれいね』

 屈託のない満面の笑みでそう告げた、幼いシーラの姿が思い出される。
 会いに行けば、「ジル、ジル」と後をついて回り、いつだって真っ直ぐ自分を見つめてくれた。
 ノルティーン辺境伯領で過ごしたあの時間が、ジルヴィウスにとってどれだけかけがえのないものだったのか、きっとシーラは知らないだろう。

「シーラ……」

 囁くように名を呼べば、髪と同じ向日葵色の睫毛がわずかに震える。

「……そんなに俺が好きか?」
「……」

 気を失ったシーラからは、当然ながら返答はない。けれど、彼女の顔は確かに少しだけ綻んだ。

「……趣味が悪いな。昔から」

 自嘲するように口元を歪めたジルヴィウスは、そろそろ欲を吐き出しそうな自身を、ぬかるんだ彼女の中に沈めていく。
 気を失ってもなお、そこはジルヴィウスを歓迎し、きつく締め付けた。
 何度か腰を前後させ、最奥に白濁を放つ。

「……っ」

(やはり、この瞬間が一番魔力を失うな)

 すべてを出し切ったジルヴィウスは、静かに自身を引き抜くと、シーラの隣に寝転んだ。シーラを抱き締め、わずかに指先を振れば、二人の体液で汚れたシーツは新品のように綺麗になり、二人の上にふわりと布団が掛かる。
 体も魔法で綺麗にすることができるが、あえてそれはせず、汗ばんだ互いの肌を触れさせる。濡れているからか、二人の体は吸い付くようにくっついた。
 シーラの心根のように真っ直ぐな髪に指を通しながら、その頭に口付けを落とす。

(……迷い、出遅れ、他の奴に付け入る隙を与えた。それは俺の失態だ。だが……だからこそ、もう間違えない。他の誰にもお前を奪わせはしない。お前の命が終わりを迎えようとも、俺はお前を決して手放さない)

「お前のすべては俺だけのものだ。シーラ」

 金の瞳を鈍く光らせながら、ジルヴィウスはそっと目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

私たちの離婚幸福論

桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん
恋愛
クロードの婚約者は公爵令嬢セラフィーネである。 この結婚は王命のようなものであったが、なかなかセラフィーネと会う機会がないまま結婚した。 初夜、彼女のことを知りたいと会話を試みるが欲望に負けてしまう。 翌朝知った事実は取り返しがつかず、クロードの頭を悩ませるがもう遅い。 クロードが抱いたのは妻のセラフィーネではなくフィリーナという女性だった。 フィリーナは自分の願いごとを叶えるために代理で子を産むことになったそうだ。 願いごとが叶う時期を待つフィリーナとその願いごとが知りたいクロードのお話です。

旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。 何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。 困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。 このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。 それだけは御免だ。 結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。 そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。 その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。 「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

処理中です...