異世界で「出会い掲示板」はじめました。

佐々木さざめき

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第二章【入会されますか?】

第6話―「白いペガサスに乗った王子様」

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 王宮騎士キシリッシュ。王宮や王城の一部で堅物姫騎士リッシュと呼ばれる、凜々しき女騎士の姿があった。

 まとうは金と銀の美しい王宮騎士鎧。しかも女性専用にデザインされたそれは、男性物と比べてより見栄えが重視されていた。

 さらに光を反射する銀髪が腰まで伸びていた。凜とした顔立ちは男性だけで無く女性にも好かれる大変な美人で、町を歩けば10人が10人振り返るだろう。

 そんな礼典でしかお目にかかれないような王宮騎士が、どういう訳か王都の普通の酒場に立っていた。それも壁を睨んで仁王立ちに。

 彼女は真剣だった。その目は獲物を狙う狩人か、大将首を狙う功名武者のそれであった。

「……よし。これにしよう」

 長い時間、壁を……いや、ど派手な飾り付けの掲示板を見つめていた騎士リッシュは、ようやく吟味を終えてカウンターに戻ってきた。

「決まったかい?」

「ああ、39番だ……だが本当に女性は無料でよいのか?」

「さっきさんざん規約も含めてシステムは理解しただろ?」

「うむ。それは理解しているが、私は騎士だ。男性にだけ負担を掛けるのは不公平というものだろう。私だけでもポイントを減らすと良い」

「いや、キシリッシュさんだけポイントを消費するようにしたら、他の女性に対して不公平になる。それとも他の女性に今からポイントを消費するようにしろってのか?」

「ぬ? ……それは、そうだな。わかった。それではありがたく使わせて貰おう」

「では4番のブースへどうぞ」

 すでに細かいシステムまで理解していたキシリッシュは、背筋を伸ばしてカウンター横の扉をくぐった。だが、その動きは騎士とは思えないほどギクシャクとしていた。実は緊張していたのだ。

 ブースは狭かった。

 鎧をまとっているキシリッシュにはギリギリの幅だった。さらに、左右に人がいる気配がした。防音性は期待できないだろう。

 キシリッシュが席に着くと、正面の小窓が開く。これも一度説明を受けていたのでもう・・驚いたりはしない。

 一応初めてということなので、細かな説明を受ける。そうして差し出されたのは、掲示板に貼ってあった39番の書き込みと、さらに相手のプロフィールだった。

 女性は男性のプロフィールを無料で読めるのだ。随分と女性に優しいシステムだった。

 何十年か前までは男尊女卑が当たり前で、その名残は今もたくさんある。そんな中でこのようなシステムが生まれたのは喜ぶべき事かも知れないと、キシリッシュは腕を組んで頷いた。

 もちろん実情は少しでも多くの女性をかき集める手段でしかないわけだが、彼女には女性を敬うシステムに感じてしまったようだった。

 キシリッシュは改めて39番の書き込みを確認した。

======================
タイトル「10代で胸が大きく優く可愛い娘」
ニックネーム「大空を翔る荒ぶるペガサス」
20代後・7月・人間・男・74区
――――――――――――――――――――――
 私は74区画で親の商売を手伝っています。
 将来は私が次ぐ予定です。
 今は一緒に家業を継いでくれる一生のパートナー
を探しています。
 私は優しさと健康が自慢です。
 また資産にも少し自信があり、馬を個人所有し
ています。
 親が早く跡取りを求めているため、健康的な1
0代の方を探していますが、容姿に自信のある方
は20代でもお気軽にメールをください。
 まずはゆっくりと友好を暖め合って行きましょ
う。
======================

 それがキシリッシュが最初に選んだ掲示板であった。サイゾーには複数の書き込みに返信してもかまわないと言われていたが、それは不誠実という物だろう。

 それにと……、キシリッシュは一度咳払いした。

 これが運命の人かも知れないしな。

 ニックネーム「大空を翔る荒ぶるペガサス」

「白いペガサスに乗った王子様……」

 脳裏に浮かんだ妄想を、頭を振って追い出した。キシリッシュとてそこまで子供では無い。あまりにも庶民では困るが、それなりの商人であれば三男次女の末女としては十分な相手であろう。

 理性ではそう思っているのだが、彼女の中ではスタイリッシュで爽やかな青年が彼女に微笑んでいた。

(希望は10代のようだが……胸の大きさと優しさには自信がある。20代を否定しているわけでも無いので問題はなかろう)

 キシリッシュは自分をごまかすように頷き、続けてペガサス王子のプロフィールを読んだ。

======================
プロフィール

ニックネーム(大空を翔る荒ぶるペガサス)
年齢(20代後)
誕生月(7月)
種族(人間)
性別(男)
住所区画(74区画)
職業(商人)
年収(銀貨約200枚~400枚)(表示)
交際ステータス(恋人無)
かっこよさ(★★★☆☆)
おしゃれ度(★★★★★)
かしこさ (★★★★★)
スタイル (★★★☆☆)
金持ち度 (★★★★★)
やさしさ (★★★★★)
自由コメント
親の家業を手伝っている商人をしています
時間は比較的自由です
20代までであればメールはいつでも歓迎です
個人所有の馬があります
一緒に乗馬などいかがでしょうか?
胸が大きく優しい人を探しています
=====================

 大まかな部分では掲示板の中身と重なるところだろう。特に自由コメントと掲示板の書き込みの内容はほぼ同じだった。

 それよりも注目するべき点は、やはり自己評価だろう。なんとおしゃれ度、かしこさ、金持ち度、やさしさの4項目が満点だった。

 年収を見る限り金持ちとは思えないが、それは自分たち騎士の家計と比べてはいけないと言うことか。それに親の商売を手伝っていると言うことは、お小遣い程度を貰ってあとは親に還元しているのかも知れない。

 やさしさ★5を見て、きっとそうに違いないと満足げにキシリッシュは頷いた。

 さて、それでは返信である。
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