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第三章【イケメン掲示板放浪記】
第5話―ダメンズの宴
しおりを挟むスパイクが出会い掲示板を訪れてから数日が経った。今日はニックネーム「青いどら猫」との待ち合わせの日だ。
スパイクは庶民がよく使うだろう店を予約しておいた。
74区画の冒険者ギルド前での待ち合わせだったのだが、ギルド自体の出入りが激しく、誰が誰やら判別が出来ない。もう少し細かい待ち合わせ方法を決めておくべきだったかと、立ち尽くしたときに、横から声を掛けられた。
「こんにちわにゃ、あんたが『尖った釘』さんにゃ?」
そこにはやたら若い猫耳の獣人の女性がちょこんとたっていた。茶色と青のストライプの髪を、大胆にボブカットしていた。
左右の耳の色が茶色と青で分かれているのも特徴的だった。
「えっと、君が『青いどら猫』さんかな?」
「そうにゃ」
「良かった。簡単な服装しか教えてなかったから、見つけてもらえないと思ってたよ」
「……本気かにゃ? 銀糸の入ったマントなんて、他に絶対いないにゃ」
「そうかい? とにかくすれ違わなくて良かったですよ」
「そうだにゃ! しっかし、本当に貴族さんにゃ……ビックリしたにゃ」
「……?! え?! なんで?! どうしてボクが貴族ってわかったんだい?!」
「……本気にゃ? 金糸銀糸のマントとか、貴族以外誰が身につけるにゃ……」
「いや、これは安物なんだよ。できるだけ一般的な品物を商会に頼んだんだ」
「それは……きっと頼み方が悪かったのにゃ」
「そうなのか……」
スパイクは腕を組んで首を傾げる。出入りの商人には「一般的なデザインで頼む」と受注したはずなのだが……。
「次からこのマントはやめよう……。失礼して外させてもらっても良いかな? その……出来ればこの事は……」
「大丈夫にゃ。内緒にしとくにゃ!」
「ありがとう。それでは食事に行きましょう。庶民的なお店ですが予約してありますので」
「……庶民的な店は予約なんてしないにゃ……」
「え? 何か?」
「なんでもないにゃ! 行こうにゃ!」
「そうですね。それではこちらです」
彼が案内したのは、最近話題の肉専門料理店だった。庶民の店だが美味いと貴族たちの間でも、話題に上っている店だ。
「うにゃ! ここは一度来てみたかったのにゃ!」
「それは良かった。ミャウ族の方は肉と魚好きの方が多いと聞きましたので。魚の美味い店は王都ではちょっと少ないですからねぇ……」
「大丈夫にゃ! すっごくうれしいにゃ! 行こうにゃ!」
「はい。それではどうぞ」
スパイクはナチュラルに手を差し出す。「青いどら猫」ことミナーナ・ミャウ・ハーマイナ14歳は一瞬目を丸くしてから、エスコートされていることに気がつく。
「お姫様みたいにゃ……」
うっとりとスパイクの手に、まだ肉球の残る手を乗せた。
「それではまいりましょう」
ミナーナの目がハートマークになっていることにスパイクは気づいていなかった。
■
所変わっていつものアホウドリ亭の一角、いつものダメンズが集まっていた。
バイエル・ハーパネン「大空を翔る荒ぶるペガサス」
モイミール・ヤヴーレク「もっくん」
ディック・ボスフェルト「ディック」
上からバイエル=デブブサイク勘違い野郎、モイミール=細身陰険、ディック……のエピソードはまだない。
「ようペガサス。お前も悪党だな、よりにもよってどら猫を紹介するとはな」
「いやぁ……あいつ……見聞を広げたいって……だから嘘はいってない……」
喉の奥でぼそぼそと声を返すバイエル。某騎士に見せていた無駄な自信喋りとは大違いである。これが地なのであろう。
「へへ……絶対やらせないので有名などら猫ね……くくく、女漁りに来たボンボンの貴族にはちょうどいいだろ。ざまぁみろだぜ」
「ふへへ……」
「そううまくいくのかな……」
ディックだけは疑問で眉を歪めて呟いた。
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