91 / 102
第五章【ガルドラゴン王国】
第13話―王都と初めての友情
しおりを挟む「よう、お待たせ……ってほど待たせてないか。それでシャルロットさんの相談事はなんだ?」
サイゾーがいつもの調子を取り戻してラフな口調で白ゴス少女の正面に座り込む。シャルロットはやや不思議そうにサイゾーの顔を見てから、すぐ横に控えるキシリッシュに耳打ちした。
「のう、サイゾーの機嫌は直ったようじゃが、あのしゃべり方は何なのじゃ?」
王族に対して敬語を使わない人物などほぼ始めての経験で、シャルロットはサイゾーの口調に違和感を覚えたのだ。尋ねられたキシリッシュは頭を抱えたくなる。
「あれは……その、市民の間で……信頼のあるもの同士が使う……友誼の厚いもの同士の会話法とでも言うべき物かと……」
キシリッシュは内心、嘘では無い。嘘では無いぞと、自分に言い聞かせながら説明する。彼女に取って騎士が嘘をつくなど許されないことであるからだ。実際その説明は間違ってはいない。
ただし王族に対して失礼に当たらないという訳でも無いのだが。
キシリッシュは額から汗を滂沱と流して必死に取り繕った。下手をしたらサイゾーの首が吹っ飛ぶかも知れないと思ったら、こんな行動に出ていた。
「ふむ……なるほど……確かに今の方がサイゾーの表情も柔らかいのじゃ! 良しサイゾー!」
「ん?」
「これからは妾にはその話し方で接するが良い」
「ああわかった」
((あっさり了解するなぁあぁぁぁああ!!))
内心突っ込みを入れたのはキシリッシュだけでは無く、護衛のエルフ冒険者ディーナも叫んでいた。
「さて、相談事を聞こうかね」
サイゾーは先ほどのやり取りを気にしていないのか、いつもの調子で片肘を付いて話を聞く体制に入った。下手をしたら打ち首ものである。
「う、うむ。掲示板に妾がいくら書き込みをしても、書き込みに返信をしても誰も現れないのじゃ! これはシステムに構造的欠陥があるという事なのじゃ!」
「なんだって?」
サイゾーは眉を顰めた。
(おかしい……どんなに問題児でも、女性の書き込みに一切反応が無いってのはあり得ない。男って生き物は馬鹿しかいねぇからな)
自分の性別を棚に上げてあごに手をやる。
「シャルロットさんの許可がもらえるなら、今までの書き込みを精査させてもらいたいんだが、良いか?」
「ふむ? それはかまわんのじゃが、手元に残っておらんのじゃ」
「それなら問題無い。全ての書き込みはファイリングしてある」
「ふぁいりんぐ?」
シャルロットが小首を傾げる。
「ああ。全ての書き込みややり取りは会員番号と管理番号によって保管されている。幸いここが本部だからな。すぐに調べられる」
「まるで城の財務省じゃな……」
「記録は全ての基本だからな。それで許可してもらえるかい?」
「うむ。許可するのじゃ」
「それと、お付きの人間に内容を見られたくないなら、ここじゃなく奥のブースで相談に乗るが」
「それにはおよばんのじゃ。二人とも妾の忠実な配下なのじゃ」
「さよで。じゃあちょっと待っててくれ」
サイゾーは一度カウンター裏の本部に引っ込んだ。
「先ほどはちと怖かったが、案外話せる奴なのじゃ」
「私は生きた心地がしませんでした」
キシリッシュはやや疲れた口調で言った。
「今まで会った誰とも違うのは面白いのじゃ」
「なら短気はおやめください」
「わかっておる、わかっておるのじゃ」
絶対にわかってない、そう思いつつもそれ以上続けられないキシリッシュは胃の辺りを押さえた。
「お待たせ」
サイゾーはシャルロット関係の書類だけを挟んだバインダーを持ってくると机の上に置いた。
「ぬ? なんじゃそれは?」
「んあ? バインダーだよ。こうやって書類を挟んでおくんだ」
専用の2穴パンチで用紙には二つ穴が開けられ、バインダーのリング状金属棒に通されている。王族であるシャルロットでさえそれは初見の物であった。
0
あなたにおすすめの小説
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる